

褥瘡に悩んでいる人でも、美容目的のCGF治療を受けると肌が若返ることがあります。
CGFとは「Concentrated Growth Factors(濃縮成長因子)」の略称で、患者自身の血液を専用の遠心分離機にかけることで生成される、成長因子を高濃度に含んだフィブリンゲルのことを指します。一般的に美容や歯科の文脈で目にする機会が増えていますが、実は褥瘡(床ずれ)などの難治性創傷治療においても注目されている医療技術です。
フィブリンとは、出血したときに自然と傷口を塞ぐ役割を担うタンパク質の一種です。CGFはそのフィブリンをさらに人工的に濃縮し、創傷治癒に必要な成長因子を高密度に閉じ込めたゲル状の素材です。つまり、自分の体が持っている「治す力」を凝縮したものと考えると理解しやすいでしょう。
CGFの最大の特徴は「完全自己血液由来」であることです。採血量はおよそ9〜18mL程度(採血管1〜2本分)と少量で済み、添加物や薬剤を一切使わないため、アレルギーや副作用が非常に起こりにくいとされています。完全自己由来が原則です。
実際、2022年に埼玉医科大学総合医療センター歯科口腔外科が公開した院内ニュースでは、CGFを抜歯後の骨空洞に填入することで「術後の痛みの緩和や創部の治癒促進効果が得られ、患者から好評を得ている」と報告されています。褥瘡治療においても同じ仕組みを応用した研究が、世界各地で進んでいます。
成長因子の代表例としては、PDGF(血小板由来成長因子)やVEGF(血管内皮成長因子)、TGF-β(形質転換成長因子)などが挙げられます。これらは細胞増殖・血管新生・組織修復をそれぞれ担う物質で、コラーゲンやエラスチンの合成促進にも関わります。美容目的のFGF・EGF成分入り化粧品でよく耳にする「成長因子」と、根本的に同じ仕組みを医療レベルで実践するのがCGF療法と言えるでしょう。
| 項目 | CGF(再生医療) | PRP(多血小板血漿) |
|---|---|---|
| 原料 | 自己血液 | |
| 主成分 | 濃縮フィブリンゲル+成長因子 | 濃縮血小板+成長因子 |
| 成長因子放出期間 | 比較的長期(ゲルが徐放) | 比較的短期 |
| 形状 | 固体状ゲル | 液体状 |
| 主な適用部位 | 歯科・褥瘡・皮膚欠損 | 関節・皮膚・毛髪 |
CGFはPRPより線維素網(フィブリン網)が緻密なため、より長い期間にわたって成長因子を徐放できることが再生医療の専門家らに指摘されています。これが「治癒の持続性」という観点で重要なポイントになります。
褥瘡(床ずれ)は、同一部位への長時間の圧迫によって血流が低下し、皮膚や皮下組織が壊死に至る状態です。日本褥瘡学会の調査では、病院入院患者の約2.46%(100人あたり約2〜3人)に褥瘡が存在すると報告されています。特に糖尿病などの基礎疾患を持つ高齢者では発生率がさらに高く、治癒が著しく遅れるケースが多いです。深い褥瘡は数カ月〜1年以上かかることもあります。
CGFが褥瘡治療で注目される理由は、成長因子による「能動的な組織再生」にあります。通常の処置は「感染を防ぎながら待つ」受動的なアプローチが中心ですが、CGFは線維芽細胞の増殖・血管新生・コラーゲン産生を直接刺激することで、治癒プロセスを加速させると考えられています。
2025年にFront Endocrinology誌に掲載された研究では、60歳以上の糖尿病患者51例を対象に、標準ケア単独(26例)とCGF追加治療(25例)を比較した症例対照研究の結果が発表されました。治療開始から14日後の疼痛スコア(VAS)がCGF群では3.52(対照群:4.46、P<0.001)と有意に低下し、創傷治癒スコア(PUSH)も6.52(対照群:8.23、P<0.001)と大幅に改善されたことが確認されています。これは使えそうです。
