

抗生物質を使い続けても繰り返すニキビは、実はあなた自身の「菌バランスが崩れたまま」が原因で、スキンケアを変えるだけでは根本から解決できないことが研究で示されています。
「ファージセラピー」という言葉を美容の文脈で初めて耳にする方も多いかもしれませんが、その歴史は意外なほど古く、1910年代にはすでにジョージア(旧グルジア)、ロシア、ポーランドなど東欧諸国で研究・治療が行われていました。日本では馴染みが薄いこの療法ですが、「バクテリオファージ」と呼ばれるウイルスを使って細菌感染症を治す手法のことです。
バクテリオファージは文字通り「細菌(バクテリア)を食べる者(ファージ)」という意味で、特定の細菌だけに感染して内側から破壊します。重要なのは、ターゲット以外の細菌には一切作用しない点です。これが抗生物質との大きな違いで、腸内や肌の善玉菌をそのまま守りながら悪玉菌だけを撃退できます。
つまり、肌にとっても「狙い撃ち」ができるということです。
| 比較項目 | 抗生物質 | バクテリオファージ |
|---|---|---|
| ターゲット | 幅広い細菌(善玉菌も攻撃) | 特定の菌のみ(善玉菌を守る) |
| 耐性菌リスク | 長期使用で耐性菌が出現しやすい | 耐性菌にも対応できる可能性あり |
| 副作用 | 腸内フローラ・肌フローラへの悪影響あり | 人体の細胞に直接作用しないため少ない |
| 美容への応用 | 外用抗菌薬として使用(耐性リスク) | 化粧品・スキンケアへの活用が進む |
美容に関心がある方なら、まずこの「菌を選んで攻撃できる」という特性を頭に入れておくだけで、スキンケア選びの視点が変わります。
ファージセラピーの発見は1915年(F. W. Twort)と1917年(F. d'Herelle)にさかのぼり、抗生物質よりも長い歴史を持っています。
知られていないことが多いですね。
1928年にペニシリンが発見されると、抗生物質が医療の主役になったことでファージセラピーは西洋医学では忘れられた存在となりました。ただし、ジョージア・ロシア・ポーランドなど東欧諸国では途切れることなく研究が続けられていました。ジョージアの首都トビリシには、今でもエリアバ研究所というファージ専門の研究機関が存在し、100年以上にわたって患者への治療を行い続けています。
日本においては、現時点でファージセラピーは「未承認治療」です。一握りの研究室で基礎研究が進んでいるものの、国の認可基準が整っていないため、医療現場への本格導入には至っていません。2024年3月に大阪公立大学がニキビ患者を対象とした臨床研究を開始したことが、国内では初めてのヒトへのファージ療法の応用事例となりました。日本感染症学会にも2025年現在、「ファージ療法検討委員会」が設置されており、実用化に向けた議論が続いています。
世界市場で見ると、ファージ療法市場は2024年時点で約3億1,363万ドルと評価されており、2032年には約1,116億ドルへの成長が予測されています(年平均成長率17.2%)。医療・美容の両面で、これだけ急速に注目を集めている分野はほかにありません。
大阪公立大学:ニキビ患者を対象としたバクテリオファージ療法の臨床試験開始(日本初)について詳しく解説されています。
腸内フローラは多くの方がご存じの概念ですが、実は肌にもまったく同じ仕組みがあります。
これは使えそうです。
肌の表面には数百種類もの微生物が共存しており、この集合体を「肌フローラ(スキンマイクロバイオーム)」と呼びます。
大きく分けて次の3種類が存在しています。
バクテリオファージはこの肌フローラの中で「パトロール役」として機能します。増えすぎた悪玉菌や日和見菌を見つけると直接作用し、善玉菌は守ったままバランスを回復させます。
肌フローラが整うことが基本です。
保湿成分を重ねても繰り返しニキビが治らない根本的な理由は、この菌バランスが崩れたままになっているからとも考えられます。アルコール配合のスキンケアや、強い洗浄力の洗顔料を使い続けると、悪玉菌だけでなく善玉菌まで殺してしまい、かえって肌フローラが乱れることがあります。
注意が必要なポイントですね。
イスクラファージ公式ブログ(皮膚科医 中村先生監修):肌の常在菌と美肌フローラの仕組みが詳しく説明されています。
2024年1月18日、大阪公立大学大学院医学研究科が「尋常性ざ瘡(ニキビ)患者を対象としたバクテリオファージ療法の臨床試験開始」を発表しました。
