

ヘアカラーを繰り返しても、カタラーゼ処理なしにシャンプーだけで洗い流せば、過酸化水素が頭皮に残留し、6ヶ月後には白髪が肉眼でわかるほど増加するリスクがあります。
カタラーゼ(catalase)とは、体内で発生する有害な過酸化水素(H₂O₂)を、無害な水(H₂O)と酸素(O₂)に分解する酵素のことです。化学反応式で書くと「2H₂O₂ → O₂ + 2H₂O」となります。非常にシンプルな反応式ですが、この反応がなければ私たちの細胞はたちまち酸化ダメージを受けてしまいます。
カタラーゼは約200年前に存在が確認され、人体では肝臓・赤血球・腎臓に特に多く含まれています。分子量は約24万〜26万と非常に大きなタンパク質で、4つのサブユニットで構成され、各サブユニットは526個のアミノ酸からできています。体の中だけでなく、植物の細胞にも広く存在しています。
実は、カタラーゼは地球上の生物の中でもっとも速い酵素反応速度を誇ります。1秒間に1つのカタラーゼ分子が600万個もの過酸化水素分子を分解できるとされており、その処理能力は他の酵素と比べて圧倒的です。
つまり「速さが命」の酵素です。
美容の観点でカタラーゼが注目される理由は、この過酸化水素の分解能力が白髪予防や、ヘアカラー後の髪・頭皮ダメージ軽減に直結するからです。年齢とともに体内のカタラーゼ産生量は減少し、分解しきれない過酸化水素が頭皮の毛包に蓄積されていきます。これが白髪を加速させる大きな原因の一つとして、近年の研究で明らかになっています。
カタラーゼと過酸化水素の実験は、高校生物の授業でも定番の内容ですが、美容に興味がある方にとっても非常にわかりやすい「体感できる実験」です。自宅でも手軽に試せるので、ぜひ一度試してみてください。
最も基本的な実験材料は「生の大根おろし」と「オキシドール(3%過酸化水素水)」です。透明なコップや試験管にすりおろした大根を少量入れ、そこにオキシドールを数mL注ぐと、細かい泡がモコモコと発生します。
この泡の正体が「酸素(O₂)」です。
大根の細胞に含まれるカタラーゼが過酸化水素を瞬時に分解した証拠です。
同じ実験を生の豚や鶏のレバーでも行うと、大根よりも激しく泡立つのが確認できます。肝臓にはカタラーゼが特に多く含まれているからです。反応の激しさは「カタラーゼ量の多さ」をそのまま反映しています。
実験でわかることをまとめると以下の通りです。
| 実験素材 | カタラーゼ量 | 泡立ちの強さ |
|---|---|---|
| 生の肝臓(レバー) | 非常に多い | 激しい(泡が溢れるほど) |
| 大根おろし | 多い(特に上部) | 中程度 |
| 加熱した肝臓 | ほぼゼロ(変性) | ほとんどなし |
| 石(無機触媒) | なし |
加熱した肝臓では泡がほとんど発生しない点が重要です。カタラーゼはタンパク質でできた酵素なので、60〜70℃以上に加熱されると立体構造が壊れ(変性)、活性を失います。
これを「熱変性」と言います。
カタラーゼは繊細な酵素です。
この実験から美容への応用として見えてくることは、「体内に十分なカタラーゼがあれば過酸化水素をきちんと処理できる」ということです。逆に言えば、加齢などでカタラーゼが減った状態では、同じように過酸化水素が残留し続けることを意味します。
日本分析化学専門学校「泡で分かる酵素の力」実験解説ページ(実験手順や素材の違いについて詳しく掲載)
カタラーゼは酵素なので、活性を発揮する最適な「温度」と「pH(酸性・アルカリ性の度合い)」が存在します。実験データによると、カタラーゼの最適温度は35〜37℃付近であり、最適pHは7(中性)に近い値とされています。
体温(36〜37℃)と体液のpH(7.4前後)がちょうどカタラーゼの最適条件に近いのは、偶然ではありません。これは長い進化の過程で、体内環境に最適化された結果です。
つまり人体は絶妙に設計されています。
ところが、ヘアカラー剤にはアルカリ剤が含まれており、施術後すぐは頭皮のpHが大きくアルカリ側(pH9〜11程度)に傾いています。この状態ではカタラーゼ自身の活性も低下しやすく、残留した過酸化水素をうまく分解できないことがあります。
また、60℃以上の熱でカタラーゼは失活することから、ドライヤーやヘアアイロンの熱が頭皮表面のカタラーゼ活性に影響を与える可能性もゼロではありません。「熱をあてすぎない」ケアがカタラーゼ保護の観点からも重要になってきます。
