

過去20年でローカストビーンガム摂取により腸内細菌に悪影響を与えた研究報告があります。
ローカストビーンガムは、地中海沿岸の乾燥した地域で育つマメ科植物「イナゴ豆」の種子から抽出される天然由来の多糖類です。
別名カロブビーンガムとも呼ばれています。
イナゴ豆の種子を粉砕し、多糖類成分を分離・精製して製造されます。
このイナゴ豆は、地中海沿岸や西アフリカで古くから食用として利用されてきた歴史があります。
つまり天然由来ということですね。
主な産地はスペイン、イタリア、ギリシャ、モロッコなどの地中海沿岸諸国で、乾燥した気候を好む常緑樹です。
化学的にはマンノースを主鎖とし、ガラクトースが側鎖として結合したガラクトマンナンという構造を持っています。マンノースとガラクトースの比率は4対1となっており、この比率が他の多糖類と異なる特性を生み出す要因になります。
食品添加物としては、日本では既存添加物リストに収載されており、厚生労働省によって認可されています。増粘安定剤、ゲル化剤として認められており、さまざまな食品や化粧品に使用されています。
ローカストビーンガムの最大の特徴は、水に溶かすと高い粘性を示すことです。ただし冷水には不溶で、溶解には85℃で10分程度の加熱が必要です。この特性が食品加工において重要な役割を果たします。
ローカストビーンガムは、私たちの身近な食品に驚くほど幅広く使われています。
最も代表的なのがアイスクリームです。
アイスクリームにおいては、なめらかな食感を作り出し、保型性を高め、ヒートショック(温度変化による品質劣化)を防ぐ役割を担っています。
クリームチーズにも頻繁に使用されています。水分と脂肪分の分離を防ぎ、独特の粘りやなめらかさをチーズに与えてくれる働きがあります。スーパーで売られている多くのクリームチーズ製品の原材料表示を見ると、安定剤としてローカストビーンガムが記載されていることに気づくでしょう。
ゼリーやプリン、コンニャクなどのデザート類にも配合されます。ローカストビーンガムは単独ではゲル化しませんが、キサンタンガムやカッパカラギナンといった他の多糖類と組み合わせることで相乗効果が生まれます。
弾力性のあるゲルを形成できるわけです。
ドレッシングやソース類では、とろみを付けるために使用されます。糸引き性がなくすっきりとした粘性を示すため、口当たりの良い製品に仕上がります。フルーツソースやシロップにも添加され、なめらかな質感を実現しています。
飲料分野では、乳飲料やフルーツジュース、スムージーなどに安定剤として配合されています。成分の分離を防ぎ、均一な状態を保つために役立ちます。
パン類や焼き菓子にも使われることがあります。生地の保水性を高め、しっとりとした食感を長く保つ効果があるためです。グルテンフリー製品では、グルテンの代わりに結着剤として機能します。
太陽化学の食と健康Labでは、アイスクリームにおける増粘安定剤の詳しい役割が解説されています
ローカストビーンガムの安全性については、複数の視点から評価する必要があります。まず基本的な毒性試験の結果から見ていきましょう。
欧州食品安全機関(EFSA)の評価によると、げっ歯類を用いた90日間毒性試験および発がん性試験において、試験された最大用量で有害影響は報告されませんでした。遺伝毒性試験でも陰性という結果が出ています。
これは基本的に安全ということですね。
ただし、ローカストビーンガムは人体で実質的に消化されません。そのままの自然な状態では吸収されませんが、腸内細菌によってかなり発酵されることが分かっています。この発酵過程が腸内環境にどのような影響を与えるかが重要なポイントになります。
2022年の研究では、乳化剤に分類されるローカストビーンガムなどの「ガム」系添加物が腸内細菌叢の構成や機能に悪影響を与える可能性が指摘されました。科学誌「マイクロバイオーム」に掲載された研究で、食品メーカーがよく使う20種類の乳化剤の多くが腸内細菌に影響を与え、炎症を引き起こす可能性があるとされています。
