

プレゴン pen(ピュルゴン)は、43歳の誕生日を迎えた翌周期から保険適用が一切なくなるため、タイミング一つで数十万円の差がつきます。
プレゴン pen(製品名:ピュルゴン/Puregon)は、MSD社が開発した遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモン(rFSH)製剤です。カートリッジ式のペン型注射器に薬液がセットされており、ダイヤルを回して投与量を1IU(国際単位)単位で調整できる設計になっています。国内で使用される主な規格は300IUと600IUの2種類で、クリニックの指示に従い選択されます。
注射針は一般的に30ゲージ(太さ約0.3mm)の極細タイプを使用します。これは、一般的な採血針(21ゲージ・約0.8mm)のおよそ3分の1以下の細さです。そのため、「針が怖くて自己注射なんて無理」と思っていた方でも、実際に試してみると「痛みをほとんど感じなかった」という体験談が多くあります。
プレゴン penが不妊治療で使われる目的は、主に次の2点です。卵巣を刺激して複数の卵胞を育てること(調節卵巣刺激)と、自然周期では育ちにくい卵胞の成長をサポートすること。体外受精や顕微授精の前には、この刺激によって採卵できる卵子数を増やすことが重要になります。
これが基本です。
まずここを押さえましょう。
同じFSH製剤にはゴナールエフ(EMD Serono社)やレコベル(Ferring社)、フォリスチム(MSD社)などがあります。プレゴン pen(ピュルゴン)はMSD社が製造しており、フォリスチムとは同一成分(フォリトロピン ベータ)を持ちます。クリニックや治療プロトコルによって使用する製剤が異なるため、処方された薬をそのまま使用することが原則です。
保険適用に関する最新情報はこちらで確認できます。
プレゴン pen(ピュルゴン)とゴナールエフは、どちらも遺伝子組換えFSH製剤ですが、含まれる有効成分が異なります。プレゴン penに含まれるのはフォリトロピン ベータ、ゴナールエフに含まれるのはフォリトロピン アルファです。どちらも排卵誘発の効果に大きな差はないとされていますが、個人の体質によって反応が異なる場合があります。
製剤の比較を整理すると次のようになります。
| 製剤名 | 主成分 | 特徴 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|
| プレゴン pen(ピュルゴン) | フォリトロピン ベータ | 300IU・600IU規格、ペン型で操作しやすい | OHSS、注射部位反応、腹部膨満 |
| ゴナールエフ | フォリトロピン アルファ | 150IU・300IU・450IUと規格が豊富 | 頭痛、腹部膨満、OHSS |
| レコベル | フォリトロピン デルタ | 体重・AMH値に基づき個別用量設定 | 発赤、倦怠感、腹部不快感 |
| フォリスチム | フォリトロピン ベータ | 欧米での使用実績が豊富 | 軽度の吐き気、注射部位の違和感 |
製剤の選択は医師が患者の年齢・AMH値・体重・過去の治療歴などを総合的に判断して行います。患者自身が「この製剤にしてほしい」と希望することは可能ですが、医師の判断を優先するのが安全です。
つまり「どれが一番いいか」という正解はなく、自分の体に合った製剤を医師と見つけることが原則です。
製剤ごとの詳細な副作用や使い方については以下を参照できます。
コウノトリ生殖医療センター「薬と副作用」ページ(注射薬一覧)
2022年4月から不妊治療が保険適用となり、プレゴン pen(ピュルゴン)を含む主要なFSH製剤も対象に加わりました。ただし、保険が使えるかどうかは複数の条件が重なっています。知らないと数十万円の損になるため、必ず確認しておきましょう。
最も重要な条件は次の通りです。
ここで注意が必要なのが「混合診療の禁止」です。保険適用の治療の途中に、保険外のオプション(特定の検査や最新技術など)を加えると、その周期の治療全体が自費扱いになるケースがあります。
これは見落とされがちなポイントです。
痛い出費につながる可能性があります。
