

寝る前に緑茶20杯飲んでもテアニン200mgには届きません
テアニンは緑茶に含まれる特殊なアミノ酸で、他の多くの成分とは異なる重要な特徴を持っています。それは血液脳関門を通過して、脳に直接作用できる能力です。
血液脳関門とは、脳を有害物質から守るバリアーのような働きをする仕組みです。
多くの成分はこのバリアーを通過できません。
例えば、リラックス効果があるとされるGABAは血液脳関門を通過できないため、脳に直接作用することはできません。
つまり脳への直接作用が基本です。
テアニンは小腸から吸収された後、アミノ酸トランスポーターという輸送システムに乗って体内を移動します。そして血液脳関門のL-システムという特別な通路を通って、脳内に入り込むことができるのです。脳内に入ったテアニンは、グルタミントランスポーターに作用し、興奮系の神経伝達物質であるグルタミン酸の供給を抑制します。
この作用により、脳の過剰な興奮が抑えられるわけです。同時に、GABAやドーパミンといった抑制系・快楽系の神経伝達物質が増加し、ノルアドレナリンなどの興奮系物質が減少することが研究で確認されています。結果として、脳内では興奮よりもリラックスが優位になります。
リラックスしながら集中できるという不思議な状態が実現するのは、この独特のメカニズムによるものです。
太陽化学の学術コラム「ストレスから脳を守るテアニンの役割」では、テアニンの脳内動態と神経保護作用について詳しく解説されています
テアニンを摂取すると、約40分から50分後に脳波に明確な変化が現れることが複数の研究で確認されています。この変化の中心となるのが、α波(アルファ波)の増加です。
α波は、リラックスしているときや、眠りに入る直前の脳が落ち着いた状態のときに出現する脳波です。具体的には8〜13ヘルツの周波数帯の脳波で、瞑想やヨガをしているときにも増加します。研究では、テアニン入りの水を摂取した被験者と、普通の水を摂取した被験者を比較しました。
効果が出るまで40分程度です。
普通の水では脳波に変化が見られなかったのに対し、テアニン入りの水を摂取したグループでは、摂取後40分以降に後頭部や頭頂部でα波の出現が確認されました。しかも、この効果は少なくとも2時間は持続することが分かっています。つまり、テアニンを飲むベストなタイミングは、効果を得たい時間の40分から1時間前ということになります。
睡眠の質を向上させたい場合は、就寝の30分から1時間前にテアニンを摂取するのがおすすめです。仕事や勉強で集中したい場合も、その40分前に摂取することで、リラックスしながら集中できる状態を作り出せます。
ストレス対策でテアニンを活用する場合、タイミングを意識するだけで効果が大きく変わってきます。朝のストレスフルな通勤前や、大事なプレゼンの前に摂取すれば、心を落ち着けて臨めるでしょう。
緑茶にはテアニンだけでなく、カフェインも含まれています。この2つの成分の組み合わせが、実は非常に興味深い相乗効果を生み出すことが研究で明らかになっています。
カフェインは中枢神経を刺激して覚醒作用をもたらす成分です。眠気を覚まし、集中力を高める効果がある一方で、過剰摂取すると手の震えや不安感、焦燥感といった副作用が現れることがあります。コーヒーを飲み過ぎて落ち着かなくなった経験がある方も多いでしょう。
両方摂ると相乗効果が出ます。
ところが、テアニンとカフェインを同時に摂取すると、カフェインの「興奮・焦燥感」だけが打ち消され、「覚醒・集中力」の効果だけが残るという驚くべき現象が起こります。海外の研究によれば、カフェイン200mgとテアニン200mgを組み合わせて摂取すると、落ち着きのなさや震えを引き起こすことなく、長期的な注意力と集中力を維持できることが確認されています。
この状態を、バイオハッカーたちは「リラックスした覚醒状態」と呼んでいます。スッキリと覚醒しながらも、ゆったりとリラックスしているという理想的な状態です。玉露や抹茶のようにテアニンとカフェインの両方を多く含むお茶を飲むと、この効果を実感しやすくなります。
仕事や勉強のパフォーマンスを高めたい場合、コーヒーにテアニンサプリメントを加えるという方法も注目されています。コーヒーのカフェインによる覚醒効果を得ながら、テアニンでカフェインの副作用を抑えるわけです。
テアニンの効果は脳だけにとどまりません。実は美容面でも注目すべき働きがあることが分かっています。特に肌の健康に重要な役割を果たすのが、コラーゲンとヒアルロン酸の合成促進効果です。
コラーゲンは皮膚成分の約7割を占める重要なタンパク質で、肌のハリや弾力を保つために欠かせません。加齢とともにコラーゲンの生成量は減少し、シワやたるみの原因となります。一方、ヒアルロン酸は肌の水分を保持する働きがあり、潤いのある肌を維持するために必要な成分です。
コラーゲン合成が促進されます。
