

あなたが「美容にいい」と思って食べているブラックオリーブの黒色は、実は自然の色ではなく、グルコン酸鉄(食品添加物E579)で人工的に着色されたものです。
「グルコン酸鉄」という名前を初めて聞いた方も多いかもしれません。これは鉄とグルコン酸が結合した化合物で、食品添加物としてはEU規格の「E579」という番号が付与されています。主に市販のブラックオリーブ缶詰に使われており、あの鮮やかな漆黒の色を安定させるために添加されているのです。
自然の状態でオリーブは、緑→紫→茶褐色と熟成していきます。しかし、天然に熟成した実は見た目が茶色〜赤褐色のまだら模様になり、消費者がイメージする「真っ黒」にはなりません。そこでグルコン酸鉄や乳酸鉄(E585)を使い、色を人工的に黒く安定させているのです。
つまり「着色」が目的です。
ただし、この添加物は日本でも安全性が確認された食品添加物であり、厚生労働省の「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示」にも掲載されています。一般的な摂取量であれば健康上の問題はないとされています。
重要なのは、グルコン酸鉄は同時に「鉄分補給の原料」としても使われている点です。サプリメントや医薬品の分野では、鉄欠乏性貧血の治療・予防を目的として使われ、体内で鉄イオンを供給する役割を果たします。食品添加物としては着色目的ですが、鉄分を含む化合物であることは変わりありません。
参考:厚生労働省 食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4935&dataType=1
スーパーの棚に並ぶオリーブ缶の多くは「真っ黒で均一な色」をしています。この見た目こそが、グルコン酸鉄による着色のサインです。
これは意外ですね。
原材料表示を確認するのが最も確実な見分け方です。
| 種類 | 色の特徴 | 原材料表示の目安 | 主な産地 |
|---|---|---|---|
| グルコン酸鉄着色品 | 均一な漆黒 | 「グルコン酸第一鉄」「乳酸鉄」の記載あり | アメリカ産が多い |
| 天然熟成ブラックオリーブ | 茶褐色〜黒の不均一なまだら | 添加物の記載なし(塩水のみ) | スペイン・ギリシャ産が多い |
| グリーンオリーブ | 緑〜黄緑色 | 添加物なし(塩水のみ) | スペイン産が多い |
天然熟成のブラックオリーブは、塩水(ブライン)だけで漬けられていることが多く、発酵プロセスによってラクトバチルス・プランタルムなどの善玉菌が生きていることも特徴です。市販の加熱処理済みの缶詰ではこのプロバイオティクス効果が失われてしまいます。
美容目的でオリーブを取り入れたいなら、原材料表示を確認してみましょう。「グルコン酸第一鉄」が入っていても問題はありませんが、より自然な成分だけの商品を選ぶことで、腸内環境まで整えられる可能性があります。
参考:天然と着色ブラックオリーブの見分け方についての解説
https://www.greatitalianfoodtrade.it/ja/オリーブ/天然および着色されたブラックオリーブ/
20〜40代の日本人女性の約65%が「鉄不足」もしくは「かくれ鉄不足」の状態にあることが、厚生労働省の調査で明らかになっています。必要な鉄分の摂取量の目安は成人女性で10〜10.5mg/日(月経あり)ですが、多くの女性がそれを大きく下回っています。
鉄不足は深刻です。
では鉄分が足りないとどうなるのでしょうか?
