

毎日飲んでいるコーヒーが、実は肌や代謝に悪影響を及ぼしている可能性があります。
トリゴネリン(Trigonelline)は、コーヒー豆に豊富に含まれる天然の植物性アルカロイドで、化学的にはニコチン酸(ナイアシン)のN-メチル化誘導体です。カフェインやクロロゲン酸ほど知名度はありませんが、近年「コーヒーの第3の健康成分」として国内外の研究機関が急速に注目を集めています。
コーヒー生豆にはカフェインに次ぐ量のアルカロイドとして含まれており、その割合は生豆重量の約1%前後に相当します。これはどれくらいの量かというと、コーヒー生豆10g(約1杯分の豆)に対して約100mg前後が含まれる計算です。名刺1枚の重さが約2~3gですから、生豆ひとつかみ(10g程度)でこれだけの量が含まれているのは驚きですね。
コーヒー以外の食品にも含まれていますが、含有量はずっと少なく、フェヌグリーク(植物性スパイス)の種子や、大根(特に桜島大根)が知られています。2019年の研究で桜島大根への含有が明らかになりましたが、日常的に摂りやすいという点では、コーヒーが圧倒的に優れた供給源です。
つまり、コーヒーが最短ルートです。
ただし、生豆に豊富に含まれていても、豆の種類や加工方法によって体に届く量は大きく変わってきます。次のセクションからは、その重要な事実を順番に解説していきます。
トリゴネリンを美容や健康に活かしたいなら、焙煎度の話は絶対に外せません。これがわかると、日常のコーヒー選びがガラリと変わります。
コーヒー生豆100gあたりのトリゴネリン含有量を豆の種類別に見ると、ジャワ産で約547mg、キリマンジャロで約743mg、ジャマイカで約829mg、ブラジル・サントスで約991mgとなっています。ブラジル・サントスはジャワ産の約1.8倍もの含有量があることになります。これはかなりの差です。
問題は、トリゴネリンが熱に非常に弱い性質を持っている点です。200℃を超える高温になると急速に分解が進み、焙煎が深くなるほど含有量が減っていきます。具体的には、生豆を焙煎する過程でトリゴネリンの約半分が分解され、ニコチン酸(ナイアシン)へと変換されてしまいます。
| 焙煎度 | トリゴネリン残存量(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| 生豆(無焙煎) | 最大値(100%) | そのままでは飲用不可 |
| 浅煎り(ライトロースト〜シナモン) | 多く残存(50〜70%程度) | 酸味が強く、フルーティーな風味 |
| 中煎り(ミディアム〜ハイロースト) | 中程度(30〜50%程度) | バランスの良い味わい |
| 深煎り(シティ〜フレンチロースト) | 少量(20%以下) | 苦味が強く、香ばしい風味 |
つまり、深煎りを好む人は健康成分を失っているということですね。
さらに注意が必要なのが、インスタントコーヒーです。製造工程で高温処理が複数回行われるため、トリゴネリンの含有量は非常に少なくなります。医師を対象にした澤井珈琲の調査(2022年、1,002人対象)でも、90%近い医師が「市販の珈琲飲料全体でトリゴネリン含有量は少ない」と回答しています。毎朝インスタントコーヒーを飲んでいても、トリゴネリンはほぼ摂取できていない可能性が高いわけです。
医師1,002人への「珈琲の有効成分とトリゴネリン」調査結果(PR TIMES掲載)はこちら
美容に興味のある方にとって、トリゴネリンが注目される理由は複数あります。まず、代謝そのものへの働きかけから見ていきましょう。
UCC上島珈琲の最新研究(2023年発表・薬理と治療誌掲載)では、コーヒー由来トリゴネリンを150mg含む食品を8週間継続摂取したグループで、BMI23〜30の方の安静時エネルギー消費量が有意に向上したことが確認されました。8週間でこれだけ差が出るというのは、意外ですね。
そのメカニズムは、白色脂肪細胞(脂肪を蓄積する細胞)がベージュ脂肪細胞(脂肪を燃焼してエネルギーを産生する細胞)へと変化することにあります。体のエネルギー代謝の約60〜70%は安静時のエネルギー消費によるものですので、この変化は美容・体型管理において非常に大きな意味を持ちます。
次に、ナイアシン(ビタミンB3)への変換という側面です。焙煎の過程でトリゴネリンの約半分がニコチン酸(ナイアシン)に変換されます。ナイアシンはビタミンB群の一種で、皮膚のバリア機能維持、肌の保湿力向上、エネルギー代謝の補助酵素として機能します。コーヒー1杯(150ml程度)に約0.5〜1.2mgのナイアシンが含まれていると報告されており、コーヒーは意外にもビタミンB3の供給源にもなっているのです。
また、トリゴネリンはNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体としても機能します。NAD+は細胞のエネルギー代謝、DNA修復、細胞老化の抑制に関わる補酵素で、加齢とともに体内レベルが著しく低下します。20代を100%とした場合、40代では約80%、60代では約50%、80代では約25%にまで低下するとされています。トリゴネリンがNAD+合成をサポートするという点は、アンチエイジングの観点から今後さらに研究が進む分野です。
これは使えそうです。
さらに、血管機能改善効果も美容と無縁ではありません。血流が改善されれば皮膚への栄養素の輸送が効率化し、肌のターンオーバーをサポートします。医師1,002人への調査では、トリゴネリンに「血管機能改善作用がある」と回答した割合が41.9%、「記憶力向上作用がある」が40.6%でした。美容と健康、両面への効果が期待できるということですね。
コーヒー由来トリゴネリンの作用メカニズム(ベージュ脂肪細胞への変換)についてのTarzan Web記事はこちら
ここまでの内容を踏まえると、「どんなコーヒーをどう飲めばいいのか」が見えてきます。ポイントを整理しましょう。
