

美容目的なら骨髄採取は避けられます
骨髄幹細胞の採取は、腰の骨である腸骨から骨髄液を取り出す医療行為です。手術室でうつ伏せの状態になり、皮膚の上から専用の針を数十か所刺して吸引します。採取する量は通常400mlから1200mlで、患者さんの体重に応じて決まります。
全身麻酔が必要になるため、入院期間は3泊4日程度が一般的です。手術の所要時間は1時間から3時間ほどかかります。採取後は腰に鈍痛を感じることがありますが、多くの方は2日から3日で退院し日常生活に戻れます。
採取前には感染症の検査や健康診断が必須で、採取日の1週間から3週間前に自己血を採血しておきます。これは採取後の貧血を予防するための措置です。退院後も1週間から4週間後に健康診断を行い、体調が回復するまでフォローアップが続きます。
ドナー登録している方へ向けた骨髄バンクの情報では、採取のリスクとして針による臓器への障害や出血、感染などが挙げられています。いずれも極めてまれですが、麻酔に関係する危険性は予測が困難とされています。
日本骨髄バンク公式サイトでは、骨髄・末梢血幹細胞の提供までの詳しい流れが確認できます。
美容や再生医療の分野では、骨髄由来と脂肪由来の2種類の幹細胞が使われています。最も大きな違いは採取時の身体的負担です。
骨髄由来幹細胞の場合、骨盤の骨に針を刺す骨髄穿刺が必要で、全身麻酔または局所麻酔下で行われます。つまり手術室での処置が必須です。採取できる幹細胞の量は限られており、大量培養が必要になります。入院が必要なケースも多く、時間的にも経済的にも負担が大きいのが実情です。
一方、脂肪由来幹細胞は腹部や太ももの皮下脂肪から採取します。局所麻酔で済むため、外来で30分程度の処置で完了します。傷口も7mm程度と小さく、入院は不要です。採取できる幹細胞の量は骨髄の約500倍もあり、少量の脂肪組織から大量の幹細胞を得られます。
脂肪由来幹細胞の採取量は1グラムから3グラム、小指の先ほどの量で十分です。例えるなら角砂糖1個分から2個分程度のサイズになります。これだけの少量でも、骨髄採取の500倍の幹細胞が得られるということですね。
増殖能も脂肪由来のほうが高く、培養に伴う老化の影響や分化能の低下が少ないという特徴があります。結論は脂肪由来が優位です。
幹細胞治療は自由診療のため、保険適用がありません。費用は全額自己負担となり、クリニックや治療内容によって大きく異なります。
幹細胞治療全体の相場は1回あたり100万円から300万円程度です。具体的には、初診のカウンセリングで1万円から2万円、感染症検査の採血で1万円程度、細胞採取料が30万円から40万円、細胞培養料が30万円から40万円かかります。
幹細胞点滴1回分の費用は、培養した幹細胞1億個で150万円から200万円が目安です。使用する幹細胞の量や投与方法、回数によって費用は変動します。美容目的の脂肪組織由来再生幹細胞を用いた豊胸術では、150万円から200万円の範囲が一般的です。
骨髄由来幹細胞を使った特定の医療行為、例えば脊髄再生治療では薬1回分で1500万円かかり、保険適用後でも300万円から450万円の負担になります。ただし美容目的の場合は保険適用外のため、この金額は参考程度にしかなりません。
治療費以外にも定期的な経過観察や検査費用が別途必要になります。トータルで見ると、初回治療から経過観察まで含めて150万円から350万円程度を想定しておくと安心です。
支払い方法については、クリニックによって分割払いやローンに対応しているところもあります。高額な治療になるため、事前にしっかり確認しておくことが重要です。
幹細胞治療の費用相場について詳しく解説している記事も参考になります。
骨髄幹細胞の採取には、いくつかのリスクが伴います。最も大きなリスクは麻酔に関係するもので、特異体質による麻酔薬への反応は予測が困難です。
採取術に伴うリスクとしては、針による臓器への障害、出血、感染、針が折れるなどが考えられます。極めてまれではありますが、採取部位の感染や敗血症を起こしたという報告も存在します。実際に日本骨髄バンクの報告では、採取後に後腹膜部位に広範囲の血腫が確認された事例があります。
採取後の症状として、腰の重さやわずかな鈍痛を数日間感じる方が多くいます。痛みが続く場合もありますが、ほとんどは1週間から2週間で軽減します。採取により一時的に貧血になりますが、造血機能は2週間から1か月で元に戻ります。
幹細胞治療全般のリスクとして、塞栓症が挙げられます。肺塞栓症は投与された幹細胞が肺の毛細血管で詰まってしまうことで起こり、投与される幹細胞の生存率が低い時に生じやすいとされています。
治療効果には個人差があり、患者自身の再生力を利用した治療法のため、効果の程度や期間が一定ではありません。また、がん治療中の方、がん治療後間もない方、妊娠中や妊娠の可能性がある方は治療を受けることができません。
感染症のリスクを最小限に抑えるため、採取前に必ず血液検査を行います。HIV、B型肝炎、C型肝炎、梅毒などの検査項目があります。
美容やアンチエイジング目的で幹細胞治療を検討している場合、骨髄由来ではなく脂肪由来幹細胞を選択するのが賢明です。理由は身体的負担とリスクの差にあります。
骨髄採取は医療上の必要性が高い場合、例えば白血病患者への骨髄移植や重度の脊髄損傷治療などで主に用いられます。つまり命に関わる状況や、生活の質を著しく損なう疾患に対する治療手段という位置づけです。美容目的でこれだけのリスクと負担を負う必要性は低いでしょう。
脂肪由来幹細胞は美容クリニックで広く採用されています。肌の再生やリフトアップ、AGAによる薄毛治療、豊胸術など、美容分野での実績が豊富です。局所麻酔で済み、傷跡も目立たず、ダウンタイムがほとんどないため、仕事や日常生活への影響を最小限に抑えられます。
採取時の痛みについても大きな違いがあります。骨髄採取では全身麻酔が必要なレベルの処置ですが、脂肪採取は局所麻酔の注射による軽い痛み程度です。採取後の痛みも脂肪の場合は数日程度で治まります。
美容効果についても、脂肪由来幹細胞にはコラーゲンやエラスチンの産生を促進する力があり、骨髄由来と比較して美容面での優位性が認められています。増殖能が高く、高齢者から採取したものでも増殖スピードが落ちにくい特色もあります。
クリニック選びの際は、厚生労働省の認可を受けた再生医療提供計画を提出している施設かどうかを確認しましょう。安全性の担保された環境で治療を受けることが最優先です。
脂肪由来幹細胞と骨髄由来幹細胞の詳しい比較が表参道総合医療クリニックの解説記事で確認できます。