

セラミドNSを正しく選ぶ方法も紹介します。
セラミドNSを1種類だけ配合した化粧水を使い続けると、あなたの肌のバリア機能が逆に低下したまま改善しないケースがあります。
成分表示を見ていると「セラミドNS」という名前を目にすることが増えてきました。実はこれ、以前は「セラミド2」と呼ばれていた成分です。2014年にINCI名(国際化粧品成分表示名称)が改訂され、スフィンゴシン骨格を持つものが「Ceramide NS(セラミドNS)」という新しい名称に切り替わりました。
つまり、ふだん持っている「セラミド2」表示の化粧水も、実は新しい表記では「セラミドNS」を意味しています。
これが条件です。
セラミドNSは、スフィンゴシンというスフィンゴイド塩基に、ノンヒドロキシ脂肪酸(N)がアミド結合したヒト型セラミドです。化学構造が人の肌に元々存在するセラミドと全く同一(D-erythro体)であるため、肌なじみが非常に良く、浸透のスムーズさが特徴とされています。
「ヒト型」という言葉が重要なポイントです。ヒト型セラミドは酵母などの発酵技術によって作られており、植物由来の擬似セラミドや動物由来の天然セラミドとは異なり、人の角質層にあるセラミドとほぼ完全に同じ分子構造を持ちます。このため刺激が少なく、敏感肌の方にも使いやすい点がメリットとして挙げられます。
参考:セラミドNSの詳細な化学構造と分類については、以下の専門サイトに詳しく掲載されています。
セラミドNSの基本情報・配合目的・安全性 – 化粧品成分オンライン
セラミドNSが持つ最大の機能が「ラメラ液晶構造の再生」です。
これは使えそうな知識です。
私たちの角質層は、レンガとモルタルの関係に例えられます。角質細胞(レンガ)の隙間を埋めているのが細胞間脂質(モルタル)で、その細胞間脂質の約50%をセラミドが占めています。セラミドを含む細胞間脂質は、疎水層(脂質)と親水層(水分)を交互に繰り返す「ラメラ液晶構造」を形成します。この層状の構造が、肌内部の水分を挟み込んで保持し、同時に外部の刺激をブロックする仕組みになっています。
角質層の厚さはわずか10〜20μm(マイクロメートル)。これはA4用紙の厚さ(約100μm)の約6分の1という、驚くほど薄い膜です。それでも整ったラメラ構造があれば、水分蒸散(TEWL:経表皮水分蒸散量)を抑制し、外的刺激から肌を守ることができます。つまり、ラメラ構造が肌の健康を支えているということですね。
セラミドNSはこのラメラ液晶構造を構成する重要な成分です。ただし、後述する重要な点として、セラミドNSは細胞間脂質全体のうち約3.4%という比較的少量しか存在しません。多量に存在するセラミドNP(約29.4%)やセラミドNH(約23.4%)と比較すると少ない割合ですが、バリア機能の品質(炭素鎖長のバランス)に深く関わっている点で独自の役割を担っています。
「セラミドNSに本当に保湿効果があるの?」という疑問は、実際の試験データで答えが出ています。
1989年に花王の研究チームが発表した試験では、乾燥肌を誘発させた13名の被験者の前腕に、1%セラミドNS配合クリームとセラミド未配合クリームをそれぞれ1日1回、2日間にわたって塗布しました。最終塗布から24時間後に角層水分量を測定したところ、セラミドNS配合クリームを塗布した部位は未塗布部位と比較して、統計的に有意な角層水分量の増加(p<0.05)が確認されています。
ここで重要なのは、測定のタイミングです。「最終塗布から24時間後」という時点で水分量が増加していた事実は、グリセリンのような吸湿性成分による一時的な保湿ではなく、ラメラ液晶構造が実際に再生されたことによる持続的な水分保持能の改善を示唆しています。単なる「塗ったら潤う」ではない、根本的な改善効果が期待できるということです。
ただし、セラミドは非常に結晶性が高く、単体で化粧品に安定配合するのが難しいという特性があります。このため、実際の製品ではコレステロールや脂肪酸などの細胞間脂質類似成分と組み合わせてラメラ液晶構造を模した処方設計(モデル細胞間脂質エマルション)で配合されることがほとんどです。
処方設計が肝心ということです。
セラミドNSには、量だけでなく「炭素鎖の長さ」が重要です。
