

スキンケアをどれだけ重ねても「くすみが取れない」「ハリが戻らない」と感じているなら、外側からのケアだけでは届かない"細胞レベルの問題"が隠れているかもしれません。
化粧水や美容液を毎日丁寧に使っているのに、鏡を見るたびに「なんかくすんでいる」「ハリが出ない」と感じたことはないでしょうか。実は、肌の外側に塗るケアだけでは対処できない"エネルギー不足"が肌の内側で起きている可能性があります。
そのカギを握るのが「ミトコンドリア」と「オレアノール酸」の組み合わせです。
つまり細胞レベルの美容がポイントです。
ミトコンドリアとは、私たちの体を構成するすべての細胞の中に存在する小さな器官で、「細胞のエネルギー工場」と呼ばれています。1つの細胞の中に数百〜数千個も存在し、生命活動に必要なエネルギーの約90%以上を生産しています。このエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる物質の形で供給され、肌のターンオーバーや細胞の修復・再生に欠かせない燃料になっています。
一方、「オレアノール酸(Oleanolic Acid)」とは、オリーブの葉やリンゴの皮、センブリなど多くの植物に含まれるトリテルペン(五環性トリテルペン)の一種です。古くから化粧品の抗シワ成分として配合されてきた歴史がありますが、近年はミトコンドリアを活性化する働きが注目を集めています。
このふたつの組み合わせを知ることが、肌の内側から若々しさを引き出す新しいアプローチにつながります。知らないままでいると、いくら高価なスキンケアを重ねても「効果が出にくい」という状況が続きかねません。
オレアノール酸がどうやってミトコンドリアを活性化するのか、その仕組みには「TGR5(ティージーアールファイブ)」という受容体が深く関わっています。
TGR5とは、細胞表面に存在する受容体(タンパク質)の一種で、元々は胆汁酸によって活性化されることが知られていました。慶應義塾大学の渡辺光博教授の研究によれば、オレアノール酸がこのTGR5に強く作用し、スイッチをONにすることでミトコンドリアの活性が高まることが発見されました。
TGR5がオンになると、細胞の中でミトコンドリアの生合成が促進されます。結果として、ミトコンドリアの数が増え、一つひとつの活性も上がり、ATPをより多く産生できる状態になります。
エネルギー産生が活発になるということです。
これを身近な例でたとえると、工場の設備(ミトコンドリア)が増えて稼働率も上がるようなイメージです。ラインが増えれば生産量(ATP)も増える、という構造と同じです。
このメカニズムはダイエットだけでなく、美容にも直結します。ミトコンドリアが活性化されることで、肌細胞のエネルギー供給がスムーズになり、ターンオーバーの維持やコラーゲン生成のサポートにもつながると考えられています。
参考:慶應義塾大学 渡辺光博教授によるオレアビータとTGR5・ミトコンドリアの関係解説
ミトコンドリアダイエットに必要なオレアビータ|渡辺光博博士インタビュー
ミトコンドリアが活性化された肌の細胞では、具体的にどのような変化が起きるのでしょうか?
まず注目したいのが「ターンオーバーの正常化」です。肌細胞が正常にエネルギーを受け取れるようになると、古い角質が適切なタイミングで剥がれ落ち、新しい細胞が生まれ変わるサイクルが整います。ターンオーバーが乱れていると、古い角質が肌表面に積み重なり、くすみや毛穴の詰まりの原因になります。
これが整う、ということです。
次に「コラーゲンとエラスチンの維持」があります。真皮の線維芽細胞がしっかりエネルギーを得られると、コラーゲンやエラスチンの産生・分解バランスを保ちやすくなります。真皮の約80〜85%を占めるⅠ型コラーゲンが充実していることで、肌のハリと弾力が維持されます。
コラーゲンが条件です。
さらに、ミトコンドリアが活性化されると「活性酸素の制御」もスムーズになります。健全なミトコンドリアはエネルギーを効率よく産生し、過剰な活性酸素を出しにくい状態を保ちます。一方で機能が落ちたミトコンドリアは活性酸素を大量に漏らし、細胞の酸化・炎症を招きます。
つまり活性酸素のコントロールが美肌の土台です。