過剰摂取した場合の症状として、鼓腸(ガスが溜まる)、消化不良、下痢などが報告されています。ただし通常の食品添加物として使用される量では、これらの症状が出ることはほとんどありません。
アレルギーのリスクも存在します。稀ではありますが、ローカストビーンガムに対してアレルギー反応を示す個別事例が1992年から2011年の間に4件報告されています。ジャム工場で働く男性が喘息を訴えた事例や、デザートを食べた女性が唇の腫れを訴えた事例などです。
2020年から2021年にかけて、ヨーロッパでローカストビーンガムのエチレンオキシド汚染問題が発覚しました。エチレンオキシドは遺伝毒性や発がん性が指摘される物質で、この汚染によりアイスクリーム製品などが大規模に回収される事態となりました。これは原料の燻蒸処理過程で混入したものと考えられています。
食品安全委員会の評価書では、ローカストビーンガムの詳細な安全性評価が確認できます
美容意識の高い方にとって重要なのは、腸内環境と美肌の関係です。腸内細菌叢が乱れると、肌荒れやニキビなどの肌トラブルにつながる可能性があります。日常的にローカストビーンガムを含む加工食品を多く摂取している場合は、腸内環境への影響を考慮する必要があるかもしれません。
ローカストビーンガムは食品だけでなく、化粧品分野でも広く活用されています。化粧品では主に親水性増粘剤として配合され、製品のテクスチャーや安定性を向上させる役割を担います。
保湿効果が化粧品配合の大きな目的のひとつです。ローカストビーンガムは非常に高い保水性を持ち、肌の表面に保水膜を形成します。この膜が水分の蒸発を防ぎ、長時間にわたって肌のうるおいを保ちます。通常の保湿剤と比べて、湿度が低い環境でも保湿効果が持続しやすい特性があります。
肌のハリ改善効果も期待されています。いくつかの化粧品メーカーの研究によると、ローカストビーンガム成分において抗シワのアクティブ効果が確認されています。製品の70~90%を占めるローカストビーンガム成分で、肌のハリ改善効果が実証されたという報告もあります。
毛穴ケア成分としての活用も進んでいます。クレンジング製品では、天然ゲルのローカストビーンガムが皮脂汚れを吸着し、毛穴汚れや古い角質を取り除く効果を発揮します。洗い流した後も、うるおいが持続するしっとりとした洗い上がりが特徴です。
粘度調整の機能も重要です。ローカストビーンガムの水溶液はシュードプラスチック性を示します。これは力を加えると粘度が低下する性質で、容器から出すときはスムーズに出て、肌に乗せると適度な粘度で広がるという使い心地の良さにつながります。
製品の安定性向上にも貢献しています。化粧品の成分が分離したり沈殿したりするのを防ぎ、長期間にわたって均一な状態を保ちます。糸引き性がなくすっきりとした質感なので、べたつきを抑えた軽い使用感を実現できます。
配合される化粧品の種類は多岐にわたります。スキンケア製品では美容液、クリーム、化粧水、パック・マスク類に使用されます。ボディケア製品ではボディクリームやハンドクリーム、メイクアップ製品では化粧下地やファンデーション、洗浄製品ではクレンジングや洗顔料、ボディソープなどに配合されています。
海外の2011年の調査によると、リーブオン製品(付けっ放し製品)での配合濃度は最大0.6%程度、リンスオフ製品(洗い流し製品)では最大2%程度とされています。
比較的低濃度で効果を発揮できる成分です。
化粧品における安全性については、40年以上の使用実績があり、重大な皮膚トラブルの報告はほとんどありません。皮膚刺激性試験では最小限の刺激、眼刺激性試験でも最小限の刺激という結果が出ています。
化粧品成分オンラインでは、ローカストビーンガムの配合目的と安全性データが詳しく解説されています
