

ニンジン100本分の野菜を毎日食べても、ドナリエラエキス1回分のβカロテン量に届きません。
ドナリエラエキスは、イスラエルの「死海」を代表とする過酷な塩水環境に生息する微細藻類(マイクロアルジェ)の一種、「ドナリエラ・パーダウィル(またはデュナリエラ・サリナ)」から得られるエキスです。死海の塩分濃度は通常の海水の約10倍(約35%)にも達し、ほとんどの生物が生きられない環境として知られています。それでも生き抜くこの藻は、ひとことで言えば「生命力の塊」です。
通常の化粧品成分の表示では「デュナリエラサリナエキス」と記載されていることが多く、ドナリエラエキスと同じものを指しています。成分表示を見て「デュナリエラ」という文字を探すと、含まれているかどうかが分かります。
この藻類の最大の特徴は、自らの体を強烈な紫外線や酸化ストレスから守るために、大量の天然βカロテン(ベータカロテン)を生成することです。環境が過酷であればあるほど、より多くのβカロテンが蓄積されるとされています。それを人間のスキンケアに活かそうという発想が、ドナリエラエキスの美容への応用の出発点です。
化粧品成分に詳しいPaula's Choiceの成分辞典では、デュナリエラサリナエキスを「強力な抗酸化作用を持ち、ビタミンB12の天然供給源でもある優秀な成分」と評価しています。適応力に優れた植物由来の成分として、国際的にも注目度が高まっています。
ちなみに、ドナリエラが繁殖した塩湖は、水面がピンク色や赤色に染まる絶景を生み出すことでも知られています。オーストラリアのピンクレイク(ハット・ラグーン)もその一例で、観光地としても有名です。この鮮やかな色こそがβカロテンの証拠です。意外ですね。
参考:ドナリエラとβカロテンの関係・基礎情報(株式会社モノダスサンコー)
https://mono3.co.jp/dunaliella/
ドナリエラエキスが持つ天然βカロテンの抗酸化作用は、ビタミンEの約100倍と言われています。この数字はどれほどのものでしょうか?
ビタミンEはもともと「抗酸化のビタミン」として知られており、スキンケア成分としても非常に優秀です。たとえばビタミンEを多く含むアーモンドは「美肌の食べ物」として定評があります。そのビタミンEの100倍の抗酸化力を持つということです。これはかなりの差です。
抗酸化作用とは、簡単に言えば「肌の錆び」を防ぐ働きです。私たちの肌は日々、紫外線・ストレス・タバコ・食品添加物などから「活性酸素」という悪玉物質を浴び続けています。活性酸素が増えすぎると、コラーゲンが破壊されてシワやたるみが加速し、メラニンが過剰生成されてシミが増え、細胞そのものが老化を早めます。これが「肌の酸化」です。
βカロテンはこの活性酸素を強力に消去してくれます。ドナリエラ由来の天然βカロテンは、シス型(9-シス型)とオールトランス型が約50%ずつ混在するという、他の植物由来βカロテンとは異なるバランスを持っています。このシス型βカロテンは体に馴染みやすく吸収されやすいとされており、合成βカロテンや一般的な植物性βカロテンとの大きな違いとして挙げられています。
つまり「量×質」の両面で、抗酸化成分として非常に優れているわけです。抗酸化が基本です。
また、東京大学の産学共創プラットフォームOPERAの研究報告によると、ドナリエラはβカロテンを高生産することに加えて、ビタミンEの50倍以上の抗酸化作用を持つカロテノイドを含むことが示されています。日常のスキンケアに取り入れることで、慢性的な酸化ストレスによる肌老化に対抗できる可能性があります。
参考:BASFのナチュラルベータカロテン・デュナリエラサリナ原料解説(e-expo)
https://www.e-expo.net/information/betatene/
抗酸化だけではありません。ドナリエラエキスはスキンケアにおける「うるおい補給」と「透明感向上」にも積極的に関わります。
まず保湿の面では、ドナリエラエキスが持つβカロテンをはじめとするカロテノイドが、肌の水分バランスを整えるサポートをするとされています。肌表面のバリア機能をサポートし、外部からの刺激で乱れた肌を落ち着かせる働きも期待できます。実際に、SABON(サボン)などのブランドが「乾燥やハリ不足などのエイジングサインへのケア成分」としてドナリエラを積極的に採用しているのも、この保湿・エイジングケア効果への期待からです。
透明感については、ドナリエラエキスに含まれるビタミンB12などの複合成分が、肌のくすみを招く酸化ダメージを抑えることで、肌本来の明るさを引き出す効果が期待されています。これは「美白」(メラニン生成抑制)とは異なるアプローチで、酸化した肌細胞を健やかに保つことで自然な透明感を得るという考え方です。
