

あなたの愛猫がキャットニップにスリスリしているのは、実は"蚊よけコスメ"を自分の体に塗っているのと同じ行動です。
ネペタラクトンは、キャットニップ(学名:Nepeta cataria、和名:イヌハッカ)から単離された天然の有機化合物で、1941年にはじめて水蒸気蒸留によって取り出されました。化学的には「二環性テルペノイド」の一種であり、「イリドイド」と呼ばれる化合物群に属しています。炭素10個から骨格が形成されており、シクロペンタン部と環状エステル(ラクトン)部分からなる構造を持ちます。
名前の由来は少し意外なところにあります。イタリアの古都「ネーピ(Nepi)」の古名「ネペテ(Nepete)」にちなんで命名されており、地名が化合物の名前に組み込まれた珍しいケースです。
つまり「猫が好む成分」ということですね。
キャットニップには複数の立体異性体(形が鏡像のように異なる分子)が存在します。猫に特徴的な反応を引き起こすのは主に「(4aα,7α,7aα)-ネペタラクトン」という立体型であり、その両方のエナンチオマー(鏡像異性体)がともに効果を持つことが科学的に確認されています。
美容に興味のある方にとってこのトピックが面白いのは、この化合物が「天然由来の植物成分」として機能し、化学合成品に頼らない自然なケアの文脈でも語られることが増えているからです。ハーブや植物由来エキスへの関心が高まる昨今、ネペタラクトンはその代表的な研究対象となっています。
参考情報:ネペタラクトンの化学構造や立体異性体について詳しく解説されています。
ネペタラクトンの香りが猫の鼻に入ると、嗅上皮でこの分子との相互作用が起き、脳内に一連の化学反応が連鎖します。その結果として体内で急上昇するのが「βエンドルフィン」です。
βエンドルフィンは、脳内で合成される内因性オピオイドペプチドの一種で、「脳内麻薬」とも呼ばれることがある物質。痛みを和らげ、強い幸福感と多幸感をもたらします。人間で言えば、激しい運動の後に感じる「ランナーズハイ」の状態に近い化学変化です。
これが原則です。「猫がキャットニップで酔ったような行動をとる=βエンドルフィンが大量分泌されている」という状態を指します。
具体的な反応としては、葉をなめる・噛む・顔や頭をこすりつける・地面にゴロゴロ転がるといった「マタタビ踊り」と呼ばれる行動が観察されます。この反応は猫がはじめてキャットニップに出会った時でも同様に現れるため、学習行動ではなく、本能として組み込まれた嗅覚反応です。
注目すべき点は、キャットニップの成分ネペタラクトンが、マタタビに含まれる成分「ネペタラクトール」と非常によく似た化学構造を持ちながら、別の化合物であるという事実です。マタタビ反応を示す猫の一部はキャットニップには反応しないケースもあり、その逆もあります。飼い猫がどちらに反応するかは、個体ごとに異なります。
このメカニズムへの理解は、美容・健康への応用面でも興味深い示唆を与えてくれます。植物由来の天然成分が、動物の脳内で特定のホルモン放出を促すという事実は、人間向けのアロマテラピーやフィトケア(植物ケア)の研究とも重なるテーマです。
参考情報:ネペタラクトールとネペタラクトンの作用の違い、βエンドルフィン濃度変化について研究内容が解説されています。
マタタビは猫に危険?キャットニップとの違いは? - tamaone
「うちの猫はキャットニップに全く無反応」という経験をお持ちの飼い主さんは少なくありません。
これは意外ですね。
実は、猫全体の約25〜33%はネペタラクトンに対して反応する遺伝子を持っていないのです。
1960年代の研究では「約30%の猫はマタタビやキャットニップに反応しない」と報告されています。この反応の有無は優性(顕性)遺伝によるもので、両親のどちらかから反応遺伝子を受け継いでいれば反応し、受け継いでいなければどれだけ上質なキャットニップを与えても無反応です。
遺伝が条件です。
さらに月齢も関係します。生後6ヶ月未満の子猫は、遺伝子を持っていても反応しないのが一般的です。これは性成熟に関わる神経回路の発達とネペタラクトン感受性が連動しているためと考えられています。仔猫の頃に反応しなくても、成猫になってから突然反応するようになるケースも報告されています。
また、トラは十数種のネコ科動物の中で唯一、マタタビやキャットニップに反応しないことが分かっています。ライオン、ヒョウ、ジャガー、チーターなどは明確な反応を示すのにもかかわらず、トラだけは例外です。なぜトラだけが異なるのかは現在も研究中です。
この遺伝的なばらつきを知っておくことで、「反応しない=体の異常」という誤解を防ぐことができます。猫の個体差を正しく理解することは、飼い主として愛猫のストレスケアを適切に行う上でも重要な知識です。
