

サラサラした乳液なのに、重いクリームより保湿力が高い場合があります。
ナノエマルションとは、油と水をナノメートル単位の極めて微細な粒子として均一に分散させた乳化システムのことです。一般的な粒子径は20〜200ナノメートル(nm)で、これは1メートルを10億分割した長さの世界です。髪の毛1本の直径(約80,000nm)と比べると、その微細さは想像を絶するレベルで、実に400倍以上の差があります。
「エマルジョン」という言葉自体は、通常混ざり合わない水と油が微細な粒子として混ざり合った状態を指します。日常的な例でいえばマヨネーズや牛乳がエマルジョンの仲間です。ナノエマルションはその粒子径が極端に小さい点が特徴です。
通常の乳液では粒子径が1〜10マイクロメートル(1,000〜10,000nm)程度あり、肌に塗っても粒子が大きすぎて角質層の細胞間に入り込みにくい場合があります。それに対してナノエマルションは粒子を200nm以下にまで小さくすることで、角質層のすき間にすっと入り込める構造になっています。
つまり浸透性が根本から違うということです。
外観の面では、通常の乳液が白濁しているのに対し、ナノエマルションは粒子が光の波長(400〜700nm)より小さくなるため光散乱が減り、透明〜半透明に見えることが多いです。この透明感が「化粧水みたいなのに乳液の保湿力がある」という使用感につながっています。
| 比較項目 | 通常の乳液 | ナノエマルション |
|---|---|---|
| 粒子径 | 約1〜10μm(1,000〜10,000nm) | 約20〜200nm |
| 外観 | 乳白色・白濁 | 透明〜半透明 |
| 安定性 | 経時で分離しやすい | 長期安定しやすい |
| 使用感 | 重め・油性感あり | 軽くサラサラ |
| 浸透性 | やや低い | 高い |
ナノエマルションは、自然に生成されるものではなく、強力な物理的エネルギーを加えることで作られます。代表的な製造方法は「高圧ホモジナイゼーション」「超音波乳化法」「マイクロフルイダイザー法」の3つです。
高圧ホモジナイゼーションは、高圧ポンプで液体を高速・高圧で細いノズルに通すことで、油滴を強いせん断力で微細化する方法です。数百MPa(メガパスカル)という極めて高い圧力で処理するため、粒子径を均一にコントロールでき、大量生産にも向いています。トゥヴェールのナノエマルジョンシリーズでも「超高圧乳化」と表記されており、この技術が採用されています。
超音波乳化法は、超音波の振動によって生じる「キャビテーション効果」(液中に生まれる微小な気泡が破裂する現象)を利用して油滴を微細化します。実験室規模の少量試作には適していますが、工業スケールでの均一性の維持が難しいという面もあります。
マイクロフルイダイザー法は、マイクロ流路内で高圧衝突を起こし粒子を均一化する方法です。精密な粒径制御が可能で、医薬品グレードのナノエマルション製造にも使われています。これらの技術に加えて、界面活性剤の種類・濃度の最適化が非常に重要です。
界面活性剤は油と水の界面を安定させる役割を持ち、ナノエマルションでは総処方の3〜5%程度が目安です。高濃度になりすぎると皮膚への刺激リスクが高まるため、処方設計には細心の注意が求められます。
これが条件です。
参考:ナノエマルジョン技術の皮膚吸収型化粧品オイルへの応用について詳しく解説されています。界面活性剤濃度の目安など処方設計の知識が参考になります。
ナノエマルジョン技術を応用した皮膚吸収型化粧品オイルの開発|newji
美容成分の「浸透技術」として、ナノエマルションと並んでよく名前が挙がるのがリポソームです。どちらもナノサイズの構造体ですが、その目的と得意分野は異なります。
意外ですね。
リポソームは、細胞膜と同じ主成分である「リン脂質」が二重膜構造(玉ねぎのような層状構造)を形成したカプセル状のキャリアです。美容成分をこの膜の内部や層間に閉じ込めて保護しながら、肌の角質層と構造が似ているため浸透しやすいという特性を持ちます。特に水溶性成分の保護・持続放出に優れています。
一方、ナノエマルションは油滴をナノサイズで水中に分散させた構造で、脂溶性の美容成分(セラミド・ビタミンE・レチノールなど)を高効率で包み込んで皮膚や細胞膜への透過を促進することが得意です。
| 比較項目 | リポソーム | ナノエマルション |
|---|---|---|
| 構造 | リン脂質の二重膜カプセル | 油滴の分散構造 |
