

TEAC値が高い食品を毎日食べているのに、あなたの肌老化は止まらないかもしれません。
TEAC値とは「Trolox Equivalent Antioxidant Capacity(トロロックス等価抗酸化能)」の略称です。日本語に訳すと「トロロックスを基準にした抗酸化力の強さの換算値」ということになります。つまり、ある物質がどれだけ活性酸素を消去できるかを、基準物質である「Trolox(トロロックス)」と比べて数値で示したものです。
トロロックスとは、ビタミンEを水に溶けやすく改良した化合物で、スイス・ホフマン・ラ・ロシュ社が開発した試薬です。ビタミンEと同様に強い抗酸化作用を持ちながら、水溶性であるため実験に使いやすいという特性があります。TEAC値ではこのトロロックスの抗酸化能を「1」として、測定したい物質の抗酸化力がその何倍かを数値で示します。
たとえばTEAC値が「5」と表示されていれば、「トロロックス(≒ビタミンE)と比べて5倍の抗酸化力がある」と解釈できます。
これが基本です。
値が高ければ高いほど、抗酸化力が強いということですね。
美容の世界では、化粧品成分や食品の抗酸化力を比較するための共通の"ものさし"として使われています。ビタミンC美容液のパッケージや、サプリメントの成分説明に「TEAC値○○」と記載されている場合は、この数値が抗酸化力のスペックを示しています。
参考:トロロックスとTEAC値の基本 - Wikipedia
TEAC値を測定する主な方法には「ABTS法」と「DPPH法」の2種類があります。どちらも試料のラジカル消去活性を測定し、その結果をTEAC値として算出する点では同じです。ただし、2つの方法には重要な違いがあります。
ABTS法(ABTS脱色アッセイ)は、ABTS(2,2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))という試薬を酸化剤で反応させ、青緑色のラジカルを生成します。このラジカルが抗酸化物質によって消去されると色が薄くなることを利用し、734nmの吸光度を測定します。水溶性・脂溶性の両方の抗酸化成分に対応できる点がメリットです。
DPPH法は、紫色のラジカル物質であるDPPHを使った測定方法で、517nmの吸光度変化を読み取ります。DPPHが疎水性(油に溶けやすい性質)のため、ビタミンEなど脂溶性の抗酸化成分に対する反応性が高い一方、ビタミンCなど水溶性成分とはやや反応しにくいという特性があります。
この違いは美容に直接影響します。
たとえば、水溶性の「ビタミンC美容液」をDPPH法のみで評価すると、ABTS法で測定した場合より抗酸化力が低く出る場合があります。反対に「ビタミンE誘導体配合クリーム」はDPPH法で高い数値が出やすくなります。スキンケアを選ぶ際、TEAC値の数値だけでなく「何の方法で測定されたか」も確認できると、より精度の高い判断ができるということです。
つまり測定方法が条件です。
美容を語る上で「活性酸素」は外せないキーワードです。TEAC値が重要視される背景には、この活性酸素と肌老化の密接なつながりがあります。
活性酸素とは、体内で酸素が代謝される過程で生じる、非常に反応性の高い酸素の一種です。通常は体内の抗酸化システムによって処理されますが、紫外線・ストレス・過度な運動・大気汚染などにより過剰発生すると、肌の細胞やDNA・タンパク質・脂質を攻撃し始めます。
具体的な肌へのダメージはこのようなものです。
肌老化の最大の外的要因は紫外線とされており、紫外線が肌に当たると表皮で大量の活性酸素が生成されます。この連鎖をどこかで断ち切るのが「抗酸化」の役割であり、TEAC値はその抗酸化力の強さを定量的に示す数値です。
TEAC値が高い成分を日常的に取り入れることが対策になります。
ただし重要な注意点があります。活性酸素はすべてが「悪者」というわけではありません。免疫細胞が細菌を攻撃するためにも活性酸素を利用しており、適量の活性酸素は体の防衛機能に必要です。問題はバランスが崩れて過剰になることであり、TEAC値の高い成分で過度に消去しすぎることも好ましくないという側面があります。
参考:抗酸化作用とは何か、活性酸素と肌老化の仕組み - ノエビア
TEAC値を使うと、スキンケア成分の抗酸化力を横並びで比較できます。代表的な美容成分のTEAC値をまとめると、おおよそ以下のような強さの差があることがわかっています。