さらに同研究では、CGF治療群で白血球数・CRP(C反応性タンパク)・プロカルシトニン・IL-6(インターロイキン6)といった炎症マーカーが有意に低下したことも示されました。つまりCGFは傷を「治すだけ」でなく「炎症を鎮める」ダブルの効果を持つということです。
また別の研究(Medicine誌・2025年10月)では、巨大皮膚腫瘍切除後の欠損部にCGFゲルを使用した群は、ドレナージのみの群と比べて治癒時間が11.5日(対照群より有意に短縮)、入院期間が7.31日に短縮されたという結果が報告されています。褥瘡と同様の皮膚欠損モデルで、CGFの有効性が裏付けられました。
CGFによる治癒促進の仕組みをまとめると、以下の3つのステップで起こります。
- Step1:成長因子の徐放 CGFのフィブリンゲルが創部に置かれると、体温と水分に反応してゆっくりと溶け、PDGF・VEGFなどの成長因子を徐々に放出します。
- Step2:細胞の活性化 放出された成長因子が線維芽細胞・血管内皮細胞・表皮細胞を刺激し、コラーゲン合成と新生血管の形成が促進されます。
- Step3:組織の再構築 新たなコラーゲンと血管網が形成されることで、肉芽組織が充填され、最終的に上皮化(皮膚再生)へとつながります。
この一連の流れは、ちょうどスキンケアで「ビタミンCでコラーゲン生成を促す」ことの、医療版かつはるかに強力なバージョンといえます。
「CGF」という名前が付く製品として、医療現場でよく知られているのが「デュオアクティブCGF」(コンバテック社)です。ただし、これは前述の「自己血由来の再生医療CGF」とはまったく別物なので注意が必要です。
デュオアクティブCGFは、ハイドロコロイド素材を用いた創傷被覆材(ドレッシング材)の商品名です。「CGF」は製品ラインのアルファベットであり、「Concentrated Growth Factors」の略ではありません。同ブランドの「デュオアクティブET」の改良版で、交換時にゲルが創面に残りにくく、柔軟性が高い点が特徴です。これが基本です。
この製品の仕組みは以下のとおりです。
- 粘着性のあるハイドロコロイド層が、創部の滲出液を吸収してゲル化する
- ゲル化した層が創面の湿潤環境を維持し、線維芽細胞の増殖と上皮化を促す
- 外側の防水性ポリウレタンフォーム層が外部の衝撃・細菌・失禁汚染からクッションとなって創部を守る
PMDA(医薬品医療機器総合機構)の公式文書によれば、デュオアクティブCGFは「皮下脂肪組織までの創傷(Ⅲ度熱傷を除く)に対する創の保護・湿潤環境の維持・治癒の促進・疼痛の軽減を目的とする」と定義されています。特に褥瘡ではNPUAP分類Ⅲ度(皮下組織に至る深さ)相当の創傷に適用されることが多く、保険適用で使用可能です。
貼付できる最長期間は7日間です。滲出液が吸収パッドの端から1cm以内に広がったら交換のサインになります。7日を超えてそのまま貼り続けると、皮膚かぶれのリスクが高まるため注意が必要です。7日以内が条件です。
| 種類 | デュオアクティブET | デュオアクティブCGF |
|---|---|---|
| 適応創深度 | 真皮まで(浅い創) | 皮下組織まで(やや深い創) |
| ゲル残留 | やや残りやすい | 残りにくい(改良版) |
| 柔軟性 | 標準 | 高い(骨突出部にも対応) |
| 保険適用 | あり |
再生医療としてのCGFと、ドレッシング材としてのデュオアクティブCGFは「名前が似ているだけの別物」ですが、どちらも褥瘡の治癒に活用できる選択肢です。前者は自費・自己血採取が必要で、後者は保険適用で誰でも使える既製品という違いがあります。状況と創の深さに応じた使い分けが重要です。
再生医療としてのCGFを褥瘡治療に活用する場合、基本的な治療の流れは次のようになります。
