

塗るだけのスキンケアより、飲む美容の方がくすみ改善が早い場合があります。
ブラックカラントエキスは、日本では「カシス」という名前で親しまれているフルーツ(学名:Ribes nigrum)から抽出される植物成分です。「カシス」はフランス語名、「ブラックカラント」は英語名で、どちらも同じ果実を指しています。化粧品成分表示では「クロフサスグリ果実エキス」として記載されることが多く、スキンケア・メイクアップ・ヘアケアなど幅広い製品に使われています。
この植物はヨーロッパ温帯地方から西アジア・ヒマラヤが原産で、古くから民間薬として利用されてきた長い歴史があります。ベラルーシでは下痢・高血圧の治療に、ウクライナの山岳民族では循環器系の改善に用いられた記録も残っています。これは単なる食用フルーツではなく、昔から「体を整える」ものとして重宝されてきた証といえます。
エキスの主要成分は、次のように分類できます。
- アントシアニン(ツリパニン・ミルチリン・ケラシアニン・クリサンテミン):ポリフェノールの一種で、強力な抗酸化作用の中心
- フラバノール(エピカテキン・カテキン):抗酸化力に加え、さらなる機能的作用を持つ
- ビタミンC(アスコルビン酸):美肌・免疫サポートを担う代表的な抗酸化栄養素
つまり複数の抗酸化成分が一つのエキスに凝縮されているということですね。単一成分ではなく、相乗効果を持つ複合体として機能するのが、ブラックカラントエキスの大きな特長のひとつです。
特筆すべきは、ビタミンCの含有量です。ブラックカラント100g中には150〜250mgのビタミンCが含まれており、これはオレンジ(約40〜60mg)の約3〜4倍に相当します。「ビタミンCといえば柑橘類」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実はブラックカラントの方がはるかに豊富です。これは意外ですね。
さらに、ニュージーランド産のブラックカラントは特に栄養価が高いとされています。南半球特有の強い紫外線への適応として、アントシアニンなどの抗酸化成分を大量に蓄積するためだと考えられています。
【化粧品成分オンライン】クロフサスグリ果実エキスの成分組成・配合目的・安全性の詳細データ(コーセーのヒト使用試験データも掲載)
ブラックカラントエキスの美白作用は、株式会社コーセーによる2001年の研究で科学的に証明されています。この研究は単なる体感レポートではなく、厳密な条件下での試験であることが重要なポイントです。
試験では27〜54歳の女性被検者45名を3グループ(各15名)に分け、それぞれ「水抽出エキス配合クリーム」「50%エタノール抽出エキス配合クリーム」「エキス無配合クリーム(プラセボ)」を1日2回・3ヶ月間にわたって顔面に塗布しました。結果は以下のとおりです。
| グループ | 「有効」 | 「やや有効」 | 「無効」 |
|---|---|---|---|
| 水抽出エキス配合 | 10名 (67%) | 4名 (27%) | 1名 (7%) |
| 50%エタノール抽出エキス配合 | 11名 (73%) | 4名 (27%) | 0名 (0%) |
| エキス無配合(プラセボ) | 0名 (0%) | 2名 (13%) | 13名 (87%) |
エキス配合グループでは約93〜100%の被検者がくすみの改善を実感したのに対し、プラセボグループでは87%が「効果なし」という結果でした。この差は非常に明確です。エキス配合が条件です。
このくすみ改善のメカニズムは「メラニン生成の抑制」にあります。肌に紫外線が当たると、ケラチノサイト(表皮細胞)からメラノサイト活性化因子が分泌され、メラノサイトでのメラニン合成が促進されます。ブラックカラントエキスは、チロシナーゼ(メラニン合成の鍵酵素)の活性を阻害することで、この過剰なメラニン生産を抑えます。結果として、色素沈着の予防と肌の明るさ維持につながるわけです。
つまりメラニンを根本から作らせない仕組みに働くということですね。すでに沈着したシミへの直接的な消去作用ではなく、「これ以上くすまないようにする」予防的な美白として捉えるとわかりやすいでしょう。
また、エキス中の「クリサンテミン」という成分は、ヒト使用試験においてしっとり感の付与・ヒアルロン酸産生促進・ハリ改善・血流量増加といった複合的な作用が確認されています。くすみケアと同時に、肌の密度や潤いを引き上げる効果も期待できる点が、ブラックカラントエキスの強みといえます。
【化粧品成分オンライン】コーセーによる45名のヒト使用試験データ・メラニン生成抑制の詳細メカニズム解説
美容成分として「保湿」は最もよく語られる効果ですが、ブラックカラントエキスはその仕組みが他の成分とは少し異なります。外側から水分を補う「コーティング型」ではなく、肌が自ら保湿成分を産生する能力を高める「内側から整える型」のアプローチです。これは使えそうです。