エイジングケア美容液「REHACER(レアセル)」でも、デュナリエラサリナエキスを「肌を健やかに保ち、透明感のある肌へと導く成分」として採用していることが確認されています。
さらに、ドナリエラエキスの抗炎症作用にも注目が集まっています。エイチ・ホルスタイン株式会社が取り扱う原料「IBR-CLC」の資料では、デュナリエラサリナ油溶性エキスが「抗酸化・抗炎症・UV吸収・美白・他成分のブースター作用」という多面的な効果を持つと紹介されています。これは使えそうです。
つまり、ドナリエラエキスはひとつの成分でいくつもの肌悩みに対応できる、いわば「マルチタスク成分」と言えます。乾燥・くすみ・ハリのなさ・紫外線ダメージと、複数の悩みを一度にケアしたい方には特に注目の成分です。
ドナリエラエキスへの関心が高まる中、いざ「自分のスキンケアに取り入れたい」と思ったときに迷いやすいのが製品選びです。まず確認すべきは成分表示です。
日本の化粧品では「デュナリエラサリナエキス」「ドゥナリエラサリナエキス」「デュナリエラカロテン」「ドナリエラエキス」など、メーカーや製品によって表記がわずかに異なる場合があります。いずれも同じドナリエラ藻類を由来とする成分です。成分表示の上位にあるほど配合量が多いとされているため、位置もあわせて確認しましょう。
現在、ドナリエラエキスが配合された化粧品として代表的なものをいくつか挙げると、次のようなアイテムがあります。
化粧品の選び方の基本として、自分の主な肌悩みに合わせて剤型を選ぶことが大切です。日中の紫外線ダメージが気になるなら日中用クリームやUVケア製品、乾燥やハリが気になるならドナリエラ配合の美容液、くすみが気になるなら洗顔やマスクから始めるのがおすすめです。「どの肌悩みの対策か」を先に決めてから探すと選びやすくなります。
参考:デュナリエラサリナエキス 成分評価(Paula's Choice)
https://www.paulaschoice.jp/ingredients/ingredient-dunaliella-salina-extract.html
スキンケアでドナリエラエキス配合の化粧品を使うだけでなく、サプリメントとして内側から摂取する「W使い(インナー+アウター)」アプローチは、まだあまり知られていない活用法です。
ドナリエラ由来の天然βカロテンは、2020年に機能性表示食品として消費者庁に受理されています。「抗酸化特性を持つβカロテンは、UV刺激から肌を保護するのを助ける機能を持つことが報告されている」という機能性表示が認められており、日焼け止めを塗るような外側からのUVケアとは異なる角度でのアプローチが可能です。
具体的には、健康な被験者(n=36)に1日あたり24mgのβカロテンを12週間投与した臨床試験(並行群間比較試験)で、プラセボ群と比較して紫外線照射後の皮膚の赤みの変化量が有意に少なかったという結果が報告されています。摂取開始から6週間の時点でも赤みの軽減が確認されており、継続的な摂取が重要なことが分かります。6週間が条件です。
外側からの塗布ケアと経口摂取を組み合わせることで、紫外線ダメージ・乾燥・エイジングに対して、より包括的なアプローチが期待できます。これはまさに、サプリメントを日常的に使っている美容意識の高い方に試してほしい方法です。
ただし、βカロテンを過剰に摂取すると皮膚が黄色みを帯びる「柑皮症」(皮膚への色素沈着)が起こる可能性があります。食事からの摂取でも起こりうる現象で、健康への害はないとされていますが、審美的な面では気になる方もいるでしょう。サプリメントを使う場合は製品の表示用量を守ることが大前提です。
日健総本社などから「ドナリエラソフトカプセル」「ドナリエラハードカプセル」などのサプリメント製品も販売されており、手軽に日常のルーティンに加えやすくなっています。気になる場合は成分量の表示を確認し、1日の摂取目安として24mgのβカロテンが含まれているかをチェックすると良いでしょう。
| アプローチ | 製品の種類 | 主な期待効果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 外用(スキンケア) | 化粧水・美容液・マスク・洗顔 | 保湿・抗酸化・透明感・エイジングケア | 成分表示「デュナリエラサリナエキス」を確認 |
| 内用(サプリメント) | ソフトカプセル・ハードカプセル | UV刺激から肌を保護・インナーケア | 摂取過剰で柑皮症の可能性。1日24mg目安を守る |
参考:ドナリエラ由来βカロテンの機能性表示・臨床試験データ(e-expo BASF)
https://www.e-expo.net/information/betatene/