美容面で表れる症状は想像以上に多岐にわたります。
主なものをまとめると。
コラーゲン生成が鍵になります。肌のハリと弾力の源であるコラーゲンは、真皮層の70%を占める成分ですが、その合成には鉄分が欠かせません。高価なコラーゲンサプリを購入する前に、まず鉄分が十分に足りているかを確認することが先決です。
参考:鉄分と美容・コラーゲン生成の関係(大正製薬)
https://brand.taisho.co.jp/contents/beauty/557/
グルコン酸鉄は「非ヘム鉄」に分類されます。
吸収率が課題です。
非ヘム鉄の体内吸収率は、一般的に2〜5%程度とされています。ヘム鉄(肉や魚由来)の吸収率が10〜20%であることと比べると、かなり低い数値です。実際、ほとんどが吸収されずに排出されてしまいます。
しかし、一緒に食べるものによって状況はガラリと変わります。非ヘム鉄の吸収率を高めるための主なポイントをまとめました。
つまり「何と一緒に食べるか」が吸収効率を決めます。
オリーブを食べる際には、ビタミンCが豊富な野菜(パプリカ1/4個でビタミンC約34mg)を添えたサラダや、レモンドレッシングで和えるなど、ちょっとした工夫が鉄分の吸収率を数倍に高める可能性があります。
参考:非ヘム鉄の吸収率とビタミンCの関係(大正製薬)
https://brand.taisho.co.jp/contents/beauty/532/
「グリーンとブラック、どちらが美容にいいの?」という疑問はよく聞きます。
それぞれに異なる強みがあります。
| 栄養成分(100g当たり) | グリーンオリーブ(塩漬け) | ブラックオリーブ(着色缶詰) |
|---|---|---|
| エネルギー | 約148kcal | 約115kcal |
| 脂質(オレイン酸) | 多い | やや少ない |
| 鉄分 | 少ない | 多い(グルコン酸鉄由来も含む) |
| ポリフェノール(総量) | 多い(オレウロペイン豊富) | 少ない(熟成で分解) |
| ビタミンE | 多い | やや少ない |
グリーンオリーブはポリフェノール(オレウロペイン)が豊富で抗酸化力が高く、シミ・シワ対策が主な目的の方に向いています。一方、ブラックオリーブは鉄分が多く、貧血気味・血色が気になる方に特に向いているといえます。
どちらを選ぶかは目的次第です。
ただし、ブラックオリーブに含まれる「鉄分」の一部はグルコン酸鉄由来という点は、知っておくべき重要な事実です。「天然の豊富な鉄分」という印象とは少し違う側面があります。自然に熟成したブラックオリーブよりも、缶詰の添加物由来の鉄分が混在しているという点で、食品選びの参考にしてください。
オリーブの美容効果の中でも、特に近年注目を集めているのが「ヒドロキシチロソール」というポリフェノールです。これはポリフェノールの中でも強力な抗酸化物質として知られており、人間の肌への影響に関する研究が世界中で進んでいます。
ヒドロキシチロソールの主な働きをまとめると。
ヒドロキシチロソールはグリーンオリーブに特に多く含まれ、熟成が進むと一部が分解されてしまいます。エイジングケア目的ならグリーンオリーブやエクストラバージンオリーブオイルを活用するのが効果的です。
また、外から塗るだけでなく、食べて「内側から補給」することが重要です。オリーブオイルを毎日小さじ1〜大さじ1程度、ドレッシングや仕上げとして活用する方法が現実的です。
参考:ヒドロキシチロソールの抗酸化・美肌効果についての解説
https://aseave.co.jp/blogs/news/hydroxytyrosol-explanation
「いいと分かっても、続けられなければ意味がない」という点を踏まえ、日常に取り入れやすい食べ方を紹介します。
これは使えそうです。
オリーブと鉄分吸収をテーマにした組み合わせで特に効果的なのは、「鉄分(ブラックオリーブ or グリーンオリーブ)」+「ビタミンC(パプリカ・ブロッコリー・レモン)」+「動物性タンパク質(ツナ・チキン)」の3点セットです。
たとえば次のような食べ方が手軽で効果的です。
加熱しすぎないが原則です。オリーブオイルのヒドロキシチロソールは熱に比較的弱いため、高温調理には通常のオリーブオイルを使い、エクストラバージンは仕上げ専用にするとポリフェノールの損失を最小限に抑えられます。
グルコン酸鉄は食品添加物としての顔だけでなく、医薬品・サプリメントの原料としての顔も持っています。
さまざまな形で活用されているわけです。
市販のサプリメントや医薬品に含まれる鉄の種類を整理すると、主に以下のものがあります。