日本ブラックカラント協会が2026年に公開した記事では、2018年に中村優子氏らのチームが発表した研究を引用し、ブラックカラント由来アントシアニンが次の3種類の成分を肌細胞内で増加させることを確認したと報告しています(Nanashima et al., 2018)。
- コラーゲン:肌のハリと弾力を支えるたんぱく質。産生量が増えると皮膚の密度が上がります。
- エラスチン:引っ張っても元に戻る弾力性を担う成分。年齢とともに急速に減少します。
- ヒアルロン酸:1gで約6,000mlもの水を保持できる、体内最強の保湿物質。肌のふっくら感に直結します。
年齢を重ねると、特に更年期以降にエストロゲン(女性ホルモン)が低下し、肌が薄く・乾燥しやすくなります。ブラックカラント由来アントシアニンは、このエストロゲンに似た構造(フィトエストロゲン作用)を持つことが判明しており、肌細胞に対してエストロゲンの有益な働きの一部を補うことができると考えられています。
加齢による肌悩みにフィトエストロゲンが関係するということですね。「保湿クリームを塗ってもハリが出ない」と感じている場合、それはホルモン変化による細胞レベルの変化が背景にある可能性があります。外側からの保湿ケアに加えて、こうした「細胞の産生力」に働きかける成分に注目することが、エイジングスキンケアの新しい視点といえます。
また、2005〜2008年にかけて行われた松本均氏らの研究では、ブラックカラント抽出物が末梢血流と「ポジティブな関連」を持つことが示されました(Matsumoto et al., 2006)。血流が改善されると、真皮により多くの酸素と栄養が届き、老廃物の排出も効率化されます。これが「内側から肌色が明るくなる」実感につながるメカニズムです。
日本カシス協会によれば、カシスアントシアニンを摂取してから約15分後には血液中に成分が現れ始め、1〜2時間で血中濃度が最大に、そして8時間後でも血中濃度の約22%が維持されるとされています。速効性と持続性の両方を持つ点が特長です。
【日本ブラックカラント協会】ブラックカラントのフィトエストロゲン作用・コラーゲン/エラスチン/ヒアルロン酸増加の最新研究解説(2026年公開)
ブラックカラントの美容効果は、果実エキスだけにとどまりません。近年注目されているのが、種子から得られるオイルの「炎症収束」機能です。ナリス化粧品が2023年10月に発表した研究によって、この新しい顔が明らかになりました。
従来、肌の炎症(特に紫外線ダメージ後の赤みや悪化)は、炎症を起こす物質が自然に減少することで終わる「受動的なプロセス」だと考えられていました。しかし近年の研究では、炎症を終わらせる「炎症収束因子」(レゾルビンなど)が積極的に制御する「能動的なプロセス」であることが判明しています。
ナリス化粧品の研究では、若齢者と老齢者の肌細胞を紫外線照射後に比較した結果、次のことがわかりました。
- 老齢者の肌では炎症誘発因子(IL-6)の分泌が若齢者より多い
- 一方、炎症収束因子(レゾルビン)の分泌は老齢者の方が少ない
つまり加齢した肌は「炎症が起きやすく、かつ収まりにくい」という二重のリスクを抱えているということですね。これが、年齢とともに日焼け後の赤みや肌荒れが長引きやすくなる理由のひとつです。
そして複数の植物成分のスクリーニングを実施したところ、ブラックカラントの種子オイルに炎症収束因子を増やす効果があることが判明しました。種子オイルにはα-リノレン酸・γ-リノレン酸(GLA)・ステアリドン酸が豊富に含まれており、これらのオメガ脂肪酸が炎症の終結を助けると考えられています。肌ダメージの修復プロセスを早めることで、日常的な紫外線ダメージの蓄積を防ぐ効果が期待されます。
種子オイルの働きが原因の解決に近いといえます。従来の「抗炎症成分で炎症を抑える」アプローチとは異なり、「自然な炎症収束プロセスを促進する」という考え方は、肌の本来の治癒力を活かしたケアとして注目されます。
この研究成果を受け、ナリス化粧品は2023年11月に「セルグレース」シリーズの美容液にブラックカラントオイル(クロフサスグリ種子油)を配合してリニューアル発売しています。50代以上の肌の変化に着目して1995年から展開されているブランドで、エイジングケアに強みを持つ製品ラインです。
【PR TIMES/ナリス化粧品】ブラックカラント種子の炎症収束効果を確認した研究の詳細プレスリリース(2023年10月)
「抗酸化作用のある成分」は美容の世界にたくさんあります。ブルーベリー・ビタミンC・ポリフェノール…と選択肢が多い中で、なぜブラックカラントエキスが特別なのかを理解するには、その抗酸化力の「質と量」に着目する必要があります。
