
副反応とは、ワクチン接種が原因で起きた健康上の問題を指し、ワクチン接種との因果関係が証明されたもののみを表す医学用語です。一方で副作用は、医薬品の主作用(治療効果)とは異なる別の作用や体に良くない作用のことを意味します。
参考)予防接種の副反応、有害事象、副作用それぞれの違いについて
この2つの用語の最も重要な違いは、使用する対象物にあります。「副反応」はワクチンに対して使われる言葉であり、「副作用」はワクチン以外の医薬品に対して使われる言葉として厳密に使い分けられています。
例えば、風邪薬を服用して眠くなった場合は「副作用」と呼び、インフルエンザワクチンを接種して接種部位が腫れた場合は「副反応」と呼ぶのが正しい用法です。この使い分けを理解することで、医療従事者との正確なコミュニケーションが可能になります。
参考)コロナワクチンの副反応について 副反応と副作用の違いは? |…
副反応と副作用では、その発現メカニズムに明確な違いがあります。副反応の場合、ワクチンによって体に免疫反応が起こり、感染症の発生を防ぐ免疫ができる過程で、免疫ができる以外の反応として発生します。
参考)https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_A-04hukuhannou_20240401.pdf
副作用については、薬理作用に基づくもの、薬物毒性によるもの、薬物過敏症によるものの3つのメカニズムに分類されます。薬理作用に基づく副作用は投与量に依存して発生し、薬物毒性は投与量と投与期間に依存します。薬物過敏症は投与量に依存せず、通常投与開始から6ヶ月以内に発現する特徴があります。
参考)くすりの話 あれこれ No.121:副作用の機序的分類|お役…
ワクチンの副反応の原因として、ワクチン製剤の成分による炎症反応、生ワクチン由来の感染による症状、アレルギー反応、接種行為や誤接種に伴う有害事象などが挙げられます。これらのメカニズムの理解により、適切な対処法を選択することができます。
参考)副反応 - Wikipedia
副反応と副作用の違いを理解するためには、有害事象という概念も併せて把握する必要があります。有害事象とは、ワクチンを含むあらゆる医薬品を使用した後に起きた、あらゆる健康上の問題のことで、医薬品との因果関係があるものも、因果関係がないものも含まれます。
つまり、有害事象の中で、ワクチンとの因果関係が証明されたものが副反応という関係性になります。例えば、ワクチンを接種した後に雷に打たれて怪我をした場合も技術的には「有害事象」に分類されますが、常識的に考えてワクチンとの因果関係はないため「副反応」ではありません。
医薬品についても同様に、薬を服用した後に起きたあらゆる健康上の問題が有害事象であり、その中で薬との因果関係が認められたものが副作用となります。この概念的な整理により、医療安全の評価や報告において正確な用語使用が可能になります。
参考)ワクチンの「副反応」と「有害事象」の違いは?|看護roo!ニ…
副反応の具体的な症状としては、接種部位の局所反応(発赤、腫脹、疼痛など)と全身反応(発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛など)に分類されます。重大な副反応としては、アナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、ギラン・バレー症候群などが報告されています。
参考)予防接種の副反応 - 網走市公式サイト
副作用の症状分類については、薬理作用による副作用(風邪薬による眠気など)、アレルギー反応による副作用(薬疹、じんましんなど)、特殊な副作用(光線過敏症など)の3つに大別されます。
参考)薬の副作用への理解を深める|対処法を知って安全な服薬を - …
新型コロナワクチンの副反応を例にすると、注射した部分の痛み、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢等の症状が報告されており、これらは全て「副反応」として分類されます。一方、解熱鎮痛剤を服用して胃の調子が悪くなった場合は「副作用」として扱われます。
参考)接種後の副反応を疑う症状に対する相談・診療体制 - 新潟県ホ…
医療現場では、副反応と副作用の違いを正確に理解し、適切に使い分けることが患者安全と医療の質向上に直結します。ワクチン接種後に症状が現れた場合、まず「有害事象」として広く情報を収集し、その後詳細な調査により「副反応」かどうかを判断するプロセスが重要です。
副作用については、機序的分類に応じた対応が求められます。薬物過敏症に該当する症状が現れた場合は即座に中止が必要ですが、薬理作用・薬物毒性に該当する症状の場合は用量調節や経過観察による対応が選択されることがあります。
参考)第4回 副作用機序別分類の活用方法
HPVワクチンの安全性評価を例に取ると、接種後の様々な体調不良は「有害事象」として報告されていますが、数百万人のデータ分析により、これらが「副反応」であるという証拠は見つかっていません。このように、正確な用語の使い分けは、科学的評価と適切な情報提供において極めて重要な役割を果たしています。
厚生労働省では予防接種後の有害事象について詳細な調査体制を整備しており、医療従事者は副反応疑い報告制度を通じて適切な報告を行うことが求められています。患者・家族への説明時にも、これらの用語を正確に使用することで、不必要な不安を避けながら適切な医療情報を提供することができます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000167047.pdf