
日本骨粗鬆症学会骨粗鬆症マネージャーは、超高齢社会において健康寿命延伸に貢献する専門資格です 。2014年から認定試験が開始され、現在では4,483名(2024年4月1日現在)の専門スタッフが全国で活動しています 。
参考)骨粗鬆症マネージャー制度|医療従事者の方へ|日本骨粗鬆症学会
この資格は、一般社団法人日本骨粗鬆症学会によって認定される制度で、看護師、理学療法士、薬剤師などのメディカルスタッフが対象となっています 。認定者の職種内訳では、看護師が最も多く、次いで理学療法士、薬剤師の順となっており、薬剤師は全体の16%にあたる約552名が認定されています 。
参考)骨粗鬆症マネージャー|薬剤師に役立つ薬剤師の資格を解説ー薬剤…
骨粗鬆症マネージャーの主な役割は、「骨粗鬆症リエゾンサービス」(OLS:Osteoporosis Liaison Service)を推進することです 。リエゾンは「連携、つながり、連絡係」を意味し、医師と多職種のメディカルスタッフ、病院とクリニックなどが相互に連携しながら実施する骨粗鬆症の予防・改善・骨折防止の取り組みを指します 。
参考)骨粗鬆症リエゾンサービス|医療従事者の方へ|日本骨粗鬆症学会
特に注目すべきは、脆弱性骨折後の二次骨折予防における効果です。世界各国で実施されているFLS(Fracture Liaison Service)をベースとしたOLSは、骨折後の骨粗鬆症治療率や治療継続率の向上、再骨折率や死亡率の低減に高いエビデンスが示されています 。
認定制度開始から10年が経過し、2022年には診療報酬において「二次性骨折予防継続管理料」が新設されるなど、制度的な後押しも受けています 。これは全国各地で活躍する骨粗鬆症マネージャーの貢献によるものであり、今後もその重要性は増していくと期待されています。
参考)https://www.lifescience.co.jp/ojp/ojp_pdf/2024autumn.pdf
骨粗鬆症マネージャーの認定を受けるためには、厳格な要件を満たした上で試験に合格する必要があります 。受験資格として、まず日本骨粗鬆症学会の会員であることが必要で、会費の完納も義務付けられています 。
参考)【最新版】骨粗鬆症マネージャーについて徹底解説
対象となる国家資格は、保健師、助産師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、臨床工学技士、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、視能訓練士となっており 、これらの専門職が病院・診療所・介護サービス施設などに所属して実際に医療・保健・教育活動に従事している必要があります。
試験準備として重要なのは、過去4年以内に骨粗鬆症マネージャーレクチャーコースを1回以上受講していることと、同期間内に学術集会への参加が1回以上必要なことです 。レクチャーコースは2012年から毎年2回実施されており、骨粗鬆症の総論から診断・治療、OLSの実際の取り組み内容まで、必要な知識がまとめられています 。
認定試験はマークシート形式で、55問(一般問題45問+臨床問題10問)が出題されます 。出題範囲は、骨粗鬆症の病態生理、診断、治療法、予防法、関連する解剖学・生理学、さらにはOLSの概念と実践方法まで幅広く含まれています。
申請時には、施設長もしくは業務管理者の推薦文、または骨粗鬆症治療に関わった臨床経験と抱負を記載した400字程度の自薦文のいずれかを添付する必要があります 。これは単なる知識だけでなく、実際の現場経験や将来への意欲も評価の対象としているためです。
試験は毎年1回実施され、合格者は翌年4月に正式に骨粗鬆症マネージャーとして認定されます 。認定期間は5年間で、更新時には50単位以上の研修単位取得と学術集会への参加が義務付けられています 。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/nintei-jiten/3668
骨粗鬆症マネージャーの実務は多岐にわたり、主として診療におけるコーディネーターとしての役割を担います 。具体的には、初回骨折のリスク評価を行い、新たな骨折予防のための包括的な指導に関わることが中心的な業務となります。
実際の活動内容として、骨粗鬆症マネージャーへのアンケート調査では、新しく始めた活動として社会的啓発活動、生活指導、検査結果説明が上位に挙がっています 。これらの活動は、患者の骨密度測定結果に基づいて、個々の状況に応じた食事療法や運動療法の指導を含んでいます。
参考)骨粗鬆症マネージャーとは?《Column vol.27》 -…
特に注目される活動として、入院時スクリーニングによる骨粗鬆症の早期発見があります。塩谷病院の事例では、2023年に全病棟入院時スクリーニングで544人が骨粗鬆症ハイリスクと判定され、そのうち334人にDEXA検査を実施し、250人が骨粗鬆症の診断に至りました 。整形外科以外の患者56人に新規投薬を開始できたという実績は、通常見落とされがちな骨粗鬆症患者の発見に大きく貢献しています。