| 成分名 | 特徴 | 抗酸化力の目安 |
|---|---|---|
| ビタミンC(アスコルビン酸) | 水溶性・肌の基準成分 | 基準値(1〜2) |
| ビタミンE(トコフェロール) | 脂溶性・細胞膜保護 | ビタミンCと同等〜数倍 |
| 緑茶カテキン(EGCG) | 水溶性ポリフェノール | ビタミンCの約90倍 |
| レスベラトロール(ブドウ由来) | 赤ワイン成分ポリフェノール | ビタミンEより高い |
| アスタキサンチン | エビ・サーモン由来カロテノイド | ビタミンEの約550〜1000倍 |
特に注目すべきは緑茶カテキンの一種「エピガロカテキンガレート(EGCG)」です。ラットの肝臓を使った実験では、ビタミンCの約90倍、ビタミンEの約23倍の抗酸化力が確認されています。これはコンビニで買える緑茶1杯に入っているカテキンが、ビタミンCサプリを軽く超えるポテンシャルを持つということです。
これは使えそうです。
さらにアスタキサンチンはTEAC値の観点でも際立っており、ビタミンCの約6000倍という圧倒的な数値が報告されています。フジフイルムをはじめとする国内企業が研究を続けており、スキンケア製品や美容サプリへの配合が増加しています。ただし、TEAC値が高ければそのまま美肌効果が比例して高いかというと、後述するように話はそこまで単純ではありません。
参考:茶カテキンの抗酸化力(ビタミンCの約90倍)について - 福寿園
TEAC値をスキンケア選びに活用する際、まず覚えておきたいのは「数値が大きい=即座に肌に効く」ではないという点です。試験管内(in vitro)で測定されるTEAC値は、あくまで化学的な抗酸化力のスペックです。実際に肌に塗布したり、経口摂取したりした場合の生体内での効果(in vivo)は、吸収率・安定性・浸透力など別の要素に大きく左右されます。
それを踏まえた上で、TEAC値は次のような場面で活用できます。
TEAC値は成分選びの「参考指標の1つ」と位置づけることが基本です。
また、美容成分を塗布する場合と経口摂取する場合でも注意が必要です。ビタミンCを例にとると、経口摂取では血中濃度がすぐ飽和しやすく、過剰摂取分は尿として排出されます。一方で肌に直接塗布する場合は、肌の活性酸素を局所的に除去でき、コラーゲン合成促進にも直接関与します。つまり「飲む」と「塗る」では役割が異なるということですね。
TEAC値の有用性を理解した上で、その限界についても知っておくことが大切です。特に美容業界では「ORAC値」という別の抗酸化力指標も広く使われており、両者の違いを把握すると情報に振り回されにくくなります。
ORAC値(Oxygen Radical Absorbance Capacity:活性酸素吸収能力)は、1992年に米国農務省(USDA)と国立老化研究所が共同開発した指標です。長年、食品や美容商品の宣伝に多用されてきましたが、2012年にUSDAが「生物学的妥当性がない」として公式データベースからORACレーティングを取り下げました。TEAC値も同様に、あくまで化学的な試験管内の数値であり、体内で同等の効果が得られるとは限りません。
厳しいところですね。
TEAC値をはじめとした抗酸化指標の問題点を整理するとこのようになります。
これらを踏まえると、TEAC値は「成分選びの入口」として使い、最終的には成分の安定性・浸透力・配合濃度・臨床試験データなどを総合的に判断する姿勢が理想的です。
参考:ORAC値の問題点と抗酸化指標の限界についての論文レビュー - Zenn
TEAC値は化粧品成分だけでなく、毎日の食事で摂る食材の抗酸化力比較にも活用できます。意外なことに、市販のサプリメントより身近な食品に高いTEAC値を持つものが存在します。
特に注目されているのがスパイス類です。米国農務省(USDA)のデータをもとにした分析では、抗酸化力トップクラスの食材はスーパーフードよりも身近なスパイスが多く占めています。
| 食材 | ORAC値(μmolTE/100g)参考 | 日常活用法 |
|---|---|---|
| クローブ(丁子・スパイス) | 約290,000 | 料理の香りづけ・チャイに |
| シナモン(粉末) | 約267,000 | コーヒーや朝食のトッピング |