美容目的でサプリメントから鉄分を補いたい場合、グルコン酸鉄は胃腸への刺激が比較的穏やかとされており、「鉄サプリを飲むと気持ち悪くなる」という悩みを持つ方には選択肢の一つになります。
サプリ選びで迷ったら「吸収率」と「胃腸への負担」のバランスが条件です。
ヘム鉄は吸収率が高いですが、価格が高め。
グルコン酸鉄は手頃で胃腸に優しいという特徴があります。
参考:鉄サプリの種類と選び方(ヒロクリニック)
https://www.hiro-clinic.or.jp/gynecology/anemia-and-menstruation/
「体にいいなら、たくさん食べたほうがいい」と考えがちですが、それは違います。
オリーブは塩漬けで加工されているため、ナトリウム(塩分)の含有量が高いことが課題です。ブラックオリーブ(缶詰)100gには約800〜1000mgの塩分が含まれており、これは1食の塩分目安(約2〜2.5g)の半分近くを占めることもあります。
また、脂質も100gあたり約10〜15gと決して少なくありません。
カロリー面も無視できません。
目安として、1日に食べるオリーブの量は5〜10粒(約20〜40g程度)が適切とされています。はがき1枚分の面積に並べた量が10粒前後のイメージです。
摂りすぎに注意すれば問題ありません。「毎日少量を続ける」という習慣が、美容効果を引き出す一番の近道です。
オリーブに含まれる成分が肌に与える影響は、主に2つのルートで説明できます。
ここが核心です。
1つ目は「抗酸化ルート」。
オレウロペインやヒドロキシチロソールなどのポリフェノールが、紫外線やストレスによって生じた活性酸素を中和します。活性酸素は細胞膜を傷つけてシミ・シワの原因になりますが、これをいち早く無害化することで、肌老化の進行を抑えます。オリーブ由来のヒドロキシチロソールは、EU(欧州食品安全機関)も「心血管の健康に有益」として機能性表示を認めている成分です。
2つ目は「細胞保護ルート」。
オリーブに豊富なオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)は、細胞膜の構成成分として取り込まれ、細胞を外部刺激から守ります。また、皮膚の表面に薄い保護膜を作り、水分蒸発(TEWL)を抑えてくれるため、乾燥肌・小じわへのアプローチとして有効です。
鉄分との相乗効果も見逃せません。鉄分はコラーゲン合成の酵素を動かし、オレイン酸はそのコラーゲンが働く細胞環境を整えます。オリーブに含まれる栄養素はバラバラではなく、互いに補い合うように働いているのです。
ターンオーバーを整えることで、くすみや角質肥厚が改善され、スキンケア化粧品の成分も浸透しやすい肌環境が生まれます。「外からのケア」の効果を最大化するためにも、「内側からの栄養補給」が欠かせません。
参考:鉄補給と美肌に関する研究紹介(healthy-pass.co.jp)
https://www.healthy-pass.co.jp/blog/20221130-2/
ここからは、他の美容記事ではほとんど語られない視点をお伝えします。
一般的に「添加物の表示は体に悪いものを見分けるためのもの」と思われていますが、グルコン酸鉄の表示を逆手に取って「美容食材の質を見極める指標」として使う方法があります。
これは面白いですね。
具体的には、オリーブ缶の原材料欄を次の3つの観点でチェックするだけです。
この「原材料表示チェック習慣」を身につけることで、オリーブだけでなくピクルスや発酵食品全般の「本物度」を見極める力がつきます。美容情報は「何を食べるか」だけでなく「どんな品質のものを選ぶか」が実は肝心です。
食品の「原材料表示」は、美容のための羅針盤になります。次回スーパーでオリーブを手に取るとき、ぜひ裏面を確認してみてください。
美容効果を実感するには、継続が条件です。
鉄分補給の効果は短期間では実感しにくく、血液検査でフェリチン値(貯蔵鉄)が改善されるには数か月かかることが一般的です。「1週間試したけど変化がない」と感じてやめてしまうのは、非常にもったいない状態です。
継続しやすくするための習慣化のポイントをまとめます。
サプリメントと食事を組み合わせるなら、鉄含有のサプリと一緒にパプリカスティックやオレンジを食べることで、吸収率を日常的に底上げできます。
小さな工夫の積み重ねが、3か月後の肌に反映されます。
焦らず続けることが一番の近道です。
参考:女性の鉄分不足と美容・健康の関係(厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト)
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/anemia.html