また、資生堂の2025年1月の研究発表によると、生きたヒトの皮膚のシミ部位では非シミ部位と比べて表皮細胞内のミトコンドリア代謝が低下していることが確認されています。ミトコンドリアの状態が、シミの有無とも関連している可能性があることは意外ですね。
これらの影響を踏まえると、オレアノール酸によるミトコンドリア活性化は、くすみ・シワ・たるみ・シミといった総合的な肌悩みにアプローチできる可能性があります。
オレアノール酸は美容成分として、ミトコンドリア活性の観点だけでなく、皮膚への直接的な抗シワ作用も学術的に確認されています。
1996年にポーラ化成工業が報告したデータによれば、小ジワを有する26名の女性被検者を対象に、0.05%オレアノール酸配合乳液と未配合乳液をそれぞれ6週間使用してもらった結果、オレアノール酸配合グループでは「改善」または「やや改善」が合計14名(87.5%)に認められたのに対し、未配合グループではわずか1名(10%)にとどまりました。
数字で見ると差は歴然です。
| 評価 | オレアノール酸配合(16名) | 未配合(10名) |
|:---|:---:|:---:|
| 改善 | 6名 | 0名 |
| やや改善 | 8名 | 1名 |
| 変化なし | 2名 | 9名 |
このデータは、オレアノール酸が光老化(紫外線による肌老化)のサインであるシワの改善に、外用でも一定の効果を示す可能性を示しています。
また、動物試験(ヘアレスマウス)では、UVBを照射してシワを形成させたあと、0.2%オレアノール酸溶液を9週間塗布した群では10匹中8匹(80%)にシワの改善が認められました。
対照群では改善ゼロという結果です。
さらにオレアノール酸は「5α-リダクターゼ(皮脂の過剰分泌に関わる酵素)を阻害する」働きも確認されており、毛穴の開きや皮脂テカリが気になる方にとっても注目の成分です。この点からもスキンケア製品への配合が広がっています。
参考:化粧品成分オンライン「オレアノール酸の基本情報・配合目的・安全性」
化粧品成分オンライン|オレアノール酸の基本情報・配合目的・安全性(2024年9月更新)
オレアノール酸はウルソール酸・ベツリン酸とあわせて「三大機能性トリテルペン」と呼ばれています。
これは意外ですね。
三つの成分はいずれも植物由来のトリテルペンで、以下のような多彩な作用が確認されています。
| 成分名 | 主な作用 |
|---|---|
| オレアノール酸 | 抗シワ、抗炎症、抗酸化、ミトコンドリア活性化、血糖抑制 |
| ウルソール酸 | 抗炎症、抗腫瘍、筋肉増強(筋萎縮防止) |
| ベツリン酸 | 抗がん、抗ウイルス、抗炎症 |
オレアノール酸は三者の中でも特に「美容・代謝」の両面に優れた働きを持ち、化粧品成分としての配合実績も長く、15年以上の使用実績があります。皮膚刺激性・感作性ともにほとんどなしと評価されており、安全性も高い成分です。
また、オレアノール酸はオリーブの葉のほかに梅干しにも含まれています。梅干しのオレアノール酸が血糖値の上昇を緩やかにする働きを持つとする研究もあります。日本人が昔から親しんできた食材の中に、ミトコンドリアを助ける成分が潜んでいたことになります。
生活の中でオレアノール酸を摂取したい場合、オリーブオイルより「オリーブの葉(葉エキス)」に多く含まれている点も知っておくと役に立ちます。
「スキンケアを毎日続けているのに、なぜか老けて見える」という悩みの根本には、ミトコンドリアの機能低下が絡んでいる場合があります。
ミトコンドリアは20代後半から徐々に数が減少し、機能も低下していくことが知られています。さらに紫外線・ストレス・睡眠不足・過食・運動不足といった生活習慣によって、劣化のスピードが加速します。
この劣化は止まりにくいです。
機能が落ちたミトコンドリアは、エネルギー産生効率が悪くなるとともに、過剰な活性酸素(ROS)を漏らすようになります。この活性酸素がさらにミトコンドリアを傷つけ、また活性酸素が増える……という「酸化の悪循環」が細胞内で起こります。
この悪循環が肌に与える影響を整理すると、次のようになります。
大正製薬の研究(2024年12月)によれば、ミトコンドリアに関わる酵素「マイトリガーゼ(MITOL)」が加齢によって減少すると、酸化ストレスに対する肌の抵抗力が落ちて老化が加速する可能性があることも報告されています。こうした知見が重なるにつれ、「ミトコンドリアケア」は美容業界での注目キーワードになっています。