日本初です。
この研究が立ち上がった背景には、薬剤耐性菌という世界規模の問題があります。世界保健機関(WHO)の推計では、薬剤耐性菌による死亡者数は2050年には全世界で年間1,000万人を超えると見込まれており、既存の抗菌薬が効かない患者が増え続けています。ニキビ治療でも例外ではなく、皮膚科で長期間抗生物質を処方され続けた患者の中には、抗生物質耐性のアクネ菌が発生しているケースが報告されています。
臨床研究では、ロシアのミクロミル社が製造したファージ製剤(日本名称:イスクラファージ スキンバランス)を使用。安全性と効果の両面を評価することが目的です。研究チームは皮膚病態学の鶴田大輔教授・立石千晴准教授、ゲノム免疫学の植松智教授・藤本康介准教授で構成され、皮膚科と免疫学の専門家が連携するという、これまでにない体制で進められています。
この研究の意義は大きいです。
抗生物質が最大3ヶ月を目安とした使用に限定されているのに対し、バクテリオファージは腸内や肌の善玉菌を傷つけない性質から、長期的なケアへの活用に期待が高まっています。
読売新聞:大阪公立大学によるニキビへのファージ療法・国内初臨床研究の概要が報道されています。
医療現場での承認が進む前に、すでに化粧品の世界ではバクテリオファージが活用されています。
日本初のバクテリオファージ由来DNA配合美容液として登場したのが、イスクラ産業株式会社の「イスクラファージ Skin Balance 美容液」です。2024年10月時点で日本国内で販売されている公表・回答のあったDNA配合化粧品13件の中で唯一、バクテリオファージ由来のDNAを配合していると確認されています。
製品の特徴は以下の通りです。
使い方は朝晩2回、洗顔後に1〜2プッシュ(10円玉大)を顔全体になじませるだけ。継続コースで9,405円(税込)、単品購入で100mLが9,900円(税込)というラインナップとなっています。
続けやすさが条件です。
肌状態は日々の積み重ねで変化していくため、菌バランスのアプローチはとくに継続使用が重要です。NHKの「サイエンスZERO」(2024年7月14日初回放送)でもバクテリオファージが取り上げられており、美容・医療の両方で注目度は急上昇中です。
イスクラファージ公式ショップ:バクテリオファージ由来DNA配合の日本初美容液の詳細・購入ページです。
皮膚科でニキビ治療をしたことがある方なら、ミノマイシンやビブラマイシンといったテトラサイクリン系の抗生物質を処方された経験があるかもしれません。これらはアクネ菌のタンパク質合成を阻害することで炎症を抑える効果があり、現在も第一選択薬として広く使われています。
しかし、日本皮膚科学会のガイドラインでも抗生物質の使用期間は「最大3ヶ月」を目安としており、その理由は耐性菌の出現リスクです。長期間使い続けると、アクネ菌自体が抗生物質に「慣れて」しまい、薬が効かなくなってしまいます。
厳しいところですね。
一方、バクテリオファージが持つ特徴は次のように整理できます。
もちろん、ファージセラピーが万能というわけではありません。ファージが有効な細菌の範囲は「株レベル」と呼ばれるほど狭いため、自分の肌のアクネ菌の型に合ったファージでなければ効果が出ないケースもあります。また、日本ではまだ医薬品としての承認を受けていないため、現時点では「化粧品」の枠内での活用が中心です。
抗生物質と組み合わせたり、スキンケアの軸を「菌バランスを整える」方向にシフトしたりすることで、繰り返しニキビに悩む方の選択肢は確実に広がっています。
「100年以上の歴史があるのになぜ普及しないのか?」これが多くの研究者の共通の疑問でもあります。
意外ですね。
理由は複数あります。第一に、ファージは「ウイルス」という分類に属するため、一般的に持たれる「ウイルス=危険」というイメージが普及の妨げになってきました。第二に、ファージは菌の「株レベル」でしか効かないため、患者ごとに適したファージを探す必要があり、抗生物質のように「とりあえず処方」という運用が難しい。第三に、ペニシリンをはじめとする抗生物質が1940〜1960年代に爆発的に普及したことで、西側諸国での研究資金がファージから抗生物質へと移ったこともあります。