ネペタラクトンをめぐる研究で最も衝撃的な発見のひとつが、2021年1月に岩手大学・名古屋大学・京都大学らの日英共同研究チームが発表した論文です。世界的な科学誌『Science Advances』に掲載されたこの研究は、「猫がマタタビやキャットニップに体をこすりつける行動の本当の理由」を初めて科学的に解明しました。
その答えは「蚊よけのため」でした。
これは使えそうです。
研究チームは、マタタビ・キャットニップの成分(ネペタラクトールおよびネペタラクトン)を猫の頭部に塗布した後、蚊30匹を放つ実験を実施。その結果、成分を塗布した猫への蚊の吸着数が明らかに減少しました。ネコ科の動物は1000万年以上前から祖先が持ち続けてきたこの本能行動を通じて、天然の虫よけを体に自ら塗り込んでいたのです。
ネペタラクトンとネペタラクトールの蚊への忌避効果は、農薬や化学合成の虫除けとしても広く使われるDEET(ディート)と同等程度の効果を持つと岩手大学の技術説明資料では述べられています。さらに植物由来の天然成分であるため、毒性が低く、環境への負荷も小さいという利点もあります。
この発見は美容や健康ケアへの関心が高い方にとっても見逃せないポイントです。天然ハーブ由来の成分が従来の化学合成品と同等の虫よけ効果を持つ可能性が示されたことは、オーガニックコスメやナチュラルスキンケアの分野にも影響を与えうる研究です。ネペタラクトン・ネペタラクトールを活用した人間用の新型虫除けスプレー開発に向けた研究も既にスタートしています。
参考情報:研究の発見の経緯と蚊への忌避効果の詳細が解説されています。
数百年の疑問,ついに解決!「ネコにマタタビ」解明への道〈前編〉 - BuNa
参考情報:京都大学によるプレスリリースで、蚊の忌避剤としての将来的応用可能性について言及されています。
マタタビ反応はネコが蚊を忌避するための行動だった - 京都大学
猫がキャットニップに体をこすりつける行動は、単なる「気持ちよさからの行動」ではありませんでした。
これが基本です。
進化生物学的な視点から見ると、この行動はネコ科の祖先が1000万年以上前から受け継いできた「化学防御行動」であることが分かっています。
イエネコとライオンやジャガーなど大型ネコ科動物が別々の進化の道を歩み始めたのは、およそ1000万〜1500万年前のことです。それにもかかわらず、どちらもキャットニップやマタタビのにおいに対して同一の行動パターンを示す。これは、共通の祖先からこの遺伝子と本能が脈々と受け継がれてきた証です。
野生動物の世界では、化学防御を使う動物は珍しくありません。南米のオマキザルは柑橘類の果実の皮を体にこすりつけて虫よけに利用し、ハナジロハナグマも同様の行動が確認されています。
猫もその系譜に連なる生き物です。
この事実が示すのは、植物に含まれる天然化合物の力の深さです。ネペタラクトンという一つの分子が、猫の神経系に作用して幸福感をもたらすと同時に、蚊という病原体の媒介者を遠ざける二重の役割を果たしています。この「多機能性」こそが、天然植物成分への注目が増している現代の美容・ウェルネスシーンと重なる部分です。
ゴキブリやハエなど他の昆虫への作用も報告されており、ゴキブリには忌避剤として、ハエには有毒に、アブラムシにはフェロモンとして働くことが確認されています。ひとつの化合物がこれほど多様な昆虫に対して異なる作用をするという点は、自然界の精緻さを改めて感じさせてくれます。
ネペタラクトンを含むキャットニップは、猫のストレスケアとして適切に活用できる自然由来のツールです。βエンドルフィンの分泌を促す作用により、引っ越し後の不安、来客時の緊張、新しい環境への適応などで強いストレスを受けた猫の気持ちをほぐすサポートが期待できます。
ストレスが原因で脱毛・軟便・食欲不振が見られる猫には、原因イベント(動物病院・雷・来客など)の後に少量を使ってみる方法が飼育の現場では有効とされています。キャットニップを噛む行動でネペタラクトンの放出量が増えるため、ドライハーブをおもちゃに詰めたタイプのグッズが特に効果的です。
注意が必要なのは与えすぎです。ネペタラクトンに依存性はないものの、過剰に与えると猫が興奮状態になりすぎて、思わぬ怪我や他の猫とのケンカに発展するリスクがあります。週1〜2回、ひとつまみ(粉末なら約0.5g以下)を目安にするのが原則です。
生後6ヶ月未満の子猫、妊娠中のメス猫、腎疾患や心疾患を持つシニア猫への使用は獣医師に相談してから与えることをおすすめします。
これは必須です。