参考:大正製薬 研究リリース「マイトリガーゼの新知見」
大正製薬|若返りの鍵「マイトリガーゼ」の新知見(2024年12月)
美容と体型は切り離せない関係にあります。
ここが多くの方に知ってほしいポイントです。
オレアノール酸がミトコンドリアを活性化すると、脂肪のエネルギー変換効率が上がるという効果も確認されています。つまり、美肌へのアプローチと脂肪燃焼が同時に期待できるわけです。
2023年3月20日、株式会社ニュートリション・アクトが消費者庁に届け出ていた「オレアビータ(届出番号:H1099)」が、機能性表示食品として正式に受理されました。機能性関与成分はオレアノール酸とオレウロペインの2成分で、届出表示には「身体活動時での脂肪の消費を助けることで、肥満気味の方の体脂肪の低減に役立つ」という内容が含まれています。
この製品はヒト試験においてもミトコンドリアの増殖・活性化と脂肪からのエネルギー産生増大が確認されており、国の審査を通過した機能性表示食品という点で信頼性の高さが際立っています。
ミトコンドリアが活性化すると「基礎代謝が上がる」という流れが生まれます。基礎代謝とは、じっとしているだけでも消費するエネルギー量のことで、これが高まると太りにくい体質に近づけます。
ダイエットにも通じる話ですね。
特にミトコンドリアが豊富に存在する筋肉細胞では、エネルギー消費の大部分が行われています。筋肉のミトコンドリアが元気なほど、余分な脂肪を燃やしやすくなる仕組みです。
参考:機能性表示食品届出情報(消費者庁)
オレアビータ(H1099)の機能性表示食品届出情報詳細
オレアノール酸の美容効果・ミトコンドリア活性化の恩恵を受けるためには、いくつかのアプローチがあります。
どれか1つから試すのが続けやすいです。
① スキンケアで外から取り入れる
オレアノール酸は化粧品成分として、スキンケア製品や化粧下地、日焼け止め、マスクなどに配合されています。配合表示名は「オレアノール酸(INCI名:Oleanolic Acid)」ですので、成分表示を確認してみましょう。皮脂コントロール・毛穴ケアを目的とした製品に比較的多く配合されている傾向があります。外側から直接肌に届けたい場合は成分チェックが条件です。
② サプリメントで内側から摂取する
オリーブ葉エキス配合のサプリメントにはオレアノール酸が含まれるものがあります。前述の「オレアビータ」は消費者庁に届け出た機能性表示食品(届出番号H1099)で、1日あたりオレアノール酸2.5mg・オレウロペイン2.5mgを摂取できます。継続的に内側から補いたい場合に向いています。
③ 食事から自然に摂る
オレアノール酸はオリーブの葉のほか、梅干し・リンゴの皮・センブリなどに含まれています。ただし、日常の食事だけで顕著な量を摂取するのは難しいため、サプリメントとの組み合わせが現実的です。
④ ミトコンドリアを元気にする生活習慣と組み合わせる
オレアノール酸の効果を最大化するには、ミトコンドリアを活性化する生活習慣との相乗効果が重要です。具体的には「適度な有酸素運動(最大心拍数の60%程度でのジョギングやウォーキング)」「十分な睡眠(成長ホルモンが細胞修復を助ける)」「抗酸化食品(ブルーベリー・ブロッコリー・エキストラバージンオリーブオイル)の積極的な摂取」が基本です。
オレアノール酸単体でも多くの働きが期待できますが、他の成分と組み合わせることで相乗効果が生まれる場合があります。
これは使えそうです。
● ビタミンB群(特にB2・B6)
ミトコンドリアの中でATPを産生するには「補酵素」が必要です。
その代表格がビタミンB群です。
ビタミンB2はミトコンドリアのエネルギー産生機能を増強する働きがあり、神戸大学の研究(2021年)では「老化ストレスを受けた細胞にビタミンB2を添加するとミトコンドリアのエネルギー産生機能が増強された」という結果が報告されています。オレアノール酸でミトコンドリアを活性化しつつ、ビタミンB群でその稼働を助ける、という考え方です。
● 還元型CoQ10(コエンザイムQ10)
細胞がエンジンだとすれば、CoQ10はエンジンオイルに相当します。ミトコンドリアがATPを作る過程に不可欠な補酵素で、40代以降は体内での合成量が低下するとされています。オレアノール酸でミトコンドリアの数を増やし、CoQ10でその質を維持するアプローチは理にかなっています。
