

紫外線をわざと浴びると肌がきれいになることがある。
スピルリナプラテンシスエキスは、約30億年前に地球上に誕生したとされる藍藻(シアノバクテリア)の一種「スピルリナ(Spirulina platensis)」から抽出された成分です。藻類の中でも非常に古い生命体であり、過酷な環境でも生き抜いてきたその強靭な生命力が、豊富な栄養素の源となっています。
名前だけ聞くと難しそうに感じるかもしれません。しかし実態は、スーパーフードとして食品やサプリメント業界で長年使われてきた藻類の美容版エキスです。
化粧品原料としてのスピルリナプラテンシスエキスには、以下のような成分が含まれています。
- フィコシアニン:スピルリナ特有の青色色素タンパク質。強力な抗酸化・抗炎症作用を持ち、美容機能においてとりわけ注目されています。
- β-カロテン(ベータカロテン):体内でビタミンAに変換される脂溶性の抗酸化物質。肌の老化を抑制します。
- ビタミンE・ビタミンA:酸化ストレスから細胞を保護し、肌のターンオーバーを促進する脂溶性ビタミン。
- アミノ酸・植物性タンパク質:角質層の水分保持を助け、肌の弾力とハリをサポートします。
- ミネラル類:鉄分・マグネシウムなど、肌の代謝に欠かせない微量栄養素群。
これらの成分が総合的に働くことが基本です。単独の成分よりも、複合的な作用によって肌への恩恵が大きくなる点が、スピルリナプラテンシスエキスの特徴といえます。
スピルリナ自体は、DIC株式会社が1977年に世界で初めて大量培養に成功し、現在では世界で最も多く生産される藻類となっています。化粧品・サプリメント・食品着色料など幅広い分野で使われており、その安全性と有用性は半世紀以上の研究実績に裏付けられています。
参考:DIC株式会社が約50年にわたって研究を重ねてきたスピルリナの栄養素と機能性に関する詳細情報が確認できます。
DIC株式会社|スピルリナ由来フィコシアニンの機能性表示食品「フィコナ」開発特集
美容に関心の高い方がもっとも気にするのは、やはり「肌の乾燥・うるおい」の問題ではないでしょうか。スピルリナプラテンシスエキスは、この点において科学的に実証された数少ない成分の一つです。
核心にあるのはフィコシアニンという成分です。
DIC株式会社が行ったヒト臨床試験では、肌の乾燥を感じている20歳〜60歳の女性96名を対象に、フィコシアニンを含む食品とプラセボ(フィコシアニンを含まない食品)を8週間摂取してもらい、「肌の水分蒸散量」という指標でバリア機能を比較しました。結果は明確でした。フィコシアニンを摂取したグループでは、8週間後に肌の水分蒸散量が有意に減少したのです。水分が逃げにくくなるということは、肌がうるおいを内側に留めておける状態に近づいていることを意味します。
これは乾燥対策の根本です。
従来のスキンケアは「外から水分を補う」アプローチが中心でした。しかしスピルリナプラテンシスエキスのフィコシアニン成分は「肌のバリア機能そのものを強化する」という内側からのアプローチを実現します。特に40代を境に急激に衰えるバリア機能に対して、食品・化粧品の両面から補えることは大きな利点です。
また塗布(外用)においても、スピルリナプラテンシスエキスは角質層の水分保持に役立つアミノ酸を含んでいます。化粧品に配合された場合、肌表層でしっとり感を与え、水分の蒸散を物理的に抑える整肌成分として機能します。
| 働きかける層 | 主な成分 | アプローチ方法 |
|---|---|---|
| 肌表面 | アミノ酸・植物性タンパク質 | 外用(化粧品) |
| バリア機能 | フィコシアニン | 内用(サプリ・食品)・外用 |
| 細胞レベル | β-カロテン・ビタミンE | 内用・外用 |
DIC社はこのフィコシアニンを2020年に「機能性表示食品」として消費者庁から申請受理を得ており、これはスピルリナ由来成分としては国内初の快挙です。
エイジングケアに関心のある方にとって、「酸化ストレス」という言葉は耳慣れたものかもしれません。紫外線・大気汚染・ストレスなど日常的な外部刺激によって体内に発生する活性酸素が、肌細胞を傷つけてシワ・たるみ・くすみの原因となります。これが酸化ストレスです。
スピルリナプラテンシスエキスは抗酸化の宝庫です。
特にフィコシアニンは、フリーラジカルを直接無力化する抗酸化物質として、β-カロテンやビタミンEと同時に機能します。複数の抗酸化成分が一つの原料に凝縮されている点が強みで、「相乗効果」によって単体成分よりも高い酸化防御能力を発揮すると考えられています。
2019年の研究では、スピルリナプラテンシスエキスがコラーゲンを生成する皮膚線維芽細胞の成長因子を高める可能性が示されています。コラーゲンは肌のハリや弾力を支えるタンパク質で、20代をピークに年間約1%の割合で減少するとされています。コラーゲン生成が促進されれば、肌の引き締め・小じわの改善につながることが期待できます。これは使えそうです。
さらに抗炎症作用も無視できません。ニキビ跡の赤みや外部刺激による炎症を鎮静する作用があり、敏感肌やニキビができやすい肌にも適しています。成分の刺激性が低く、低刺激性であるため、すべての肌タイプに使いやすいとされています。
- ✨ 抗酸化成分一覧と働き
- フィコシアニン:活性酸素の除去、炎症の抑制