まず、担当医が血液検査・創部評価を行い、CGF治療の適否を判断します。感染が進行している創傷、または血液疾患・抗凝固薬使用中のケースでは適用外となることがあります。感染のない創部が条件です。
次に、患者の腕や肘から採血(9〜18mL程度)を行い、専用の遠心分離機「メディフュージ」にかけてCGFを生成します。採血からCGF作製までの時間はおよそ10〜15分程度と短く、待ち時間が非常に少ないです。
生成したCGFゲルを直接創部に適用し、上からドレッシング材で固定します。その後は14日後・28日後のタイミングで疼痛スコア・創傷治癒スコアを評価します。前述の研究データでは、28日後にCGF群の疼痛スコアは1.24まで低下(初期値6.92)しています。数字で見ると変化は大きいです。
一方で、注意点もあります。CGFの再生医療は基本的に保険適用外(自由診療)であり、施術費用は施設によって異なりますが、PRPが1回あたり数万円程度かかることを踏まえると、CGFも同様の費用感になる場合があります。また、再生医療の安全性・有効性に関する法律(再生医療等安全性確保法)に基づき、届け出を行った医療機関でのみ実施が可能です。施設の届け出確認が必須です。
デュオアクティブCGFなどのドレッシング材を在宅ケアで利用する場合は、訪問看護や皮膚科の指示のもとで使用することが基本です。自己判断で入手・使用した場合、感染リスクや創部悪化の原因になりえます。
美容に関心を持つ方にとって、CGFが持つ「肌の再生力を高める」仕組みはスキンケア視点でも非常に興味深いポイントです。褥瘡治療で明らかになったCGFの効果、とりわけ「コラーゲン合成の促進」「血管新生の加速」「炎症の抑制」は、そのまま美肌作りに直結する作用です。
美容目的のPRP療法(自己多血小板血漿)は、シワ・たるみ・凹みの改善目的で美容クリニックで行われており、その効果は3〜5年程度持続すると言われています。CGFはPRPよりも線維素ネットワークが緻密で成長因子の放出が長期にわたるため、より持続的な改善効果が期待できる可能性があります。
ただし、美容目的でのCGF・PRPは基本的に保険適用外です。自由診療のため全額自己負担となり、施術費用はクリニックによって異なりますが、1回数万円以上になるケースが多いです。費用の確認は必須です。
一方で、褥瘡ケアから学べる「日常のスキンケアのヒント」もあります。
CGFや成長因子を使った治療は、医療の世界では「治癒を急いでいる創傷」に使われてきた技術ですが、美容においては「より若々しい肌を早く作る」ための応用として普及が進んでいます。治療と美容を分けて考えるのではなく、「皮膚の再生という一つの連続したプロセス」として理解すると、どちらのケアも深まります。肌再生が基本です。
今後、CGFによる褥瘡治療の研究がさらに積み重なれば、難治性創傷の標準治療プロトコルに組み込まれる可能性も高まると研究者らは指摘しています。美容に関心を持つ方が成長因子の仕組みを理解しておくことは、自身のスキンケア選択をより賢くするためにも意味があるといえるでしょう。
参考:自己濃縮成長因子による糖尿病高齢者の褥瘡治癒促進に関する研究(Front Endocrinol. 2025)
CareNet 学術情報|自己濃縮成長因子、糖尿病高齢者の褥瘡治癒を促進(研究概要・数値データ)
参考:デュオアクティブCGFの承認情報(PMDA公式)
PMDA(医薬品医療機器総合機構)|デュオアクティブCGFの機能・動作原理・適応の公式情報
参考:褥瘡ドレッシング材の選び方・種類まとめ
ディアケア|ドレッシング材の種類・選び方(デュオアクティブCGFを含む比較表あり)

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