● L-カルニチン
脂肪酸をミトコンドリアの内部に運び込む「輸送役」を担う成分です。L-カルニチンがあることで、脂肪がミトコンドリアに届き、燃料として燃やせるようになります。オレアノール酸でミトコンドリアを活性化し、L-カルニチンで脂肪の供給をスムーズにする組み合わせは、体型管理と肌の代謝向上の両立を目指す方に注目されています。
● レチノール(ビタミンA誘導体)
外側からのスキンケア成分の中では、レチノールがターンオーバー促進・コラーゲン生成サポートに優れた実績を持ちます。内側からのオレアノール酸・ミトコンドリアケアと、外側からのレチノールを組み合わせることで、肌の「内・外ダブルアプローチ」が実現できます。
参考:ミトコンドリアを活性化する栄養素についての解説
ダイヤモンドオンライン|ミトコンドリアに適切な栄養を与える食べ物11選
ここからは、あまり広く知られていない視点をひとつ紹介します。
意外ですね。
ミトコンドリアは「睡眠中に最も積極的に修復・再生される」という点です。特に深い眠り(ノンレム睡眠)の時間帯に、傷ついたミトコンドリアを分解して新しいものに置き換える「ミトファジー(マイトファジー)」と呼ばれるメカニズムが活発に働きます。
つまり、どれだけ良質なオレアノール酸を摂取しても、慢性的な睡眠不足の状態では、ミトコンドリアの再生が追いつかない可能性があります。
睡眠不足は肌の大敵です。
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、細胞の修復・再生を促進する働きもあわせ持ちます。成長ホルモンの分泌は入眠後の最初の深い睡眠(90分前後)に集中しているため、「寝入りばなの質」が特に重要です。
オレアノール酸の摂取に合わせて「入眠90分前の入浴(38〜40℃のぬるめのお湯で15〜20分)」を習慣化することで、深部体温の低下がスムーズになり、入眠の質が上がりやすくなります。ミトコンドリアの修復タイムを最大化する、という発想です。
外側のスキンケア・内側のサプリメント・生活習慣の三位一体が、本当の意味での「細胞レベルの美容」につながります。
結論はこの三つの組み合わせです。
Q. オレアノール酸は毎日摂取してもよいですか?
化粧品成分としてのオレアノール酸は、ポーラ化成工業のデータで15年以上の使用実績があり、皮膚刺激性・感作性ともにほとんどなしと評価されています。日常的なスキンケア製品への配合量では、安全性に問題がないと考えられます。サプリメントで摂取する場合は、製品の推奨用量を守ることが大前提です。
Q. オレアノール酸はオリーブオイルに入っていますか?
よく誤解されるポイントです。オレアノール酸はオリーブの「葉」に豊富に含まれますが、一般的なオリーブオイル(果実由来)には少量しか含まれていません。意図的にオレアノール酸を摂取したい場合は「オリーブ葉エキス」配合の製品・サプリメントを選ぶのが確実です。
Q. ミトコンドリアを活性化するのに「運動」は必須ですか?
有酸素運動はミトコンドリアを増やす最も効果的な方法の一つですが、オレアノール酸をはじめとするサプリメントで補う方法もあります。運動との組み合わせが最も効果的ですが、運動が難しい状況でも内側からサポートすることには意味があります。
できることから始めるのが基本です。
Q. スキンケア製品に配合されているオレアノール酸はどう選べばよいですか?
化粧品の成分表示では「オレアノール酸」と記載されています。毛穴ケア・皮脂コントロール目的の製品に配合されることが多いですが、近年は抗老化目的の製品にも広がっています。配合目的を確認しながら、自分の肌悩みに合った製品を選ぶと効果的に使えます。
オレアノール酸とミトコンドリアの関係を改めて整理すると、次のような流れになります。
外側からどれだけ高機能な化粧品を使っても、細胞のエネルギー工場が動いていなければ、肌は原料を活かしきれません。オレアノール酸とミトコンドリアへの注目は、美容の考え方を「表面のケア」から「細胞レベルのケア」へとシフトさせる動きの一つです。
スキンケアと内側からのアプローチを組み合わせ、ミトコンドリアが元気に働ける環境を整えることが、長く続く健康的な美肌への近道です。