美容施術においては、カタラーゼ配合の処理剤を適切なタイミング(施術直後)で使うことが、この酵素の活性を最大限に引き出すポイントになります。
ヘアカラー後に「しっかりシャンプーで洗い流した」と思っていても、実は過酸化水素は髪と頭皮に残留しています。これは実際に行われた実験で視覚的に証明されています。
実験の概要はこうです。ヘアカラーを施した毛束を2本用意し、一方はカタラーゼ処理(DO-S OX-ZEROなどのカタラーゼ配合処理剤)を施し、もう一方はシャンプーのみで洗い流します。その後、両方の毛束にブリーチ剤(ライトナー)を塗布して2時間放置した結果、シャンプーのみの毛束は明らかに脱色されて明るくなりましたが、カタラーゼ処理を行った毛束はほとんど色が変わりませんでした。
この結果が意味することは明確です。シャンプーだけでは過酸化水素は除去できず、残留したオキシがブリーチ反応を起こし続けているという事実です。
怖いですね。
残留過酸化水素が引き起こす問題は以下の通りです。
重要なのは「施術直後が最も除去のタイミングとして効果的」という点です。時間が経過するほど過酸化水素は毛包内部へ浸透し、取り除きにくくなります。
施術直後の処置が基本です。
ホットペッパービューティー掲載ブログ「髪に残留してしまう過酸化水素の悪影響」(実験写真付きで残留の実態を解説)
白髪の発生メカニズムをめぐって、2009年にヨーロッパの科学者チームが重要な発見をしました。毛包内でわずかな量の過酸化水素が生成され、それが時間とともに積み重なってメラノサイト(メラニン色素を作る細胞)を傷つけることを突き止めたのです。
若いうちは、体内のカタラーゼが毛包に生まれる過酸化水素を即座に分解します。
問題ありません。
しかし加齢とともにカタラーゼの産生量が低下し、分解されないまま過酸化水素がミリモル(mM)濃度レベルで蓄積されるようになります。
ミリモル濃度というのは美容業界では聞き慣れない単位かもしれません。例えるなら、500mLのペットボトルの水に角砂糖約0.3個分の砂糖を溶かした程度の濃度感です。この微量の過酸化水素が毛包の細部に蓄積し続けることで、メラニン生成酵素である「チロシナーゼ」を不活性化してしまうのです。
つまり白髪とは、単なる老化ではなく「カタラーゼ不足による酸化ストレスの蓄積結果」とも言えます。
さらに深刻なのは、ヘアカラーを続けることが白髪を加速させるリスクがある点です。2剤式カラーに必ず含まれる過酸化水素が施術のたびに毛包に蓄積し、体内のカタラーゼ産生が追いつかない状態になれば、白髪は増えやすくなります。これを防ぐために、カラー後のカタラーゼ処理が非常に重要な意味を持ちます。
J-Stage「毛のメラニン科学と白髪化」(学術論文PDFで白髪化と過酸化水素・カタラーゼの関係を詳述)
カタラーゼを美容施術に活用する上で、知っておきたい重要な論点があります。
それは「分子量」の問題です。
カタラーゼの分子量は約24万〜26万です。一方、過酸化水素(H₂O₂)の分子量はたったの34です。わかりやすく例えると、カタラーゼがバレーボール(大きい)だとすれば、過酸化水素は砂粒(非常に小さい)ほどの差があります。この大きさの差が美容施術の現場で大きな意味を持ちます。
分子量が大きいカタラーゼは、ヘアカラーによってダメージを受けた髪の内部(コルテックス)にまでは浸透できません。一方、分子量34の過酸化水素は非常に小さく、施術中に髪の内部深くまで入り込んでいます。そのため「カタラーゼを塗っても髪の内部の過酸化水素には届かないのでは?」という議論が美容師の間でも起きています。
ただし実験上の検証では、カタラーゼを塗布した毛束が、その後のブリーチ(過酸化水素を使った脱色)で明るくならなかった事実があります。この点については「カタラーゼが髪の表面から浸透圧のような働きで内部の過酸化水素を引き寄せて分解する」という説も提唱されています。
結論として現場では「カタラーゼ処理は有効である」と多くの美容師が実証しています。それで大丈夫でしょうか?完全解決ではないかもしれませんが、シャンプーだけの場合と比較して明らかに残留量を減らせることは実験で証明されています。
酵素には「基質特異性」という性質があります。特定の物質(基質)にしか作用しないという特徴で、カタラーゼは過酸化水素(H₂O₂)にのみ反応し、他の汚れや染料には反応しません。