保険適用の範囲を超えて自費診療に移行した場合、たとえばゴナールエフ450IUが1本で約2万8,000円〜4万3,000円程度(クリニックにより異なる)になります。1周期で複数本使用することが多いため、総額は大きく変わります。事前に「どこまでが保険で、どこからが自費か」をクリニックに確認しておくことが重要です。
出産後はカウント回数がリセットされます。
そこも覚えておけばOKです。
保険適用の条件や費用についての詳細はこちらを参照してください。
にしたんARTクリニック「不妊治療の保険適用の回数を超えたら?費用解説」
プレゴン pen(ピュルゴン)の薬液は、温度管理が非常に重要です。適切に保管しないと薬剤が変性し、排卵誘発の効果が大幅に低下する可能性があります。これは多くの方が「冷蔵庫に入れれば問題ない」と思いがちなポイントですが、実際は少し複雑です。
保管の基本ルールを整理すると次のようになります。
「使用開始後は室温保管できる」という点は意外に知られていません。毎回冷蔵庫から出して温度が下がるのを待つ必要はなく、使い始めたペンは室温管理で問題ありません。ただし、25℃を超える環境(特に夏場)では冷蔵保存を続けることを推奨します。
保管に関して注意が必要な場面は旅行・出張時です。保冷バッグと保冷剤を使って持ち運ぶ方が多いですが、保冷剤に直接触れさせると凍結してしまう恐れがあります。ペンを布やタオルで包んでから保冷剤の隣に置くのが安全な対処法です。不安な場合はクリニックに旅行用の持ち運び方法を事前に相談しましょう。
保管方法は必須の知識です。
薬の効果を守る第一歩になります。
プレゴン penによる自己注射は、手順をしっかり守ることで安全に実施できます。クリニックでの指導を受けた後、自宅でもスムーズに行えるよう、手順を整理しておきましょう。
注射前の準備物
注射手順(ステップ順)
ステップ8の「5〜10秒保持」は見逃されやすいポイントです。すぐに針を抜くと薬液が少量逆流して皮膚に残り、正確な投与量を確保できない場合があります。
必ず守りましょう。
注射部位は毎回少しずつずらすことが原則です。同じ場所に繰り返し刺すと皮下組織が硬くなり(皮下脂肪硬結)、痛みが増したり吸収効率が落ちたりします。左右のお腹を交互に使うルールを決めておくと管理しやすいです。
注射手順の動画解説はこちらで確認できます。
「自己注射は痛い」というイメージを持つ方は多いですが、いくつかのコツを実践するだけで痛みを大幅に抑えることができます。
正しい方法を知っておくことが大切です。
痛みを軽減するために有効なポイントをまとめました。
これらは一つでも実践するだけで効果を感じやすいです。
全部まとめて実践できれば理想的です。
「それでも怖い」という場合は、パートナーや家族に注射してもらう方法もあります。実際に打つ役割をパートナーが担うことで、精神的な負担が軽くなった、という体験談は少なくありません。クリニックでのレクチャーにパートナーも同席できるか確認してみましょう。
プレゴン pen(ピュルゴン)には、軽度のものから重篤なものまで複数の副作用が報告されています。副作用を事前に知っておくことで、異常の早期発見と適切な対処が可能になります。
| 副作用の種類 | 症状 | 重症度 | 対応方法 |
|---|---|---|---|
| 注射部位反応 | 赤み・腫れ・かゆみ・内出血 | 軽度 | 氷や冷湿布で冷やす。数日で自然に治まることが多い |
| 消化器症状 | 吐き気・腹部膨満・腹痛・下痢 | 軽〜中度 | 水分補給と休養。症状が続く場合は受診 |
| 頭痛・倦怠感 | 頭痛・疲れやすさ・気分のムラ | 軽〜中度 | 休養を取る。数日以上続くなら医師に相談 |
| OHSS(卵巣過剰刺激症候群) | 急激な体重増加・強い腹痛・お腹の張り・呼吸困難 | ⚠️ 重度の場合あり | すぐに医療機関を受診(入院が必要になる場合あり) |
| 血栓症(OHSSの重症化) | 足の痛み・むくみ・胸痛・息苦しさ | 🔴 緊急対応が必要 | 救急受診が必要な場合あり。医師に即連絡 |
最も注意すべきはOHSS(卵巣過剰刺激症候群)です。排卵誘発剤によって卵巣が過剰に刺激された状態で、卵巣が大きく腫れ、腹水や胸水がたまります。重症化すると腎不全や血栓塞栓症を引き起こす場合もあります。