これが意外と知られていない事実です。
アトピー性皮膚炎患者の角質層を調べた研究では、健常者と比べてセラミドNSの炭素鎖長が「短鎖化」していることが確認されています(Ishikawa et al., Journal of Investigative Dermatology, 2010)。炭素鎖が短いほど、ラメラ構造の安定性が低下し、肌のバリア機能が弱まります。逆に炭素鎖が長いほど、水分蒸散量(TEWL)は減少することが同研究で報告されています。
さらに花王の2020年の研究では、合成疑似セラミド(pCer)配合のローションをアトピー性皮膚炎患者が4週間使用したところ、内因性(自分が本来持っている)のセラミドNSの炭素鎖長が長鎖化することが確認されました(Journal of Investigative Dermatology, February 2020)。つまり、スキンケアによって肌自身のセラミドプロファイルが「健常肌に近いバランス」へとシフトするという、大変興味深い知見です。
これは従来の「不足したセラミドを外から補う」という考え方を超えた、新たなアプローチです。肌環境を整えることで、自分の肌がより健全なセラミドを産生しやすい状態になる可能性を示しています。
参考:花王の研究成果プレスリリースで詳細が確認できます。
スキンケアで内因性の角層セラミドプロファイルの変化を確認 – 花王株式会社
ここからは、一般的な美容情報ではあまり取り上げられない、独自の視点をお伝えします。
花王が2023年に発表した研究では、アトピー性皮膚炎ではない「皮膚疾患のない普通の敏感肌」においても、セラミドNPとセラミドNSの存在比率(NP/NS比)が低いほど、角質層のラメラ構造の乱れに影響することが報告されています(花王プレスリリース、2023年2月28日)。
これが意味することはシンプルです。つまり、セラミドNSを適量に保ちつつ、セラミドNPをより多く確保するバランスが整っているほど、敏感肌のバリア機能が安定しやすいということです。セラミドNSだけを集中して補えばいい、というわけではありません。
では実際にどう対策するか。この「NP/NS比」を意識するなら、セラミドNPとセラミドNSを両方配合した複数種類のマルチセラミド処方の製品を選ぶことが一つの目安になります。成分表に「セラミドNP」「セラミドNS」の両方が記載されているか確認する、というシンプルな行動で対処できます。
参考:敏感肌とセラミドプロファイルの関係について、学術的な視点で詳しく解説されています。
皮膚バリア機能が低下傾向にある敏感肌とセラミドの実態研究 – 化粧品科学研究会
「セラミド配合」と書いてあれば安心、と思っていませんか。
これはよくある誤解です。
セラミドは非常に疎水性が高い脂質のため、水性の化粧水や乳液の中に単独で安定配合することが構造的に難しい成分です。セラミドが安定してラメラ液晶構造を形成するためには、コレステロール・遊離脂肪酸・セラミドを組み合わせた「細胞間脂質類似組成」が必要とされています。
この3成分の配合が基本です。
また、1種類のセラミドだけを配合した製品より、セラミドNS・セラミドNP・セラミドEOPなど複数種類を組み合わせたマルチセラミド設計の方が、バリア機能の補完に効果的と考えられることが専門家の間で支持されています(DSRスキンケア研究所、2026年1月)。実際の角質層でも20種類以上のセラミドタイプが存在し、複数が連携してラメラ構造を支えているためです。
成分表で確認したい理想の組み合わせとしては、「セラミドNS+セラミドNP+コレステロール+脂肪酸系成分」の同時配合が目安になります。選ぶ際は、成分表の上位(配合量が多い側)にこれらが記載されているかをチェックする、という一つの行動だけ覚えておけばOKです。
セラミドNSは肌だけでなく、毛髪にも存在していることは美容通にもあまり知られていません。
意外ですね。
毛髪のセラミド組成を分析した研究(Masukawa et al., 2005)では、毛髪中のセラミド全体に占めるセラミドNSの割合は約11%と報告されています。毛髪においてセラミドは「CMC(細胞膜複合体)」と呼ばれる部分に含まれており、キューティクルとコルテックスをつなぐ接着剤のような役割を果たしています。CMCが健全であることは、髪の強度を保ち、外部物質の侵入を防ぐバリア機能の維持にもつながると考えられています。