| 得意な成分 | 水溶性成分 | 脂溶性成分 |
| 主な機能 | 成分の保護・放出制御 | 高い浸透性・吸収効率 |
| 使用例 | リポソーム美容液・保湿クリーム | セラミド乳液・日焼け止め |
「成分をより深く届けたい」という目的であればナノエマルション、「成分を長時間かけてゆっくり肌に届けたい・保護したい」という目的であればリポソームが有利です。高機能スキンケアの中にはこの両方の技術を組み合わせているものも存在し、トゥヴェールのプラスナノセラミルクはナノエマルション技術とリポソーム化の両方を採用しています。
ナノエマルションが美容において注目される最大の理由は、肌の最外層である「角質層」へのアプローチ力です。角質層は約10〜20層の角質細胞と、その間を埋める「細胞間脂質」から成り立っています。この細胞間脂質の約40〜50%を占めるのがセラミドです。
セラミドは肌の水分を保持し、外部の刺激物や細菌の侵入を防ぐバリア機能の主役です。しかし、乾燥・加齢・紫外線などのダメージでこのセラミドが減少すると、細胞間にすき間ができ、肌がカサカサ・ゴワゴワになります。
いわゆるインナードライの状態です。
問題は、セラミドという成分は分子がある程度大きく、普通の乳液のままでは角質細胞間のすき間(数十〜数百nmオーダー)に入り込みにくいという点です。しかしナノエマルション技術でセラミドの粒子径を50nm前後にまで微細化すると、角質層の細胞間脂質が持つラメラ構造(水と脂が交互に重なった層状構造)と親和性が高まり、スムーズに浸透できるようになります。
トゥヴェールが2022年に発表した臨床試験では、セラミド乳液「ナノエマルジョン」を使用した軽度のアトピー性皮膚炎患者において、角層細胞結合セラミド量の増加が確認されています。つまり使い続けることで肌自体のセラミド蓄積量が高まる可能性があるということです。
これは使えそうです。
参考:トゥヴェールのナノエマルジョン乳液とアトピー性皮膚炎の臨床試験結果について報告されています。セラミド浸透の有効性を示すデータが確認できます。
トゥヴェール ナノエマルジョンによる角層細胞結合セラミド量増加の確認|PR TIMES
ナノエマルションを配合した化粧品が持つ美容効果は、大きく分けて「保湿効果の向上」「肌バリアの強化」「使用感の改善」の3つです。
まず保湿効果について。ナノエマルションはセラミドやヒアルロン酸などの保湿成分を角質層の深いところまで届けることができるため、「塗ったその場だけうるおいが出る」ではなく「角質層の内側に水分を保持する力が高まる」という根本的なアプローチが可能になります。通常の乳液が表面に膜を張って水分蒸散を防ぐのに対し、ナノエマルションは内側からも保水環境を整えます。
保湿力が根本から違うということです。
次に肌バリアの強化。セラミドを角質層に届けることで、ダメージを受けた細胞間脂質のすき間を補修し、バリア機能の回復につながります。特に4種のヒト型セラミド(セラミドAP、NG、NP、EOP)を配合した製品では、人の肌と同じ構造のセラミドを直接補えるため、バリア回復効率が高いとされています。
使用感の面では、粒子がナノサイズのためにテクスチャーが驚くほど軽く仕上がる点が大きなメリットです。「乳液なのに化粧水のようなシャバシャバのテクスチャー」と評されることも多く、皮脂が気になる方や夏場にも使いやすい点が支持されています。さらっとしているのに保湿力が高いという特性が、スキンケアを続けやすくなる一因になっています。
ナノエマルションには、油と水のどちらを「外側(連続相)」に持つかによって種類が分かれます。これを理解しておくと、製品選びの精度が上がります。
O/W型(オイルインウォーター型)は、油滴が水の中に分散した構造です。水が外側を占めるため、みずみずしくサラサラとした使用感で、肌なじみが良いのが特徴です。洗い流しやすく、べたつきが少ないため、化粧品の乳液や美容液、日焼け止めなど幅広く採用されています。
美容用ナノエマルションの主流です。
これが基本です。
W/O型(ウォーターインオイル型)は、水滴が油の中に分散した構造です。油が外側のため、閉塞性(水分蒸散を防ぐ効果)が高い一方、べたつきやすい傾向があります。ファンデーションや日焼け止めの一部、エモリエント(皮膚軟化)目的の製品に使われることがあります。
複合型(W/O/W型など)は、水の中に油が、その油の中にさらに水が入る二重エマルジョン構造です。水溶性と脂溶性の両方の成分を同時に封入できるため、次世代型スマートキャリアとして医薬品・高機能コスメ分野での研究が進んでいます。