- β-カロテン:視力低下抑制、免疫機能のサポート、肌の酸化防止
- ビタミンE:細胞膜の酸化防止、肌のしなやかさを維持
- ビタミンA(β-カロテン由来):皮膚の粘膜を健全に保ち、ターンオーバーを促進
これらを合わせた複合作用が原則です。スピルリナプラテンシスエキスを含む化粧品を選ぶ際は、フィコシアニンや抗酸化成分の含有が確認できる製品を選ぶと、より効果を実感しやすくなります。
参考:フィコシアニンの抗酸化・抗炎症作用と、肌バリア機能への影響を詳しく解説しています。
「紫外線は百害あって一利なし」と思っている方も多いはずです。しかし資生堂の研究は、その常識を根底からくつがえしました。
スピルリナプラテンシスエキスには、紫外線を美肌効果のある光(可視光)へと変換する能力があります。
2022年5月に発売された資生堂「SHISEIDOアーバン トリプル ビューティ サンケア エマルジョン」(参考小売価格4,800円税別)には、スピルリナプラテンシスエキスと蛍光酸化亜鉛を組み合わせた「サンデュアルケア技術」が搭載されています。これは農業分野の光活用研究と植物の光合成プロセスにヒントを得た発想で、「太陽の光を変換してスキンケアする」という世界初の成分アプローチです。
仕組みはこうです。スピルリナプラテンシスエキスが含む光変換物質が、通常であれば肌にダメージをもたらすUVを「美肌光」と呼ばれる可視光に変換します。この変換された光が肌のダメージ因子にアプローチし、ハリ・キメ・うるおいという3つの美肌効果をもたらすという仕組みです。
実際の試験では、スピルリナエキスの2%溶液を使用した細胞に美肌光を照射すると、UV照射によって低下した細胞活性が回復するどころか、元の細胞よりも活性が上昇する結果も確認されています。意外ですね。
この技術は単なる日焼け止めの域を超えた「デイリースキンケアとUVケアの一体化」という新概念を実現しています。毎日のUVケアを面倒だと感じる方にとって、特にメリットが大きい革新です。
同社は後継製品「アネッサ デイセラム」(税込3,850円)にもこの技術を展開しており、365日の日常使いに適したオイルフリー処方で提供しています。
参考:資生堂によるサンデュアルケア技術の開発背景と、スピルリナプラテンシスエキスの光変換メカニズムが詳しく説明されています。
資生堂公式ニュース|紫外線を肌に良い作用をもたらす光へと変換する革新技術を開発
スキンケアに熱心な方は化粧品に配合されたスピルリナプラテンシスエキスを外から与えることに注力しがちです。しかし実際には、内側からのアプローチと組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
「内側と外側」の二方向から同時にアプローチするのが理想です。
外用(化粧品)においては、スピルリナプラテンシスエキスが含まれる洗顔料・化粧水・美容液・日焼け止めなどが市販されています。藍藻由来の整肌成分として角質層を整え、肌表面の水分蒸散を抑える役割を果たします。毎日のスキンケアに手軽に取り入れられます。
内用(サプリメント・食品)においては、DICが開発した機能性表示食品「フィコナ スキン モイストリフティング タブレット」が代表例です。ヒト臨床試験(96名・8週間)で肌のバリア機能向上が確認された唯一の国内認証製品です。肌の乾燥が特に気になる方や、40代以降でバリア機能の低下を感じ始めた方に適しています。
| アプローチ | 製品カテゴリ | 主な効果 | 実感の目安 |
|---|---|---|---|
| 外用 | 化粧水・美容液・日焼け止め | 整肌・保湿・UV変換 | 使用直後〜数週間 |
| 内用 | 機能性表示食品・サプリメント | バリア機能強化・保湿力向上 | 4〜8週間 |
ただし、いくら優れた成分でも使い方を誤ると効果が出にくくなります。以下の点は最低限押さえておきたいポイントです。
- 化粧品は使用量を守る:日焼け止めの場合、使用量が少ないと紫外線防御効果が大幅に低下します。資生堂製品の推奨通り「顔全体になじむ量」を守りましょう。
- サプリは継続が条件:フィコシアニンの肌バリア改善は8週間以上の摂取で確認されています。数日で効果を判断するのは早計です。
- 保管環境に注意:フィコシアニンは熱・アルコールに弱い性質があります。化粧品・サプリとも高温多湿を避けた保管が必要です。
独自視点として注目したいのは、スピルリナプラテンシスエキスの「抗真菌作用」です。一部の研究では、カンジダ皮膚感染を予防する可能性が示されており、肌の常在菌バランスを整えるプレバイオティクス的な役割を果たすかもしれないと考えられています。腸活・腸内環境と肌状態の相関(腸肌軸)が注目されている昨今、口から摂取するスピルリナ由来成分が肌フローラにも好影響を与える可能性は、今後の研究で明らかになると期待されています。
肌の悩みは一種類ではありません。保湿・エイジング・UV・炎症など複数の課題に同時にアプローチできる点が、スピルリナプラテンシスエキスの真価です。スキンケアの選択肢を広げる一歩として、まずは成分表示を確認する習慣からはじめてみると良いでしょう。
参考:健康産業新聞によるフィコシアニンの美容機能・市場動向の詳細レポートです。
健康産業新聞|スピルリナ フィコシアニンの肌バリア機能で再脚光(2024年9月)