ヘアケアにおいてセラミドNSを配合したシャンプーやトリートメントが増えているのは、こうした背景があります。ダメージを受けた毛髪ではCMCの脂質成分が減少しやすいため、セラミドNSを外から補うことでキューティクルの接着を支え、髪のなめらかさや水分保持を助ける可能性が期待されています。スキンケアだけではなく、ヘアケアにもセラミドNSを意識して選ぶ視点が持てると、全身のケアがより充実します。
セラミドは年齢を重ねるほど自然に減少します。
これは健康面に直結するデメリットです。
20代の肌には十分な量のセラミドが存在し、キメが整った水分保持能の高い状態が保たれています。しかし研究によると、加齢とともに角質層のセラミド全体量が低下するだけでなく、セラミドの組成(プロファイル)そのものが変化することも知られています。特に短鎖アシル基を持つセラミドが増加する一方で、炭素鎖長の長いセラミドが減少する傾向があり、これが高齢者に乾燥肌や湿疹が増える一因と考えられています(Experimental Dermatology, 2025年12月)。
乾燥が増える前から、対策は始められます。20代のうちからセラミドNSをはじめとするヒト型セラミドを配合したスキンケアで先手を打つことで、バリア機能の低下スピードを緩やかにすることが期待できます。
特に、乾燥や小ジワが気になりはじめたら、まず使用中の保湿アイテムの成分表を確認してみましょう。セラミドNSの記載があるかどうかを確かめる、という行動から始めるのが最初のステップです。
「化粧水はヒアルロン酸配合を使っているから保湿は十分」と考えている方は、少し認識を更新する必要があるかもしれません。
ヒアルロン酸は優れた吸湿・保湿成分ですが、その働きは水分を引き寄せて保持する「天然保湿因子(NMF)型」に近いものです。一方、セラミドNSが担うのはラメラ構造による「細胞間脂質型」の保湿、つまり水分の蒸散を物理的に防ぐバリア機能です。大正製薬の研究によると、角質層の潤いの80%以上は細胞間脂質(主にセラミド)が担っているとされています。
この2つは役割が異なります。ヒアルロン酸が「水を集めてくる」機能なら、セラミドNSは「集めた水を逃がさない壁を作る」機能です。両方を補うことで、はじめて本格的な保湿ケアが完成すると考えるのが、現在のスキンケア研究の方向性です。
つまりどちらか一方では不十分ということですね。
ヒアルロン酸配合の化粧水を使ったあとに、セラミドNS配合の乳液やクリームで蓋をする、という順番で使うのが効果的なレイヤリングの基本です。化粧水→乳液→クリームの順を守るだけで、保湿効果が大きく変わります。
「オイリー肌だからセラミドは不要」と思っている方も、実は誤解している可能性があります。
脂性肌の方でも、皮脂分泌が多いことと、角質層のセラミドが十分であることは別の話です。皮脂はおもに皮脂腺から分泌されるトリグリセリドやスクワレンなどで構成されており、角質層の細胞間脂質であるセラミドとは由来が異なります。オイリーな肌でもセラミド不足が起きていることは十分あり得ます。
さらに、J-Stage掲載の研究(粧品学会誌)では、脂性敏感肌にセラミドを含む保湿ケアを継続したところ、角層セラミド量が有意に増加しただけでなく、セラミドNSの炭素鎖長が長鎖化して健常肌に近い組成へ改善し、アクネ(ニキビ)が顕著に減少したという報告があります。
これは使えそうです。
バリア機能が低下しているとき、外部からの刺激や細菌の影響を受けやすくなり、それがニキビの悪化を招く場合があります。セラミドNSでバリアを整えることがニキビケアの観点でも有効な側面があることは、意外に知られていないポイントです。
参考:脂性敏感肌とセラミドケアの関係性については、学術的根拠のある論文に記載されています。
セラミドに着目した敏感肌のスキンケア(日本化粧品技術者会誌) – J-Stage
ドラッグストアで化粧水を選ぶ際、成分表示をざっと見る方も増えてきました。しかし、同じ成分でも表記が2種類あると見落としがちです。