OHSSになりやすいリスク因子がわかっています。若い女性、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)がある方、AMH値が高い方、過去にOHSSを経験した方は特に注意が必要です。厳しいところですが、これを知っておくだけで対応のスピードが変わります。
OHSSの初期サインとして「2〜3日で体重が2kg以上増えた」「お腹がパンパンに張る感覚がある」というケースが多く報告されています。この状態を「少しむくんだだけ」と放置するのは危険です。気になる症状があれば、翌日まで待たずにその日のうちにクリニックへ連絡しましょう。
OHSSの詳しいリスクと予防情報はこちら。
日本がん・生殖医療学会「ARTの現状」OHSS・薬物治療リスク解説
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)は、プレゴン penをはじめとするFSH製剤を使った排卵誘発治療において最も重要な合併症です。発症頻度は全体で約5〜10%とされており、そのうち重症化するのは約0.5〜2%程度とされています。
軽症のOHSSは「お腹の張り・軽い吐き気・体重が少し増えた」という症状にとどまり、安静と水分補給で自然に改善するケースが多いです。ところが中等症〜重症では入院管理が必要になり、腹水が大量にたまったり、最悪の場合は血液が濃縮されて血栓ができたりするリスクがあります。
OHSS発症のリスクが特に高い人の条件は次の通りです。
上記に当てはまる方は、医師と事前に相談して「GnRHアンタゴニスト法」の採用や「hCGトリガーの代替としてGnRHアゴニストを使う」などのOHSS予防プロトコルを確認しましょう。また、投与量を慎重に調整する「低刺激プロトコル」に変更するオプションもあります。
これが条件です。
日常でできるOHSS予防として、十分な水分補給(1日1.5〜2L以上の水・スポーツドリンク)と高タンパク食(卵・肉・豆腐など)の摂取が有効とされています。塩分の摂りすぎは腹水を増やす可能性があるため、採卵後から移植前にかけては注意が必要です。
プレゴン penがどのタイミングで使われるのかを、体外受精の典型的なスケジュールに沿って確認しましょう。治療の全体像を知っておくと、日程管理や生活調整がしやすくなります。
| 治療段階 | 期間の目安 | 内容 | プレゴン pen使用 |
|---|---|---|---|
| 前周期の準備 | 月経開始の1〜2週間前 | ピルなどで排卵を抑制し、卵巣の状態をリセット | ❌ 使用なし |
| 卵巣刺激期間 | 月経3日目〜約10日間 | プレゴン penによる自己注射を連日実施。超音波で卵胞の成長を確認しながら用量を調整 | ✅ メイン使用期間 |
| 卵胞成熟トリガー | 主席卵胞が18mm前後になったとき | hCG注射またはGnRHアゴニストで卵胞を最終成熟させる | ❌ 終了 |
| 採卵 | トリガーの約36〜38時間後 | 経腟超音波で卵子を採取 | ❌ 使用なし |
| 胚培養・凍結 | 採卵後5〜6日 | 受精・胚盤胞まで培養し凍結保存 | ❌ 使用なし |
| 凍結胚移植 | 別の周期で実施 | 子宮内膜を整え、解凍した胚を移植 | ❌ 使用なし |
プレゴン penを使用する「卵巣刺激期間」は通常7〜12日間です。この間は毎日決まった時間に自己注射を行い、2〜3日おきにクリニックで卵胞の大きさをチェックします。用量は卵胞の成長具合によって医師が都度調整するため、「昨日と今日で指示量が違う」ということがよくあります。
指示書を毎回確認する習慣をつけましょう。
卵巣刺激期間中の生活上の注意点として、激しい運動は避けることが推奨されています。卵巣が刺激によって腫大しているため、激しく体を動かすと卵巣捻転(ねじれ)のリスクが高まります。ウォーキング程度の軽い運動にとどめ、腹部を強く押さえる動作にも気をつけましょう。
プレゴン pen(ピュルゴン)には、使用してはいけない条件(禁忌)が明確に定められています。自己判断で使用することが絶対に避けるべき理由のひとつです。
次のいずれかに該当する場合は、使用が禁止されています。
また、甲状腺疾患・副腎疾患・プロラクチン産生腫瘍などがある場合は、先にそれらの治療が必要です。不妊の原因が子宮内膜症や子宮筋腫にある場合も、FSH製剤で単純に刺激するだけでは解決しないため、専門医による総合的な治療計画が必要になります。