猫用キャットニップのグッズとして、ドライハーブ入りのおもちゃやスプレータイプの製品が市販されています。スプレータイプはキャリーバッグや新しいベッドへのなじみをよくする目的でも使われており、ストレス管理ツールとして多くの飼い主に活用されています。
キャットニップを与えた時の反応には、「終わり時間」があります。猫が激しく反応するのは通常10〜15分程度で、その後は急に興味をなくして離れていきます。これは猫の体に備わった「リセット機能」によるものです。
この終息のメカニズムとして有力なのは、嗅上皮の一時的な脱感作(受容体が一時的に刺激に反応しなくなること)です。ネペタラクトンに反応する受容体が一時的に「休憩状態」に入ることで、猫は自然に反応を終えます。
意外ですね。再び同じ猫にキャットニップを与えても、通常30分〜2時間程度は反応しません。体が完全にリセットされるまでの「クールダウン時間」が必要なのです。
この「リセット性」があるからこそ、キャットニップは依存性を持たないと評価されています。人間が使う化学合成の鎮痛剤や安定剤は繰り返し使用による依存のリスクがありますが、ネペタラクトンはその心配がほとんどないとされています。この点は、天然植物成分の安全性のひとつの指標として注目されます。
実際の使用場面では、この「10〜15分という有効時間」を知っておくと便利です。例えば、動物病院の前にキャリーバッグにキャットニップスプレーを使っておくことで、診察直前のリラックス効果を狙うことが可能です。
「キャットニップ=マタタビ」と混同している方も多いですが、この2つは全く別の植物であり、有効成分も異なります。
これが原則です。
マタタビ(学名:Actinidia polygama)はマタタビ科の木本植物で日本や朝鮮半島に自生する植物です。一方、キャットニップ(Nepeta cataria)はシソ科イヌハッカ属のハーブでヨーロッパ原産の多年草です。日本では「イヌハッカ」「キャットミント」「西洋マタタビ」とも呼ばれています。
有効成分に着目すると、マタタビには「ネペタラクトール」という成分が主成分として含まれており、キャットニップには「ネペタラクトン」という、構造がよく似ているが別の化合物が含まれています。
名前も紛らわしいですね。
岩手大学の研究チームによると、キャットニップ中では生成されたネペタラクトールがすぐにネペタラクトンへ変換されてしまうため、キャットニップからネペタラクトールはほとんど検出されません。一方、マタタビはネペタラクトールが豊富で、葉の中に他のイリドイド化合物より10倍以上多く含まれることが確認されています。
飼い猫がマタタビに無反応の場合はキャットニップを、またその逆も試してみる価値があります。それぞれ反応する猫が異なる場合があるからです。市販品を選ぶ際は、ネペタラクトールが検出されない市販マタタビパウダーも存在するという研究報告もあるため、オーガニック認証や産地明示のある信頼性の高い製品を選ぶことが健康ケアの観点からも重要です。
参考情報:キャットニップとマタタビの成分の違い、ネペタラクトールとネペタラクトンの研究解説が詳細に記されています。
ネコのマタタビ反応とイリドイド化合物について - 化学と生物(日本農芸化学会)
ネペタラクトンは猫以外の生物にも様々な影響を与えます。
意外ですね。
人間に対しては毒性が低く、過去にはハーブとして鎮静剤・鎮痙剤・解熱剤として弱い効果を持つことが報告されていました。ただし多量に摂取すると嘔吐を引き起こす可能性があります。
ヨーロッパでは中世から近代にかけて、キャットニップは人間用のハーブ茶として風邪の予防や喉の痛みに用いられていた歴史があります。現在でも一部のハーブショップではリラックス効果のあるハーブティーとして販売されています。
ただし、人間への鎮静効果は猫に対する作用と比べると非常に弱く、劇的な変化は期待できません。
これだけ覚えておけばOKです。
昆虫への影響はより多様です。ゴキブリや蚊には忌避剤として機能し、ハエには有毒成分として作用します。一方アブラムシにとってはフェロモンとして機能するという、非常に複雑な多面的作用を持っています。
この昆虫への多様な作用特性から、ネペタラクトンは農業や衛生管理の分野での応用も研究が進んでいます。特に植物由来の成分として環境負荷が低い点が、オーガニック農法や持続可能な害虫管理への活用において注目されています。美容や健康に関心の高い方が求める「環境に優しい成分」というニーズとも合致する要素です。
岩手大学が2021年の技術説明会で発表した内容によると、ネペタラクトールを活用した昆虫忌避剤・殺虫剤の開発が始まっています。
これは使えそうです。
従来の化学合成虫除けといえばDEET(ジエチルトルアミド)が代名詞でした。しかしDEETは神経系への影響を指摘する声もあり、子どもや肌が敏感な人への使用を避ける傾向があります。