スキンケアを目的とする場合は、O/W型のナノエマルションを選ぶのが最も一般的です。製品のテクスチャーが透明〜半透明でさらっとしているものは、O/W型のナノエマルションである可能性が高いです。
ナノエマルション技術を使った製品は複数あり、配合成分や濃度によって向いている肌タイプが変わります。この情報を得ることで、自分に合わない製品を買ってしまう損失を防げます。
インナードライ・乾燥肌の方には、セラミド濃度が高く、複数種のヒト型セラミドを配合した製品が向いています。例えばトゥヴェール「ナノエマルジョン ディープ」は浸透湿潤セラミドを12%以上配合しており、一年中乾燥が気になる方向けに設計されています。
内側からしっかり保湿できるのが特徴です。
敏感肌・あれ肌の方には、乳化剤フリーや無添加処方のナノエマルション製品が安心です。「ナノエマルジョン プラス」シリーズは乳化剤フリーで、セラミド自身がナノ乳化を担う独自技術を採用しているため、余計な刺激成分を最小限に抑えています。パッチテスト済み製品を選ぶとさらに安心です。
混合肌・皮脂が気になる方には、セラミド濃度を適度に抑えたベーシックタイプのナノエマルションが向いています。O/W型のナノエマルションはもともとさらっとした使用感なので、Tゾーンが脂っぽくなりにくく、Uゾーンの乾燥だけケアしたいという方にも使いやすいです。
肌タイプに合わせた選択が条件です。
選ぶ際のポイントとして、「配合セラミドの種類と濃度」「乳化方法(超高圧乳化かどうか)」「追加の美容成分(ナイアシンアミド・エクトインなど)」をチェックすることをおすすめします。成分表示の上位に「セラミド〇〇」が記載されているほど、有効成分の配合量が多い目安になります。
ナノエマルションを最大限に活かすには、スキンケアの順番と使い方のコツを押さえることが重要です。
基本的なスキンケアの順番は「洗顔 → 化粧水 → ナノエマルション乳液 → (必要に応じて)美容液・クリーム」です。ただし、ナノエマルションの乳液はテクスチャーが軽いため、「美容液の後に使うべきか?」と迷う方も多いです。
原則として、ナノエマルション乳液は化粧水の後・美容液の前に使うのが最も効果的です。なぜなら、ナノエマルションは角質層への浸透を促進するキャリアとしても機能するため、先に使うことで後から重ねる美容成分の浸透をサポートする効果も期待できるからです。美容液を先に使うと、せっかくのナノエマルションの浸透経路が塞がれてしまう可能性があります。
使用量の目安は1回につき500円玉大が一般的ですが、ナノエマルションはテクスチャーが軽いため、少量を2回に分けて重ねづけするのもおすすめです。少量ずつ重ねることで、角質層への均一な浸透が促されます。
注意点として、界面活性剤を含む製品は過度な重ね使いをしないことが大切です。使いすぎると肌のバリアを逆に傷つけるリスクがあります。1日2回(朝・夜)を目安に使うなら問題ありません。
参考:スキンケアにおける高保湿製剤の処方設計と角層への有効成分の届け方について詳細に解説されています。
高保湿スキンケア製剤の処方設計の考え方|J-Stage(日本化粧品技術者会誌)
美容に詳しい人の中でも意外と知られていない視点として、「ナノエマルションを使い続けると、すっぴんがきれいに見えやすくなる」というメカニズムがあります。
通常の乳液は粒子が大きいため、肌の表面に均一な膜が張られます。この膜は確かに乾燥を防ぎますが、毛穴や肌のキメの凹凸をそのままにしてしまうため、素肌のくすみや荒れが隠しきれません。
一方、ナノエマルションでセラミドを継続的に補給すると、角質層の細胞間が埋まり、肌の表面のキメが整ってきます。キメが整うとは、毛穴まわりの微細な凹凸が少なくなることを意味します。光の乱反射が減って肌表面がなめらかになることで、メイクなしでも「ツヤのある肌」に見えやすくなるのです。
これは光学的に説明できる現象です。
実際にトゥヴェールの「ナノエマルジョン ディープ」ユーザーの口コミ(LIPS等)でも、「毛穴がフィルターかけたみたいに目立たなくなった」「乾燥で広がっていた毛穴が目立たなくなった」という声が複数確認されています。毛穴ケアのために専用のパックやケア製品を揃えているにもかかわらず効果が出にくいという方は、そもそもの角質層のセラミドが不足していることが原因の場合があります。
毛穴問題で悩んでいる方がいる場合、ナノエマルション乳液によるセラミド補給を土台として取り組むことが、結果的に近道になる可能性があります。
