
太田母斑のレーザー治療は、2020年より保険適用が拡大され、現在では多くの患者が経済的負担を軽減して治療を受けられるようになりました 。保険適用を受けるためには、医師による確実な診断が不可欠であり、皮膚疾患として認められる必要があります 。
参考)太田母斑
太田母斑は主に顔の片側、特に額、目の周り、頬、こめかみ部などに現れる青褐色のあざで、日本人では約1000人に1〜2人の割合で認められています 。診断においては、色調が濃い典型的な太田母斑であれば部位と色調から皮膚科専門医による診断が容易ですが、色素斑の範囲が小さい場合は老人性色素斑やソバカスと間違って診断されることもあります 。
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保険適用の対象となるレーザーは、Qスイッチ付アレキサンドライトレーザー、Qスイッチ付ルビーレーザー、そして2020年から新たに追加されたピコレーザー(エンライトン等)があります 。これらのレーザー機器による治療のみが保険適用となり、その他の美容目的のレーザー治療は自由診療扱いとなります 。
参考)https://nin-iin.com/blog/1836.html
保険適用による太田母斑のレーザー治療費用は、照射面積によって4段階に分かれており、3割負担の場合の実際の支払額は以下の通りです :
参考)太田母斑のレーザー治療はできますか? いくらですか?
これらの費用には初診料・再診料、麻酔代、アフターケアの処方薬代などが別途必要となる場合があります 。特に麻酔クリームの使用により治療前の待機時間が1時間程度必要となるため、時間的なコストも考慮する必要があります 。
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一方、保険適用外の自由診療では、1平方センチメートルあたり11,000円〜33,000円と高額になるため、保険適用での治療は大幅な費用削減効果があります 。ただし、保険適用には同一部位での治療回数が5回までという制限があり、これを超える場合は自由診療に切り替わることも重要なポイントです 。
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太田母斑のレーザー治療は、3〜6ヶ月間隔で複数回の照射が必要な長期治療となります 。一般的な治療回数は3〜5回程度ですが、色素の深さや範囲により個人差が大きく、2〜10回と幅広い治療期間が報告されています 。
参考)https://tsk-onishi-iin.com/topics_ja/%E5%A4%AA%E7%94%B0%E6%AF%8D%E6%96%91-nevus-of-ota-%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82/
治療効果を実感できるまでには時間がかかり、1回のレーザー照射後に薄くなるという効果を感じられるまで1〜2ヶ月を要します 。これは、レーザー照射により細胞外に放出されたメラニン色素をマクロファージという免疫細胞が除去するプロセスに時間がかかるためです 。
太田母斑は「レーザーへの反応が良好」な疾患とされており、5回程度の照射でほとんどの患者が治療を終了できますが、まれに再発する可能性があることも報告されています 。特にまぶたにある太田母斑は治療効果が低いことが知られており、患者がまぶたを強く閉じてしまうことや皮膚の構造的な問題が原因とされています 。
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太田母斑のレーザー治療には、いくつかの合併症リスクが存在し、事前の十分な説明と理解が必要です 。主な合併症として、炎症後色素沈着、色素脱失(白抜け)、水疱形成、内出血、瘢痕形成などが報告されています 。
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特に注目すべきは炎症後色素沈着で、レーザー照射後は必ずこの症状が現れるとされています 。ピコレーザーを使用した場合でも炎症後色素沈着は避けられませんが、従来のQスイッチレーザーと比較して期間が短縮されることが期待されています 。
治療後のダウンタイムは1〜2週間程度で、レーザー照射直後は軽いやけどの状態となり、徐々にびらんや水ぶくれが生じ、5〜10日でかさぶたになります 。この期間中は軟膏の外用とガーゼやフィルムによる保護が必要で、紫外線対策も重要な要素となります 。
治療を受けられない条件として、妊娠中・授乳中、ケロイド体質、光線過敏症、極度の日焼け、強い炎症がある場合、治療部位に金の糸が入っている場合などが挙げられています 。
太田母斑治療の分野では、従来のQスイッチレーザーに加えて、ピコレーザー技術の導入により治療効果の向上が期待されています 。ピコレーザーは「エンライトン」などの機種が2020年から保険適用となり、炎症後色素沈着の期間短縮という大きなメリットを提供しています 。
現在、太田母斑治療に保険適用されているレーザーは、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーの3種類がありますが、このうちルビーレーザーのみに照射回数制限があることが特徴的です 。最新のピコレーザー機種である「Discovery PICO PLUS(ディスカバリーピコプラス)」などの国内承認機も導入されており、治療選択肢の拡大が進んでいます 。
参考)太田母斑 青あざ
治療技術の進歩により、以前は困難とされていた症例でも改善の可能性が広がっていますが、同一箇所への治療は他院での治療歴も含めて原則5回を限度とする安全基準は維持されています 。これは色素脱失や瘢痕化などの望ましくない反応のリスクを最小化するための重要な制限です 。
将来的には、さらなる技術革新により治療効果の向上と副作用の軽減が期待されており、太田母斑に悩む多くの患者にとってより良い治療選択肢が提供される可能性があります。治療を検討する際は、経験豊富な皮膚科専門医との十分な相談を通じて、個々の症状に最適な治療計画を立てることが重要です 。