まず、豆の選び方から確認しましょう。焙煎度は浅煎り〜中煎りを優先することが基本です。浅煎りはトリゴネリンを50〜70%程度残しており、深煎りコーヒーの数倍の含有量になります。豆の種類では、前述の通りブラジル・サントスが生豆100gあたり約991mgと最も多く、次いでジャマイカ(約829mg)、キリマンジャロ(約743mg)の順です。
次に、インスタントコーヒーは避けることが重要です。製造過程の高温処理によって含有量が激減するため、トリゴネリン摂取を目的とするなら、豆から淹れたドリップコーヒーを選んでください。
抽出方法にも工夫の余地があります。
1日の摂取量の目安については、UCCの機能性表示食品での研究では1日150mgのトリゴネリン摂取(4杯分相当)が用いられています。ただし、一般的な浅煎りドリップコーヒー1杯に含まれるトリゴネリンは数十mg程度とされているため、毎日2〜4杯を継続することが現実的な目標です。
カフェインが気になる方へもよい知らせがあります。トリゴネリンはカフェインとは別の成分であるため、カフェインレスコーヒーでも同様に摂取できます。夜の美容タイムにも、カフェインレスの浅煎りコーヒーを選べば安心です。
また、近年は「トリゴネリン高含有」を明示したコーヒー製品も登場しています。例えば南蛮屋の低温炭火焙煎コーヒーは通常比約4倍以上のトリゴネリン濃度を謳っており、UCC「&Healthy スペシャルブレンド」(機能性表示食品)は一般的なコーヒーの1.5〜2倍のトリゴネリンを含むとされています。こうした製品を取り入れるのも、効率的な方法のひとつです。
一般にトリゴネリンの記事では「認知機能」「血糖値」「血管機能」の話に終始することが多いですが、美容に興味を持つ方にとって見逃せない角点があります。それは、口腔内環境への作用と、エストロゲン様作用の可能性です。
まず口腔内について。研究によれば、トリゴネリンには虫歯の原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)の歯面への付着を阻害する抗菌作用が報告されています。健康な歯と歯茎は、美しい笑顔を構成する大事な要素です。コーヒーは歯に着色するというデメリットが有名ですが、一方でトリゴネリンによる口腔衛生メリットもあるという、両面のある成分といえます。砂糖を入れないで飲むことが条件ですが、知っていると得する情報です。
次に、エストロゲン様作用(フィトエストロゲン活性)についてです。トリゴネリンには弱いエストロゲン様作用があるという研究報告があります。更年期以降の女性において、ホルモンバランスの変化によって肌の乾燥やハリの低下が起きやすくなりますが、フィトエストロゲンはそのような変化を緩やかにサポートする可能性が論じられています。ただし、この点についてはまだ動物実験レベルの知見が中心であり、大量摂取については現時点では慎重に考えるべきです。通常のコーヒー飲用量(1日3〜4杯)ではリスクの心配はほぼ不要とされていますが、ホルモン系の疾患がある方は医師に相談してから取り入れるのが安全です。
厳しいところですね。
2024年にNature Metabolism誌に掲載された国際共同研究(スイス・ネスレ研究所ら)では、トリゴネリンがサルコペニア(筋肉減少症)の患者で血中濃度が低いことが判明しました。筋肉の衰えは体型維持にも直結するため、30代以降の美容意識の高い方にとっては「筋肉を守る成分」という視点も無視できません。ちなみに、このサルコペニアの研究では筋力、歩行速度、筋肉量のいずれもトリゴネリン血中濃度との正の相関が確認されています。
健康と美容は表裏一体が基本です。
Nature Metabolism誌掲載研究をもとにしたトリゴネリンの筋肉機能改善・NAD+前駆体としての作用解説はこちら
トリゴネリン研究は、今まさに活発化している段階です。日本ではUCC上島珈琲が独自に研究開発を進め、2024年9月に日本初のコーヒー由来トリゴネリンを機能性関与成分とする機能性表示食品を発売しました。消費者庁への届出番号が取得されており、「BMIが高めの方の安静時エネルギー消費の向上をサポートする」という機能性が認められています。これが、科学的根拠のある初めてのコーヒー由来トリゴネリン機能性表示食品となりました。
国際的にも2024年はターニングポイントとなった年です。スイス・ネスレ研究所を中心とした国際研究チームがNature Metabolism誌に論文を発表し、高齢者の筋肉減少との関連および筋機能への効果を実証しました。これにより、欧米でも研究投資が加速しています。
現在進行中の主な研究テーマは以下の通りです。
今後5〜10年で大きな進展が見込まれる分野であり、美容・ヘルスケア領域での製品応用も広がっていくと考えられます。現時点でトリゴネリンをサプリメントとして単体で摂取する製品は日本ではまだ一般的ではありません。コーヒーから摂取するのが現実的かつ科学的根拠もある方法です。
安全性については、通常の飲用量(1日3〜4杯)においては副作用の報告はほぼなく、急性毒性も極めて低いとされています。ただし、妊娠中・授乳中の方や、ホルモン系・肝臓疾患の治療中の方は、念のため医師に相談してから取り入れることを推奨します。大量摂取でなく、日常のコーヒー習慣の見直し程度であれば問題ありません。
1日3〜4杯が条件です。
今日からできる第一歩は、「深煎りから浅煎りに変える」という単純なことです。それだけでトリゴネリンの摂取量は数倍変わります。インスタントをドリップに変える、水出しコーヒーを試してみるなど、少しずつ取り入れてみてください。毎朝の一杯が美容習慣のひとつになれば、続けること自体がハードルになりません。
トリゴネリンの効果・安全性・摂取方法を網羅した詳細解説記事はこちら

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