

市販の牛乳を毎日飲んでいても、ラクトフェリシンはほぼゼロしか摂れていません。
「ラクトフェリシン」という名前を初めて聞いた方も多いかもしれません。まず、よく知られている「ラクトフェリン」との違いから整理しましょう。
ラクトフェリンは、1939年に牛乳から発見された糖タンパク質で、母乳や涙・唾液・羊水にも含まれる自然免疫の中心的な成分です。「ラクト(乳)+フェリン(鉄)」という名前が示す通り、鉄と強く結合する性質を持ちます。
ラクトフェリシンは、そのラクトフェリンが胃の消化酵素「ペプシン」によって分解されるときに生じる抗菌ペプチドです。
1992年に初めて単離・同定されました。
牛由来の「LFcin B(25残基)」とヒト由来の「LFcin H(47残基)」の2種類があります。
つまり、ラクトフェリシンはラクトフェリンの"分解産物"です。
注目すべきは、その抗菌力の強さです。ラクトフェリシンは重量ベースでラクトフェリン本体の数十倍〜数百倍という強力な抗菌活性を示すことが腸内細菌学会などの研究で報告されています。ラクトフェリンはいわば「前駆体」であり、ラクトフェリシンは消化によって引き出される「活性化した武器」とも言える存在です。
大腸菌、クロストリジウム、カンジダなど多様な病原菌に作用しつつ、善玉菌であるビフィズス菌には抗菌作用を示さないという選択性の高さも大きな特徴です。
これが条件です。
腸内細菌学会 用語集「ラクトフェリシン(lactoferricin:LFcin)」▶ ラクトフェリシンの発見経緯・構造・抗菌メカニズムに関する学術的解説
「なぜ消化によって成分が生まれるの?」と思った方のために、もう少し詳しく仕組みを説明します。
ラクトフェリシンは、胃の中でペプシンがラクトフェリンのN末端(タンパク質の端の部分)を切り出すことで生成されます。この切り出された部分には塩基性アミノ酸が多く含まれており、それが強い抗菌力の源となっています。
最初は試験管内の実験で発見されましたが、のちにラクトフェリンを摂取したヒトや動物の胃内でも実際に生成されることが確認されています。
これは重要なポイントです。
つまりラクトフェリシンは、ラクトフェリンを口から摂取することで体内でも自然に作られるということです。
これが基本です。
ラクトフェリシンの抗菌のメカニズムは、大きく2段階で起こります。
ラクトフェリシンが活躍するのは腸の中だけではありません。消化管内での抗菌作用のほかに、抗酸化活性・抗炎症活性・免疫調節活性なども報告されており、複数の経路で体を守っています。
意外ですね。
コスモ・バイオ株式会社「II.機能編-5.抗菌作用」▶ ラクトフェリシンの分子構造・抗菌メカニズムの詳細な解説(北海道大学名誉教授 監修)
美容に関心がある方にとって、ラクトフェリシンが注目される最大の理由は「皮膚のマイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)への作用」にあります。
私たちの顔には約20種類もの皮膚常在菌が存在し、善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスが肌の状態を大きく左右しています。
これは使えそうです。
近年の研究では、このバランスを「黄金比率」に保つことが美肌の根本的な条件だとわかってきました。
ラクトフェリシンの注目されるスキンケア的特長は、次のような二重の働きです。
例えばニキビの原因として知られる「アクネ菌」。実は完全な悪玉菌ではなく、皮膚の常在菌バランスが整っていると、グリセリンなどの保湿成分を肌に供給する善玉の顔を持つ日和見菌です。ラクトフェリシンで皮膚常在菌の比率を整えることで、アクネ菌を「敵」から「味方」に変えられる可能性があるのです。
この考え方を活かして開発されたのが、ルーラー社の「マイクロバイオームミスト」です。母乳や羊水に含まれるラクトフェリシンの作用機序に着目し、クラウドファンディング開始から120時間で300万円を突破するほど注目を集めた製品で、スキンケアにラクトフェリシンを活用する動きが加速しています。