参考)全入院患者を対象に骨粗鬆症のハイリスク患者をスクリーニング
多職種連携の実践では、医師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、放射線技師などがチームを組み、それぞれの専門性を活かした包括的なケアを提供します 。薬剤師は服薬指導とアドヒアランス向上、管理栄養士は栄養評価・指導、理学療法士は運動療法と転倒リスク評価を担当するなど、役割分担が明確にされています。
参考)骨粗鬆症マネージャーについて - ロクト整形外科クリニック
地域における啓発活動も重要な役割の一つです。骨粗鬆症マネージャー連携会という有志団体が全国各地で立ち上がり 、地域住民への講演会や健康教室を通じて骨粗鬆症予防の重要性を伝えています。これらの活動は、骨折による要介護状態の予防という社会的意義を持っています。
品質管理の観点では、治療継続率の向上が重要な指標となります。骨粗鬆症治療薬は長期間の継続が必要ですが、自覚症状に乏しいため中断率が高いという課題があります。骨粗鬆症マネージャーは、患者教育や定期的なフォローアップを通じて、治療継続率の改善に取り組んでいます。
骨粗鬆症マネージャーの認定期間は5年間で、継続的な専門知識の向上を目的とした更新制度が設けられています 。更新には認定期間内に50単位以上の研修単位取得が必要で、学術集会への参加(1回以上)が必須要件となっています 。
参考)制度規則・書類|骨粗鬆症マネージャー制度|医療従事者の方へ|…
更新時の単位取得方法は多様で、学術集会への参加はもちろん、論文発表(筆頭著者のみ)や学会発表(筆頭発表者のみ)も単位に繰り入れ可能です 。また、活動報告の提出も義務付けられており、5年間の実務経験を通じた成長と貢献度が評価されます。
継続教育の内容は、最新の骨粗鬆症診断・治療ガイドラインの理解、新薬の知識習得、診療技術の向上、多職種連携スキルの向上など幅広い分野をカバーしています。特に、エビデンスに基づいた最新の治療法や、国際的な骨粗鬆症管理の動向についても学習が求められます。
2024年現在、第5期骨粗鬆症マネージャー(2019年認定)の認定更新作業が進められており 、制度の継続性と質の維持が図られています。更新手続きを完了していない第5期認定者や、第6期認定者(2020年認定)で更新について不明な点がある場合は、学会事務局への相談が推奨されています。
参考)http://www.josteo.com/data/medical/liaison/kawara_2024_15.pdf
認定更新制度の意義は、単なる資格維持ではなく、骨粗鬆症医療の質的向上と標準化にあります。5年ごとの更新を通じて、認定者は常に最新の知識と技術を身につけ、患者により良いケアを提供することが期待されています。
また、更新時には新たな活動報告も求められるため、骨粗鬆症マネージャーとしての実践経験と成果を客観的に評価する機会にもなっています。これにより、個人の成長だけでなく、制度全体の改善と発展にも寄与する仕組みとなっています。
美容業界においても骨密度管理への関心が高まっており、骨粗鬆症マネージャーの知識を活用した新しいアプローチが注目されています 。特に女性の美容と健康を総合的にサポートする「骨活プログラム」は、従来の美容サービスを超えた付加価値を提供しています。
参考)女性のための整形外科クリニックが行う、骨粗しょう症予防のため…
東京・日比谷の「女性のための整形外科 かおるこHAPPYクリニック」では、4カ月間の骨活プログラムを実施しており、骨密度測定結果に基づいて個々に合った食事や運動、意識の持ち方を医師がアドバイスしています 。90歳になったときの理想像を描いてもらい、そこに向けた具体的な骨活方法を提案するという独創的なアプローチが特徴です。
美容師やエステティシャン、セラピストなどが骨粗鬆症マネージャーの知識を習得することで、顧客の美容カウンセリング時に骨密度の重要性を伝えることが可能になります。肌の弾力性や姿勢の美しさは骨密度と密接な関係があり、根本的な健康管理から美容をアプローチするという新しい価値観を提供できます。
特に40代以降の女性顧客に対しては、エストロゲンの減少による骨密度低下のリスクを説明し、早期からの予防的なライフスタイル指導を行うことで、長期的な美容と健康の維持をサポートできます。これは単なる美容サービスを超えた、ヘルスケアと美容を融合した新しいサービス形態として期待されています。
また、美容業界従事者自身の健康管理としても重要です。長時間の立ち仕事や不規則な生活リズムは骨密度に影響を与える可能性があり、骨粗鬆症マネージャーの知識を活用した職業性疾患の予防にも役立ちます。
美容クリニックや統合医療施設では、骨粗鬆症マネージャーの資格を持つスタッフが、アンチエイジング治療の一環として骨密度管理を組み込むケースも増えています。これにより、見た目の美しさだけでなく、身体の内側からの健康的な美しさを追求する包括的なケアが実現できています。