テアニンには、これらコラーゲンとヒアルロン酸の合成を促進する働きがあることが研究で明らかになっています。緑茶などを通じてテアニンを摂取すると、体内でこれらの美肌成分の生成が活発になるのです。しかも、テアニンは水に溶けやすいアミノ酸で構成されているため、化粧水や美容液、ファンデーションなどの化粧品としても配合されています。
外側からのケアと内側からのケアの両方で、テアニンを活用できるわけです。
さらに、テアニンには角層細胞の主成分であるケラチンというタンパク質の保水力をパワーアップさせる働きもあります。肌表面のバリア機能を高め、乾燥から守る効果も期待できます。美容を意識する方にとって、テアニンは見逃せない成分と言えるでしょう。
美肌を目指す場合、1日200mgのテアニンを継続的に摂取することで、肌質の改善が期待できます。ただし、後述するように緑茶だけで200mgを摂取するのは現実的ではないため、サプリメントの活用も検討する価値があります。
テアニンの美肌効果について、コラーゲンやヒアルロン酸合成促進のメカニズムが詳しく紹介されています
テアニンの効果を実感するために推奨される摂取量は、1日あたり200mgです。多くの研究でもこの量が目安として使われており、リラックス効果や睡眠の質向上といった効能が確認されています。
では、この200mgをお茶から摂取するには、どれくらいの量を飲む必要があるのでしょうか。湯のみ1杯(約80ml)あたり、煎茶には約10mg、玉露には約34mg、抹茶には約36mgのテアニンが含まれています。つまり、煎茶で200mgを摂取しようとすると、約20杯も飲まなければなりません。
20杯は現実的ではありません。
玉露でも約6杯、抹茶でも約5〜6杯必要です。さらに問題なのは、これだけの量のお茶を飲むと、カフェインやシュウ酸の過剰摂取にもつながってしまうことです。カフェインの摂り過ぎは不眠や不安感を引き起こし、シュウ酸は尿路結石のリスクを高める可能性があります。
健康効果を得るためにお茶を飲んでいるのに、逆に健康を損ねてしまっては本末転倒です。
そこで注目されているのが、テアニンのサプリメントです。サプリメントなら、1粒または1包で200mgのテアニンを手軽に摂取できます。
カフェインやシュウ酸の心配もありません。
特に睡眠の質を向上させたい場合、就寝前にカフェインを摂取するのは避けたいところです。
サプリメントで摂取するのが効率的です。
サプリメントを選ぶ際のポイントは、L-テアニンの含有量が明記されていることと、製造元が信頼できることです。機能性表示食品として届け出がされている商品なら、効果や安全性のデータが一定の基準を満たしていると考えられます。また、GABAなど他のリラックス成分が配合されている商品もあり、相乗効果を狙えます。
日常的にお茶を楽しみながら、足りない分をサプリメントで補うというのが、現実的で続けやすい方法と言えるでしょう。特に玉露や抹茶を選べば、お茶からもある程度のテアニンを摂取できます。
テアニンは単なるリラックス成分ではなく、脳の認知機能そのものを改善する可能性が注目されています。特に記憶力や学習能力、集中力といった脳の高次機能への影響が、近年の研究で明らかになってきました。
静岡県立大学などの研究チームが行った臨床試験では、軽度認知障害(MCI)を持つ高齢者にテアニンを含む緑茶粉末を1年間継続摂取してもらいました。緑茶粉末には1日あたり約47.5mgのテアニンが含まれていました。その結果、テアニンを摂取したグループは、摂取しなかったグループと比較して、認知機能の評価スコアが有意に改善したことが確認されました。
認知機能の改善が確認されています。
この効果の背景には、テアニンによる神経細胞保護作用があります。テアニンは脳内でストレスによる神経細胞の損傷を抑制し、脳の萎縮を防ぐ働きがあることが動物実験で示されています。特にストレスに弱い体質のマウスにテアニンを与えたところ、脳の海馬という記憶に重要な部位での神経細胞死が抑えられました。
海馬はワーキングメモリー(作業記憶)や長期記憶の形成に関わる重要な脳領域です。テアニンはこの海馬においてNpas4やLcn2といった遺伝子の発現を変化させ、ストレス軽減と脳の萎縮抑制をもたらしていることが示唆されています。物忘れが増えたと感じている方にとって、日常的にテアニンを摂取することは、認知機能の維持に役立つ可能性があります。
さらに興味深いのは、睡眠不足による記憶障害に対する保護効果です。睡眠不足のマウスを使った実験では、テアニンを投与することで学習・記憶能力の改善が確認されました。テアニンは睡眠不足による海馬ニューロンとミトコンドリアの損傷を保護する効果を示したのです。
認知症予防の観点からも、テアニンの継続的な摂取は有望な選択肢と言えます。毎日のお茶習慣やサプリメントで、脳の健康を長期的にサポートしていくことが可能です。
認知症予防習慣のコラムでは、テアニンと茶カテキンによる認知機能低下対策について詳しく解説されています