PRTIMES「新ブランドRULERのマイクロバイオームミスト」▶ ラクトフェリシンの作用機序に着目した新スキンケア商品の詳細
ラクトフェリシンの働きは美容だけにとどまりません。免疫と腸内環境への貢献も見逃せないポイントです。
まず腸内環境への効果です。腸の中では大腸菌・ウェルシュ菌・カンジダなどに対して強い抗菌力を発揮し、悪玉菌の増殖を抑えます。一方でビフィズス菌(善玉菌)に対しては抗菌作用を示さず、むしろ生育を促進するプレバイオティクスとして働きます。腸の中でも「味方を守り、敵だけを倒す」選択的な動き、これが条件です。
免疫調節という観点では、ラクトフェリシンはマクロファージや単球などの免疫細胞を活性化する作用も持っています。感染防御・抗炎症・抗酸化という複数の経路で免疫全体をサポートします。
さらに注目されているのが、抗腫瘍活性です。ラクトフェリシンは肺腺がん細胞・腸がん細胞などに対して増殖抑制・アポトーシス誘導(がん細胞の自己死)の効果を示すことが研究で報告されており、東京工科大学などでも継続的な研究が行われています(2025年〜2026年現在も研究中)。ただし、この段階ではあくまで研究レベルであり、医療的な治療として確立されているわけではありません。
あくまで研究段階です。
また、ラクトフェリシンには抗酸化活性もあります。活性酸素は肌の老化・シミ・くすみを加速させる大敵ですが、ラクトフェリシンはその除去にも関わります。美容成分としての可能性が非常に幅広いということです。つまり免疫・腸・美肌への三方面からの作用が期待できます。
日本ラクトフェリン学会ニュースレター▶ ラクトフェリンの抗がん作用・最新研究トピックスを確認できる
「牛乳を毎日飲んでいれば大丈夫では?」という疑問は自然です。しかし実はそうではなく、ここが多くの人がつまずくポイントです。
ラクトフェリシンの元となるラクトフェリン自体、熱に非常に弱い成分です。市販の牛乳は製造過程で60〜80℃前後の加熱殺菌処理が行われているため、その段階でラクトフェリンの大部分が変性・失活してしまいます。生乳500mlからようやく約100mgのラクトフェリンが取れる程度の希少成分なのに、さらに加熱で失われてしまいます。
痛いですね。
ヨーグルトについても同様の問題があります。市販のヨーグルトの原料である牛乳は加熱殺菌されているため、ラクトフェリンはほとんど含まれていません。一部の企業が「ラクトフェリン入りヨーグルト」として別途ラクトフェリンを添加した製品を販売していますが、そういった特定の機能性ヨーグルト以外では摂取はほぼ不可能です。
実際にラクトフェリンを300mg/日摂取しようとすると、低温殺菌牛乳を毎日1.5リットル飲まなくてはならないという計算になります。
現実的ではありません。
結論はサプリメント一択です。
食品から有効量を摂るのは現実的に難しいため、「サプリメントでの摂取」が最も効率的です。その際の選び方については次の章で解説します。
Varinos「ラクトフェリンが含まれる食品は何?効率的な摂取方法も紹介」▶ 食品中のラクトフェリン含有量と加熱による変性についての詳しい解説
ラクトフェリンのサプリメントには大きく「腸溶性」と「非腸溶性」の2種類があります。美容目的・美容と腸内環境の両立・腸内環境メインと、何を目的とするかによって最適な選択が変わります。
これが原則です。
| 種類 | 作用の場所 | ラクトフェリシン生成 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| ⚙️ 非腸溶性(胃で溶ける) | 胃〜腸 | ✅ 胃で生成される | 腸内環境改善・美容・免疫 |
| 💊 腸溶性(腸で溶ける) | 小腸〜大腸 | ❌ 胃では溶けない | 子宮内フローラ・腸の奥への作用 |
ポイントは、ラクトフェリシンを体内で生成したい場合は「非腸溶性」を選ぶという点です。なぜなら、ラクトフェリシンはペプシンという胃の消化酵素によって作られるため、腸溶性サプリでは胃を素通りしてしまい、ラクトフェリシンが生成されないからです。