これが美容施術における大きなメリットです。
つまりカタラーゼは「過酸化水素だけを狙い撃ちする」成分です。ヘアカラーで染まった色素を傷めることなく、過酸化水素だけを水と酸素に分解してくれます。これは美容的に非常に理にかなった成分選択と言えます。
この基質特異性は、実験でも確認できます。カタラーゼ溶液に過酸化水素を加えると激しく泡立ちますが、同じカタラーゼ溶液にエタノールや食塩水を加えても何も反応が起きません。
見事に過酸化水素だけに反応するわけです。
これは使えそうです。
美容への応用として、この性質を活かしてカタラーゼを配合した製品が開発されています。
注意点として、カタラーゼは「生きた酵素」です。空気(酸素)に触れると徐々に酸化して活性を失ってしまいます。製品を選ぶ際は、エアレス容器(空気が入らない構造)や個包装タイプを選ぶことが効果を最大化するポイントになります。
カタラーゼ実験で学べる重要な知識のひとつが「熱による失活」です。生の肝臓や大根では激しく泡立ちますが、同じ素材を加熱したものでは泡立ちがほとんど見られなくなります。これはカタラーゼというタンパク質が熱によって変性(構造が崩れること)し、機能を失ったためです。
カタラーゼが活性を失う温度は60℃以上とされています。これは体温(36〜37℃)よりもかなり高いため、通常の体内環境ではほとんど問題になりません。
しかし美容ケアの場面では要注意です。
例えばヘアアイロンを使用する場合、毛束への直接の熱は160〜230℃に達することがあります。頭皮表面にいるカタラーゼ(サロンのカタラーゼ処理剤が残っている場合など)が失活する環境も、理論的にはあり得ます。
また、カタラーゼを含む製品を温めて使うのはNGです。ドライヤーで温めたり、高温のお湯で希釈したりすると酵素が失活し、せっかくの過酸化水素分解能力が発揮されません。
美容でカタラーゼの効果を活かしたいなら、以下のルールを守ることが大切です。
酵素の大きな特徴のひとつに「繰り返し使用できる」という性質があります。カタラーゼは過酸化水素と反応して酸素と水を生成しますが、その反応前後でカタラーゼ自体は変化しません。つまり1つのカタラーゼ分子が何度も何度も過酸化水素を分解し続けられるのです。
これは実験でも確認できます。カタラーゼ液に過酸化水素を加えて泡立たせ、泡が消えたところで新たに過酸化水素を追加すると、再び泡立ちます。カタラーゼが消費されていないことの証明です。
驚きですね。
この性質は、体内でのカタラーゼの働きを考えるとさらに重要です。1つのカタラーゼ分子が毎秒600万個もの過酸化水素分子を処理できると先述しましたが、これが可能なのも「繰り返し使える酵素」という性質があるからです。
美容の観点からこの性質を活かすには、「カタラーゼが存在し続ける環境を作ること」が大切です。サロンでのカタラーゼ処理剤による一時的な除去だけでなく、食事や生活習慣で体内のカタラーゼ産生を継続的に支えることが、長期的な白髪予防・髪の健康維持につながります。
カタラーゼは体内で合成されるタンパク質の一種であり、日々の食事や生活習慣によって産生量を支えることができます。加齢によって減少が避けられない部分はありますが、食事からのサポートで補える余地は十分にあります。
まず食事面では、カタラーゼの産生を支えるために重要なのがビタミンやミネラルです。
生活習慣面では、ストレス管理が特に重要です。精神的・身体的ストレスは体内で活性酸素の生成を促進するため、カタラーゼがその処理に消費されてしまいます。ストレスを減らすことでカタラーゼの「無駄使い」を抑えられます。
また、適度な有酸素運動(ウォーキングや水泳など)は体内の抗酸化酵素活性を高めることが研究で示されています。激しすぎる運動は逆に活性酸素を大量発生させるため逆効果ですが、週3〜5回・30分程度の中強度の運動が理想です。
これが基本です。
日本美容師連盟「美容師パパのカタラーゼと白髪解説」(体内カタラーゼと白髪の関係、食事での対策をわかりやすく解説)
市販のホームカラーを使う方が、サロンカラーと最も異なる点は「施術後の後処理」の有無です。サロンでは仕上げの段階でカタラーゼ配合の処理剤を塗布して残留過酸化水素を除去しますが、ホームカラーではそのステップが省かれています。
この違いが長期的に積み重なると、どうなるでしょうか?