禁忌事項への注意は安全な治療の大前提です。これを知らずに使うと健康上のリスクが高まります。
自己注射を開始する前に、必ず医師から「禁忌のチェック」を受けましょう。特に新しいクリニックに転院した場合や、過去の検査から期間が空いている場合は、再度の評価が必要です。
プレゴン penを使った排卵誘発中は、薬の効果を最大限に活かしながら副作用リスクを下げるため、日常生活でも意識すべき点があります。
これは見落とされがちな側面です。
食事についてはいくつかのポイントがあります。まず、タンパク質を積極的に摂ることが推奨されています。血中アルブミン(タンパク質の一種)が低い状態だと腹水が溜まりやすくなるため、1日に体重1kgあたり1〜1.5g程度のタンパク質(体重50kgなら50〜75g)を意識して摂りましょう。豆腐1丁(300g)に含まれるタンパク質は約15〜20gです。
卵1個は約6gです。
水分補給も非常に重要です。OHSS予防として1日1.5〜2リットルの水分摂取が推奨されており、カフェインの多いコーヒーや緑茶よりも、水・経口補水液・スポーツドリンクが適しています。
避けるべきことをまとめます。
市販薬について補足すると、イブプロフェンを含む鎮痛剤(イブA、バファリンルナなど)はNSAIDs系であり、排卵を妨げる可能性があると指摘されています。頭痛や生理痛など市販薬を使いたい場面がある場合は、必ず事前にクリニックに確認しましょう。アセトアミノフェン(タイレノールなど)は比較的安全とされていますが、これも自己判断は避けることが原則です。
プレゴン pen(ピュルゴン)を使った不妊治療の費用は、保険適用かどうかで大きく変わります。「大体いくらかかるのか」を事前に把握しておくことが、心理的にも経済的にも安心につながります。
保険適用の場合(3割負担を想定)の費用目安は次の通りです。
自費診療(保険適用外)の場合は費用が大幅に増加します。たとえばゴナールエフ450IU(1本・自費)が約2万8,000〜4万3,000円というクリニックの例があります。プレゴン pen600IUも同様の価格帯になることが多く、1周期で2〜3本使用するケースでは薬剤費だけで10万円を超えることもあります。
さらに、高額療養費制度を利用することで、保険診療における1か月の自己負担額に上限を設けることができます。年収約370万〜770万円の方なら、1か月あたりの上限は8万100円程度(医療費が26万7,000円を超えた場合に適用)です。複数の治療ステップが同月にまとまる場合は、申請することで還付を受けられます。
これは使える制度です。
高額療養費制度の詳しい仕組みは以下で確認できます。
厚生労働省「不妊治療に関する支援について」(助成金・制度一覧付き)
プレゴン penなどのFSH製剤を使った不妊治療と、鍼灸や漢方などの東洋医学的アプローチを並行して行うことの有効性について、近年研究が進んでいます。「医療的な不妊治療と代替療法は相反する」と思われがちですが、実際には補完的に機能するケースが報告されています。
代表的な研究として、体外受精(IVF)と胚移植の周期に鍼灸を組み合わせた群は、鍼灸を受けなかった群と比較して妊娠率が高かったとする研究が複数あります。ただし研究の品質にバラツキがあるため、現時点では「鍼灸が妊娠率を確実に上げる」と断言することはできません。
意外ですね。
とはいえ、鍼灸が「子宮血流を改善する」「自律神経のバランスを整える」「ストレスを軽減する」という作用は複数の研究で確認されています。プレゴン penによる排卵誘発中はホルモン変動による精神的ストレスが大きいため、ストレス緩和という観点から鍼灸を活用するのは合理的な選択肢です。
ただし、注意が必要な点があります。鍼灸・漢方の治療を行う場合は、必ず主治医(不妊治療クリニックの担当医)に事前に相談してください。漢方薬の中には子宮収縮を促すものや、ホルモン様作用を持つ成分が含まれるものもあり、FSH製剤との干渉が生じる可能性があります。併用できるかどうかは医師の判断を仰ぐことが条件です。
鍼灸院や漢方専門家を選ぶ際は、不妊治療に特化した実績があり、西洋医学との連携を前提とした施術者を選ぶことを推奨します。「不妊専門の鍼灸」「生殖補助医療との協調」を明示しているかどうかがひとつの目安になります。