| ターメリック(ウコン) | 約127,000 | ゴールデンミルクやカレーに |
| 抹茶(粉末) | TEAC値 481μmol/L(1g当) | 朝の一杯・スムージーに |
| ブルーベリー | 約9,621 | ヨーグルトのトッピングに |
クローブのORAC値は約290,000μmolTE/100gで、ブルーベリーの約30倍以上にもなります。同じ「抗酸化食品」として語られてもその差は圧倒的です。もちろん一度に大量のクローブを食べるわけではありませんが、少量でも高い抗酸化効果が期待できます。
肌の酸化ケアが目的であれば、抗酸化力の高い食材を少量でも継続的に食事へ取り入れることが大切です。特にターメリック(クルクミン)はTEAC法でも高い抗酸化値を示し、炎症抑制作用と合わせて肌の赤みやくすみへのアプローチに有効とされています。
日々の食事に少量のスパイスを加えるだけで、サプリメントを追加購入するよりも自然な形で抗酸化力を補える場合があります。ただし食べ物の抗酸化成分は熱に弱いものもあります。ビタミンCは加熱で大幅に失われるため、抗酸化目的で食べるなら生で摂取するか、短時間加熱にとどめることが重要です。
参考:ORAC値が高いスパイスとハーブの一覧 - アメーバブログ
TEAC値の概念を実際のスキンケアルーティンに落とし込む方法を紹介します。朝と夜では肌が直面するダメージの種類が異なるため、抗酸化ケアのアプローチも変えるのが理想的です。
朝のスキンケアにおける抗酸化ケアのポイント
朝は紫外線・排気ガス・ブルーライトなどの外的酸化ストレスが肌に加わります。TEAC値が高い抗酸化成分を「バリアとして外から塗布」することが有効です。
特に推奨されるのは以下の成分です。
日焼け止めの下地として抗酸化美容液を重ねることが、二重の老化対策になります。
夜のスキンケアにおける抗酸化ケアのポイント
夜は日中に蓄積した酸化ダメージを修復するフェーズです。経口摂取でも吸収効率が上がる時間帯でもあります。
TEAC値の観点から言えば、単独で1種類の抗酸化成分を使うより、水溶性(ビタミンC)と脂溶性(ビタミンE・カテキン)の成分を組み合わせると相乗効果が生まれます。
これが条件です。
ビタミンEが活性酸素と反応して酸化すると、隣にいるビタミンCがビタミンEを還元して再活性化させます。この「ビタミンCとEの相互再生」の仕組みを知っておくだけで、スキンケア選びの精度が格段に上がります。
ここまでTEAC値の活用方法を解説してきましたが、最後に多くの人が見落としている視点をお伝えします。それは「TEAC値が高い=美容効果が高い」という単純な図式は成立しないという点です。
美容に関心の高い方ほど、TEAC値や抗酸化力の数値を追いかけて「より高い数値の成分を選ぼう」としがちです。
しかしこれには3つの落とし穴があります。
落とし穴①:生体内での吸収率や安定性は別評価が必要
TEAC値は試験管内の化学反応で測定されます。たとえばクロロフィル(葉緑素)は抗酸化力が高い一方で、腸からの吸収率は非常に低く、血中に届く量は限定的です。数値が高くても吸収されなければ意味がない、ということです。
落とし穴②:一部の抗酸化成分は「プロオキシダント」になりうる
高濃度のビタミンCは、特定の条件下(金属イオンの存在など)では逆に酸化を促進する「プロオキシダント(促酸化)」として作用することが研究で示されています。これはTEAC値の高い成分であっても、摂取量や状況によっては逆効果になりうるという事実です。
意外ですね。
落とし穴③:抗酸化力の競争より「酸化させない生活習慣」が先
喫煙・睡眠不足・ストレス・過度な紫外線暴露は、どんなに高いTEAC値の成分を摂取しても追いつかないレベルで活性酸素を産生します。厚生労働省の研究によれば、1本のタバコで生じる活性酸素は抗酸化成分で相殺するには非常に大量の摂取が必要とも言われています。TEAC値の高いサプリや化粧品に投資する前に、生活習慣を整えることがより根本的な解決策になります。
美容において、TEAC値はあくまで「成分を正しく選ぶためのヒント」です。数値に振り回されず、成分の安定性・配合濃度・自分の肌タイプへの適合性を総合的に判断することが、本当の意味での「賢い美容」への近道と言えるでしょう。
参考:薬学博士監修・抗酸化作用と化粧品成分の正しい理解 - rimedo