ホームカラーで使われる一般的な過酸化水素の濃度は3〜6%です。施術後にシャンプーだけで洗い流した場合、前述の実験が示すように残留過酸化水素が髪と頭皮に残ります。1回で残留する量はわずかでも、月1〜2回のカラーを1年以上続ければ、毛包への蓄積ダメージは無視できないレベルになります。
さらに、カラーリング直後の頭皮はアルカリ性に傾いており、毛穴が開いた状態になっています。この状態で過酸化水素が残留すると、頭皮の奥、毛乳頭付近まで達しやすくなります。
毛乳頭は毛髪の成長に関わる重要な組織です。
長期的なダメージ蓄積は薄毛リスクの一因にもなりえます。
ホームカラーをやめることが理想ですが、現実的には難しい方も多いかと思います。そこで少しでもリスクを軽減するためには、カタラーゼを配合した後処理剤やシャンプーをホームカラーと一緒に取り入れることが有効です。施術後すぐにカタラーゼシャンプーで洗い、その後通常のケアに移るだけでも残留量を大きく減らせます。
サロンで施術とともにカタラーゼ処理を依頼することが最も確実な方法です。施術の際に「カタラーゼ処理をお願いしたい」と一言伝えるだけで、白髪や髪ダメージのリスクを大幅に下げられます。
ここでは、検索上位の記事にはない独自視点をお届けします。カタラーゼが豊富に含まれる大根おろしを頭皮に直接塗る「大根おろし頭皮パック」が、一部のナチュラル美容愛好家の間で話題になることがあります。果たして実験的にみて意味があるのでしょうか?
結論から言えば「効果には限界がある」というのが正直な評価です。
大根に含まれるカタラーゼは確かに実験で過酸化水素を分解します。しかし頭皮への外用として使う場合、いくつかの問題があります。
一方で「体内からカタラーゼを補う食事」は、毛包内部から直接作用するため、外用より長期的に意味があります。毎日の食事でブロッコリーや大根、きのこ類を積極的に摂ることのほうが、大根おろしを頭皮に塗るよりも科学的に合理的です。
ナチュラルケアに興味がある方なら、頭皮ケアは「食べる美容」として体内のカタラーゼ環境を整える方向で考えるのがおすすめです。厳しいところですが、手軽さと根本的な解決を混同しないことが、長く美しい髪を保つための考え方の基本になります。
カタラーゼと過酸化水素の実験で得られた知識を、日常の美容ケアに落とし込むために、最後に具体的なアクションをまとめます。
美容室選びの場面では、施術後に「残留薬剤除去」として過酸化水素の処置(カタラーゼ処理)を実施しているかどうかが、選択の重要な基準になります。問い合わせや初回カウンセリングで「カタラーゼやオキシ除去の処置はされていますか?」と確認するだけで、サロンの技術への意識がわかります。
これは必須です。
セルフケア製品を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
また体内からのアプローチとして、ブロッコリー・大根・きのこ類・キウイなどカタラーゼや抗酸化物質を含む食品を日常的に取り入れること、そして過度な白髪染めの頻度を見直すことも中長期的な白髪予防になります。
カタラーゼと過酸化水素の関係は、単なる学校の実験にとどまりません。毎日のヘアケアの質を大きく左右する、美容の根幹に関わる知識です。「なんとなくケアしている」状態から、実験データに裏打ちされた「根拠のあるケア」へ切り替えることが、5年後・10年後の髪と頭皮の状態に大きな差をもたらします。
株式会社プラティコ「施術直後が勝負!カタラーZとは?」(カタラーゼ配合処理剤の実験動画と解説を掲載)

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