乳液選びを見直すことが出発点です。
ナノエマルションには高い美容効果が期待できる一方、理解しておきたい注意点もあります。
それが界面活性剤の役割と安全性の問題です。
ナノエマルションを安定した状態に保つためには界面活性剤が不可欠で、これがないとナノサイズの粒子を維持できません。界面活性剤には植物由来のやさしいタイプから、石油系の洗浄力の強いタイプまで幅広い種類があります。
厳しいところですね。
化粧品に配合される界面活性剤の多くは、毒性・刺激性が評価された安全なものです。ただし、敏感肌や乾燥肌の方にとっては、界面活性剤の種類や濃度によって刺激を感じることがあります。特に注意したいのが「洗い流さない製品(スキンケア)」に配合される界面活性剤で、長時間肌に残ることで敏感肌にはじわじわと刺激になる可能性があります。
なお、ナノ粒子が皮膚の深部(真皮以下)まで浸透してしまうリスクについては、化粧品の表現としては「角質層まで」とされており、正常な皮膚のバリアを超えることは基本的にないとされています。しかし研究段階での議論は続いており、傷や炎症がある肌での使用は慎重に行うのが安全です。
製品を選ぶ際は、成分表示を確認して「〇〇硫酸塩」「スルホン酸」などの高刺激型の界面活性剤が含まれていないかを確認する習慣をつけるのがおすすめです。確認する、という行動一つで肌トラブルのリスクを大きく減らせます。
ナノエマルションは乳液だけでなく、さまざまなカテゴリの化粧品に活用されています。種類を知っておくと、スキンケアラインをより賢く組み合わせることができます。
美容液への活用では、ビタミンC誘導体・レチノール・ナイアシンアミドなどの脂溶性美容成分をナノエマルション化することで、肌への浸透効率を大幅に高めます。ビタミンC誘導体は分子サイズが比較的大きく、普通に配合しただけでは角質層を通過しにくいですが、ナノエマルション化するとその壁を超えやすくなります。
これは使えそうです。
日焼け止めへの活用では、紫外線吸収剤をナノエマルション化することで、白浮きせず透明な仕上がりを実現しつつ、SPF・PA効果を維持できます。日本触媒が開発した「紫外線吸収剤内包ナノエマルション」は粒子径が約60nmと均一で、軽い使用感と安定した紫外線防御効果を両立しています。
化粧水への活用も進んでいます。通常、セラミドやワセリンなどの油性成分は水系の化粧水には配合しにくいですが、ナノエマルション技術を使えば水の中に油性成分を安定的に分散させることができます。トゥヴェールが2025年に発売した「バリアショットローション」はナノ化したセラミドとワセリンを化粧水に配合することに成功した製品で、化粧水のみずみずしさとバリア補修効果を同時に実現しています。
参考:紫外線吸収剤内包ナノエマルションの技術詳細について、粒子径60nm・安定性・SPF性能などが説明されています。
ナノエマルション技術は現在もなお急速に進化しており、美容・医薬・食品の各分野でその応用範囲は広がり続けています。
現在の課題として挙げられるのは「製造コストの高さ」と「界面活性剤の環境負荷」です。高圧ホモジナイゼーションなどの設備投資は大きく、それが製品価格に反映されます。そのため高機能ラインでは1本3,000〜7,000円台の製品が多い傾向があります。
この課題を解決しようとしているのが「グリーンナノエマルション」の研究です。植物由来の天然界面活性剤(レシチン・サポニンなど)を使うことで、肌への刺激を最小限にしながら環境負荷も低減する処方開発が進んでいます。クラシエが2024年に発表した「白濁ナノエマルション」研究では、少量の油分だけでスキンケア効果を高めることが可能になり、化粧料に大量の油分を配合する必要がなくなると報告されています。
「スマートドラッグデリバリー」という分野では、pH・温度・酵素などの特定の刺激に反応してナノ粒子が崩壊し、成分を放出するトリガー型ナノエマルションの研究も進んでいます。将来的には「乾燥が進んだ肌の部分にだけ成分が集中して届く」スキンケアが実現する可能性があります。
今後がとても楽しみですね。
参考:クラシエが発表した油分の少ないナノエマルション技術の研究について報告されています。環境負荷低減と美容効果を両立するアプローチが紹介されています。
肌にも環境にもやさしい白濁ナノエマルション研究発表|クラシエ

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