日本においては、規制当局(PMDA:独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が2024年に「薬剤耐性菌感染症に用いるファージ製剤の開発における留意事項」を取りまとめており、承認基準の整備が少しずつ前進しています。また、日本感染症学会の「ファージ療法検討委員会」(委員長:国際医療福祉大学 松本哲哉教授)が2025年8月時点でも活動を継続しており、実用化に向けた議論が行われています。
実用化への道筋は、少しずつ見えてきています。
美容の観点では、化粧品という枠組みであれば規制が医薬品よりも緩やかなため、すでにスキンケアへの応用が始まっています。今後、臨床データが蓄積されれば、美容医療クリニックでのファージセラピー応用も現実に近づくでしょう。
日本感染症学会:ファージ療法検討委員会の構成メンバーと活動内容が確認できます。
ファージセラピーが今後応用される領域は、ニキビだけではありません。
これは使えそうです。
現在、医学的に研究が進んでいる主な皮膚疾患の応用例は次のとおりです。
美容医療の世界では「スキンバイオーム(皮膚微生物叢)」という概念がここ数年で急速に注目を集めており、プレバイオティクスやプロバイオティクスを取り入れたスキンケアが増えています。バクテリオファージはその「次世代バージョン」として位置づけられており、欧米の美容業界では「バクテリオファージペプチド」を配合したスキンケアラインも登場しています。
国産のアプローチとしては、Campfireでクラウドファンディングを経た「DR.Phageスキンケアローション」のように、国産バクテリオファージを配合した化粧水も登場しており、選択肢が増えています。狙った特定の菌のみにアプローチする設計で、肌の善玉菌を守りながらケアするというコンセプトです。
スキンバイオームが次の美容の主戦場です。
日本の美容業界でも、腸内フローラの延長として「肌フローラ」への注目が高まっているタイミングで、ファージセラピーの考え方を取り入れたスキンケアを選ぶことは、先取り的なアプローチといえます。
現時点で日本においてファージセラピーを「医療」として受けることはできませんが、化粧品の枠組みで取り入れることは今すぐできます。
スキンケアに取り入れる際に押さえておきたいポイントをまとめると次の通りです。
注意だけ覚えておけばOKです。
特に大人ニキビや繰り返すニキビに悩んでいる方は、これまでの「殺菌・拭き取り」型スキンケアから「菌バランスを整える」型のスキンケアへシフトすることを検討してみてください。肌フローラの崩れが背景にある場合、従来の殺菌型アプローチでは善玉菌まで傷つけてしまうリスクがある点が、近年の皮膚科学研究でも指摘されています。
バクテリオファージ.jp:繰り返しニキビの原因と対策、バクテリオファージのアプローチについて詳しく解説されています。
ここまで美容・スキンケアの文脈でファージセラピーを見てきましたが、実は「腸内」にも同様の仕組みが存在することをご存じでしょうか。
国立国際医療研究センター(NCGM)が2022年に発表した研究では、4,198人を対象とした大規模解析によって、日本人の腸内に生息するバクテリオファージの全貌が初めて明らかになりました。腸内にも腸内細菌と共存する形で多数のファージが存在しており、腸内フローラのバランス維持に関与していることが示されています。
これは何を意味するかというと、「腸内フローラ=腸活」だけでなく、「肌フローラ=スキンケア活」においても、ファージが健康・美容の両面で中心的な役割を担っている可能性があるということです。腸と肌は「腸肌相関」と呼ばれるほど密接につながっており、腸内の菌バランスが乱れると肌荒れや炎症が悪化しやすいことが知られています。
腸と肌の菌バランスは連動しているということです。
つまり、ファージセラピーの概念は今後、外側(スキンケア)だけでなく、内側(サプリメント・プロバイオティクス的アプローチ)からも美容に影響を与える可能性があります。現在は研究段階ですが、腸内ファージを活用したサプリメントや機能性食品の開発も海外では始まっており、日本でも数年内に選択肢が出てくる可能性があります。
美容に興味があるなら、腸活と肌ケアを「菌バランス」という共通軸でとらえなおすことで、より根本的なアプローチが見えてきます。
国立国際医療研究センター:日本人腸内のバクテリオファージの全貌を解析した大規模研究の内容が確認できます。

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