ただし、植物由来の成分であるため、植物アレルギーを持つ方は注意が必要です。パッチテストを行ってから使用することをおすすめします。初めて使用する製品は、目立たない部位で試してから顔全体に使うようにしましょう。
美容効果を最大限に引き出すには、他の美容成分との組み合わせが重要になります。例えばヒアルロン酸やセラミドといった保湿成分と一緒に配合されることで、より高い保湿効果が期待できます。ビタミンC誘導体やレチノールなどのエイジングケア成分と組み合わせれば、肌のハリをさらに高められる可能性があります。
美容と健康を意識する方の中には、食品添加物をできるだけ避けたいと考える人も増えています。ローカストビーンガムが気になる場合の実践的な対策を見ていきましょう。
食品選びの基本は原材料表示の確認です。スーパーやコンビニで購入する際は、パッケージ裏面の原材料名をチェックする習慣をつけましょう。「ローカストビーンガム」「カロブビーンガム」「増粘多糖類」といった表示があれば含まれています。増粘多糖類と書かれている場合、ローカストビーンガム以外の多糖類も含まれている可能性があります。
アイスクリームを選ぶ際の代替品として、添加物不使用をうたう商品や、オーガニック認証を受けた製品を選ぶ方法があります。高級アイスクリームの中には、安定剤を使わずに卵黄や生クリームだけで仕上げたものもあります。値段は高めですが、シンプルな原材料で作られています。
クリームチーズの場合は、フレッシュチーズや手作りチーズを選択肢に入れることができます。リコッタチーズやマスカルポーネなど、伝統的な製法で作られるチーズには安定剤が使われていないことが多いです。
ドレッシングやソース類は自家製にするのが最も確実な方法です。オリーブオイルと酢、レモン汁、塩コショウなどシンプルな材料で作れば、添加物を完全に避けられます。とろみが欲しい場合は、すりおろした玉ねぎやリンゴ、マスタードなどの天然素材でつけることができます。
デザート類では、寒天やゼラチンを使った手作りゼリーやプリンがおすすめです。寒天は海藻由来、ゼラチンは動物由来のコラーゲンで、どちらも伝統的に使われてきた天然のゲル化剤です。
外食時の選択も工夫できます。素材の味を生かした料理を提供するレストランや、オーガニック食材を使う店を選ぶことで、添加物の摂取を減らせます。ファストフードやコンビニ食品に頼りすぎない食生活を心がけましょう。
腸内環境への影響が気になる場合は、発酵食品を積極的に摂る対策が有効です。ヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、ぬか漬けなどの発酵食品には善玉菌が豊富に含まれています。これらを日常的に食べることで、腸内細菌叢のバランスを整えられます。
食物繊維の摂取も腸内環境改善に役立ちます。野菜、果物、全粒穀物、豆類、海藻などに含まれる食物繊維は、善玉菌のエサになり、腸内環境を健やかに保ちます。特に水溶性食物繊維が豊富なオートミールや大麦、りんご、バナナなどがおすすめです。
化粧品で避けたい場合は、成分表示を必ずチェックしましょう。「ローカストビーンガム」「Ceratonia Siliqua Gum」といった表示があれば配合されています。オーガニックコスメやナチュラルコスメのブランドでも使われることがあるため、天然成分だから安心と決めつけず、確認が必要です。
添加物フリーのスキンケアとして、シンプルな成分構成の製品を選ぶ方法があります。ホホバオイル、シアバター、アルガンオイルなど、単一成分のオイルやバターを使ったケアなら、余計な成分を避けられます。
ただし、添加物を過度に恐れる必要はありません。ローカストビーンガムは天然由来で、通常の使用量では健康への悪影響は報告されていません。バランスの取れた食生活を送ることの方が、美容と健康には重要です。
気になる場合は、加工食品への依存度を下げ、できるだけ素材から調理する食生活にシフトしていくのが現実的な対策といえるでしょう。完全に避けるのは難しくても、摂取頻度を減らすことは可能です。