前述のとおり、2014年のINCI名改訂により「セラミド2」は「セラミドNS」に置き換えられましたが、暫定期間中であるため、現在市販されている製品には「セラミド2」「セラミドNS」のどちらかが表示されています(あるいは両方表示されている製品も存在します)。
どちらも同じ成分です。
成分表示を見るときのポイントは「配合量は成分表の順番でわかる」という点です。日本の化粧品成分表示は1%以上の成分を多い順、1%未満は任意の順番で記載するルールがあります。セラミドNSやセラミド2が成分表の早い(上位の)位置に記載されているほど、配合量が多いことを意味します。
これが条件です。
また、「セラミドNP」「セラミドNS」「セラミドEOP」といった複数のセラミドが成分表に記載されているかどうかも判断基準になります。成分表で「セラミド」の文字が2種類以上見つかれば、マルチセラミド処方と判断できます。
これだけ覚えておけばOKです。
セラミドNSだけが特別、というわけではありません。各セラミドはそれぞれ異なる役割を持っています。
代表的な種類の役割分担を整理すると次のようになります。
| セラミドの種類 | 主な特徴・役割 | 旧名 |
|---|---|---|
| セラミドNS(セラミド2) | バリア機能の品質(炭素鎖長)に関与。敏感肌・乾燥肌ケアの基本 | セラミド2 |
| セラミドNP | 角質層に最も多く存在(約29.4%)。乾燥・敏感肌ケアの主力成分 | セラミド3 |
| セラミドAP | ターンオーバーや弾力をサポート。エイジングケア向け | セラミド6 |
| セラミドEOP | 細胞間脂質の多重膜を繋ぎ止め、高い疎水性を付与。バリア補修に特化 | セラミド9 |
これらが協力してラメラ液晶構造を形成しています。角質層には20種類ものセラミドタイプが存在するとされており、単一成分で完全なバリアが形成されるのではなく、複数の種類が連携して初めて機能します。セラミドNSはその中でバリア機能の「品質維持」に特化した役割を担っています。
これが全体像です。
そのため、「とにかくセラミドNSだけが高配合」の製品よりも、バランスよく複数種が配合された製品の方が、実際の肌環境に近い保湿設計として優れていると言えます。
セラミドNSの効果を最大化するには、使い方と組み合わせる成分の選択が大切です。
まず使い方の順番として、洗顔直後の角質層がまだ水分を含んでいる状態で、化粧水→美容液→乳液・クリームの順でセラミド配合アイテムを重ねるのが基本です。セラミドは脂質成分のため、油分を多く含む乳液やクリームに配合されている場合が多く、最後のステップで「蓋をする」役割を担います。
組み合わせる成分として相性が良いのはヒアルロン酸とナイアシンアミドです。ヒアルロン酸は高い吸湿性で水分を肌に集める役割を担い、セラミドNSがその水分を逃がさないバリアを作るという理想的な協力関係が成立します。ナイアシンアミドはセラミドの合成を促進する作用が報告されており(乾燥肌を対象とした研究でTEWLが有意に低下)、セラミドNSの効果をさらに底上げする可能性があります。
いいことですね。
また、紫外線はセラミドを分解する原因の一つです。日焼け止めをしっかり使うことも、角質層のセラミドNSを守る間接的なケアとして重要です。
日焼け止めは必須です。
「セラミドNS配合の化粧品は高いものでないと意味がない」という思い込みを持っていませんか。
価格=効果、とは一概に言えません。
重要なのは価格帯よりも、①マルチセラミド配合か、②セラミドが成分表の上位にあるか、③ラメラ構造を形成できる処方設計(コレステロール・脂肪酸の同時配合)か、という3点です。
プチプラ製品の中でも、ドラッグストアで手に入る1,000〜2,000円台の価格帯で複数種のヒト型セラミドを配合した製品が実際に存在します。たとえば花王の「キュレル」シリーズはセラミド機能成分を中心に設計された乾燥性敏感肌向けブランドとして広く認知されており、比較的手の届きやすい価格で継続ケアができる点が評価されています。
継続できることが条件です。
反対に高価格帯のデパコスでも、セラミドの配合量が少なかったり処方設計が不十分だったりする製品もゼロではありません。購入前に必ず成分表をチェックする習慣をつけることが、コスパ良く効果的なケアにつながります。
成分表の確認が原則です。