また環境への残留についても議論があります。
そこへ登場したのがマタタビ由来の天然成分「ネペタラクトール」です。DEETと同等程度の虫除け効果を持ちながら、植物由来で毒性が低いという特性は、オーガニック志向の強いスキンケアや虫除けコスメ市場へ大きな可能性を示しています。
現時点ではまだ実用化には至っていませんが、天然成分を配合した虫除けコスメへの関心が高まる中で、ネペタラクトン・ネペタラクトールの研究は確実に前進しています。将来的には「猫が自ら体に塗る蚊よけ成分」が、人間用のオーガニック虫除けスプレーとして棚に並ぶ日が来るかもしれません。
美容や自然派ケアに関心のある方にとって、こうした植物化学の最前線を知っておくことは、商品選びや成分理解において大きな武器になります。キャットニップや天然由来の虫除け成分が配合されたスキンケア商品を選ぶ際、「ネペタラクトン由来」という表示を見かけたら、その背後にある研究の深さを思い出してみてください。
参考情報:ネペタラクトールの蚊忌避・殺虫効果の研究と、DEET同等効果・植物由来の特徴が説明されています。
マタタビ抽出物による昆虫忌避剤・殺虫剤 - JST技術説明会資料(岩手大学)
ネペタラクトンを含むキャットニップは基本的に猫にとって安全な成分ですが、すべての猫に一律に与えてよいわけではありません。
リスク管理が条件です。
以下の状態にある猫への使用は慎重に行い、できれば獣医師への相談を事前に済ませておくことをおすすめします。
与え方の目安として、粉末タイプならひとつまみ(約0.5g以下)、週1〜2回程度が適量です。過剰摂取による中毒事例の報告はほとんどないものの、強い興奮状態が続いた場合は使用を中止し、様子を観察してください。
また、市販のマタタビ製品の中にはネペタラクトールがほとんど含まれない粗悪品も存在することが研究で報告されています。
これは注意が必要です。
購入の際は信頼できるブランドや成分表示が明確な製品を選ぶことが、愛猫の健康と費用対効果の両面から重要です。
「猫にマタタビ」という表現は日本語の慣用句として定着していますが、その歴史は思いのほか古いものです。今から約300年以上前、江戸時代の農学者・貝原益軒が著した農業指南書「菜譜」に「またたび、猫このんで食す」という記述が残っています。同じ時代に描かれた浮世絵「猫鼠合戦」(月岡芳年作)にも、ネズミがマタタビで猫を酔わせる場面が描かれており、当時から広く知られた現象でした。
欧米でもキャットニップに対する猫の反応は、今から250年前にイギリスの植物学者によって記録されています。科学的なアプローチが始まったのは1950〜70年代で、日本の大阪市立大学の目武雄教授グループがマタタビから複数のイリドイド化合物「マタタビラクトン」を単離・命名しました。
これが原点です。
しかし長い間「なぜ猫が反応するのか」の生物学的意義は謎のままでした。2013年、名古屋大学の西川俊夫教授と岩手大学の宮崎雅雄教授が「なぜネコ科動物だけがマタタビに特異な反応を示すのか」という問いを共有し、共同研究をスタート。2021年、その答えが「蚊よけのための本能行動」として世界に発表されました。
約300年の「謎」が科学によって解かれた瞬間でした。
いいことですね。
そしてこの発見は、植物化学・動物行動学・香気成分研究・虫除け開発という複数の分野にまたがる革新的な知見として今も研究が続いています。
参考情報:研究の発端から2021年の発見に至るまでの経緯が詳しく解説されています。
数百年の疑問,ついに解決!「ネコにマタタビ」解明への道〈前編〉 - BuNa
美容や自然派ケアに関心のある方は、植物由来成分の力を日常に取り入れることへの意識が高い傾向があります。その視点を愛猫のケアにも広げてみると、ネペタラクトンは非常に興味深い存在です。
まず実践としておすすめなのは、キャットニップを使ったストレスケアの取り入れ方を知ることです。
以下に整理します。
これらを実践する際の選び方として、オーガニック認証を取得したキャットニップ製品を選ぶことが重要です。前述のとおり、市販品の中にはネペタラクトール・ネペタラクトンをほとんど含まない製品も存在します。成分の品質にこだわる方は、産地や栽培方法の透明性が高いブランドを選ぶことをおすすめします。
美容と健康に敏感な方が愛猫を大切にする方法は、ただエサを与えるだけでなく、植物由来の自然な力をケアに取り入れることでもあります。ネペタラクトンという一つの化合物が教えてくれるのは、自然界の知恵の深さです。
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