ニュージーランド作物・食品研究所が発表した研究によると、ブラックカラントはABTS法(ラジカル消去能の測定)・TRAP法・FRAP法など複数の異なる抗酸化評価試験において、ブルーベリーを含む他のほとんどのベリーフルーツよりも高い抗酸化活性を示しました。これはひとつの測定法ではなく、複数の評価軸で一貫して上位に位置するという意味であり、信頼性が高い結果です。
その強さの理由は、「アントシアニンの種類と量のバランス」にあります。
ブラックカラントが含む代表的なアントシアニンは次の4種類です。
- シアニジン-3-ルチノシド(約38%)
- デルフィニジン-3-ルチノシド(約34%)
- デルフィニジン-3-グリコシド(約16%)
- シアニジン-3-グリコシド(約9%)
ブルーベリーはアントシアニンの種類は多いものの、1種類あたりの量が少ないという特徴があります。一方ブラックカラントは種類を4種に絞った上で、各アントシアニンの量が多く、特にデルフィニジン系のアントシアニンが豊富です。デルフィニジン系は抗酸化力が特に強いことで知られています。
さらに、ビタミンCとアントシアニンの間には「協同作用(シナジー)」が働くとされています。両者が同時に存在することで、単独よりも高い抗酸化効果を発揮する可能性があります。ブラックカラントはこの2成分を同時に高濃度で含む、自然界では珍しい存在です。
加えて注目すべき点は、加工後の安定性です。ブラックカラントの抗酸化活性は、ジュース・ワイン・ジャムに加工した後でも高い水準を保持することが確認されています。また、アントシアニンとフラボノイドのビタミンCを保護する作用により、通常は加工・保存で失われやすいビタミンCが安定した状態で残存しやすいという特性も持っています。
化粧品として外用する場合も同様に、エキスとして配合されたアントシアニンは肌上で安定した抗酸化作用を発揮することが期待されます。日常的に紫外線・大気汚染・ストレスにさらされる肌にとって、複合的な抗酸化防御は老化予防の基本です。
【光洋ジャパン/ニュージーランド食品研究所の学術資料】ブラックカラントの抗酸化活性・ベリー類との比較データ(日本語訳版)
ブラックカラントエキスに関する情報を調べると、化粧品として「塗るもの」とサプリ・食品として「飲む・食べるもの」の両方で活用されていることがわかります。この2つのアプローチは互いに競合するのではなく、それぞれ異なる経路で肌に作用するため、目的によって使い分けることが効果的です。
外用(化粧品として塗る)場合のメインターゲットは、肌表面〜表皮層のケアです。具体的には次のような用途が期待できます。
- メラニン生成の抑制によるくすみ改善・美白予防(チロシナーゼ阻害)
- アントシアニンの抗酸化作用によるフリーラジカルから肌を守るバリア的役割
- 種子オイル配合の場合は紫外線ダメージ後の炎症収束を促す作用
一方、内用(食品・サプリとして摂取する)場合の特長は、血流経由で真皮層に届く点です。
- 末梢血流の改善による酸素・栄養素の肌への供給効率アップ
- フィトエストロゲン作用によるコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸の産生促進
- 抗酸化成分が体内全体に届くことによる体の内側からのエイジングケア
日本カシス協会によれば、摂取後15分で血中に現れ始め、2時間で最大濃度に達するという吸収の速さも内用の魅力です。また1日当たりのアントシアニン推奨摂取量は50mg(エイジングケア目的は100mg程度)とされており、ニュージーランド産カシスパウダーなら2〜4gに相当します。
両方を組み合わせることが理想的ではありますが、まず試すならどちらか一方からでも十分に手応えを感じられます。特に「肌のくすみが気になる」「日焼け後の回復が遅くなった」という方には、外用の美容液やクリームにブラックカラントエキス(クロフサスグリ果実エキス・クロフサスグリ種子油)が配合されているものを探して取り入れてみることをおすすめします。成分表示を確認する習慣が条件です。
たとえば、ナリス化粧品「セルグレース」のようにブラックカラントオイルを配合したエイジングケアラインや、内用としてはニュージーランド産のカシスパウダー・エキス末を使ったサプリメントが複数販売されています。選ぶ際は「ニュージーランド産」「アントシアニン含有量が明記されているか」を確認するとより安心です。
外用と内用、目的に合わせて組み合わせるのがベストです。この2つのアプローチを理解した上でスキンケアに取り入れることで、ブラックカラントエキスの力を最大限に引き出すことができます。
【日本カシス協会】カシスアントシアニンの吸収の速さと8時間持続する血中濃度データ・摂取タイミングの解説