一方で、妊活目的(子宮内フローラを整えたい)・腸の奥での直接作用を求めたい場合は腸溶性の方が有利とされています。
摂取タイミングについては、胃酸が少ない「食前か食後1時間以降」が効果的とされています。胃酸が多い状態だとラクトフェリン自体が分解されてしまうリスクがあるためです。
「食前か食後1時間以降」が基本です。
Varinos「ラクトフェリン 腸溶性と非腸溶性で効果の違いは?」▶ 腸溶性・非腸溶性の違いと使い分けについての詳しい解説
ラクトフェリシンは「飲む美容成分」だけでなく、近年は「塗る美容成分」としての展開も注目されています。
この視点は他の記事にはない独自の観点です。
ラクトフェリン本体の外用効果について、SarayaラクトフェリンラボはSarayaの実験データを公開しています。ラクトフェリンを肌細胞に塗布した実験では、次のような結果が報告されています。
ラクトフェリシンを外用で活用するアプローチは、先述のRULER社「マイクロバイオームミスト」のような形で実用化されつつあります。内側からのサプリメント摂取と、外側からのスキンケア製品の組み合わせは、美肌への相乗効果が期待できるという考え方です。
これは使えそうです。
外用スキンケアでラクトフェリシン成分を選ぶ際は「ラクトフォリン」「ラクトフェリシン」「ラクトフェリン」のいずれかが成分表示にあるか確認しましょう。
成分の有無を確認することが条件です。
SARAYAラクトフェリン研究所「ラクトフェリンとは」▶ ラクトフェリンを肌に塗布した際の美肌効果(コラーゲン・ヒアルロン酸・シワ・美白)の実験データ詳細
ここまでラクトフェリシンの魅力を紹介してきましたが、安全に活用するためにも注意点を押さえておきましょう。
ラクトフェリシンの元であるラクトフェリンは、母乳・羊水にも含まれる天然のタンパク質で、長い食経験を持ちます。動物実験による毒性試験・染色体異常試験などでも異常は認められておらず、現在のところ特段の副作用は報告されていません。
安全性は高めです。
ただし、以下の点には注意が必要です。
また、ラクトフェリンの過剰摂取は肝臓に負担をかける可能性も指摘されています。あくまでも適量を守って継続することが大切です。
正しく続けることが原則です。
健達ねっと「ラクトフェリンに副作用はある?肝臓への影響や機能を徹底解説!」▶ 副作用・摂取量・乳アレルギーへの注意点について
ここまでの内容を踏まえて、ラクトフェリシンを日常の美容・健康ケアに取り入れる際のポイントを整理します。
まず、ラクトフェリシンは「市販の牛乳・加熱乳製品」からはほぼ摂取できないという点を改めて確認してください。
サプリメントが最も現実的な摂取手段です。
サプリメントを選ぶ際は、目的に合わせて「腸溶性」か「非腸溶性」を選ぶことが重要です。腸内環境の改善・免疫サポート・体内でのラクトフェリシン生成を期待するなら非腸溶性、子宮内フローラを整えたい・小腸以下への直接作用を求めるなら腸溶性が向いています。
外用スキンケアでも、ラクトフェリシンの作用機序を活かした「マイクロバイオームケア型」の製品が登場しています。皮膚常在菌のバランスを整えることを重視する考え方は、従来の「殺菌・防腐」一辺倒のスキンケアとは一線を画しており、敏感肌・ニキビ肌・乾燥肌などで悩む方にとって新しい選択肢になります。
1992年の発見から30年以上が経過した今も、世界中の研究者がラクトフェリシンの可能性を追い続けています。抗がん研究・感染防御・美容・妊活と、幅広い分野での応用が期待される成分です。まだ知られていない効果も眠っているはずです。
いいことですね。
ラクトフェリシンとは何かを正しく理解し、自分の目的に合った形で賢く取り入れることが、美容と健康の両方を底上げする近道です。科学的な根拠のある成分を選ぶ目を持つことが、長期的なスキンケアへの投資として最も価値があります。
正しい知識を持つことが条件です。
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