

クロレラエキスを飲むサプリより、塗る化粧品のほうが肌のしわに直接効く場合があります。
クロレラエキスとは、淡水性の単細胞緑藻「クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)」から水で抽出したエキスのことです。約20億年前から地球上に存在するとされる、非常に歴史の古い生命体を原料としています。
化粧品成分としてのクロレラエキスには、グルタミン酸・アルギニン・アラニンをはじめとする14種類以上のアミノ酸、デンプン・β-グルカンなどの多糖類、ビタミンCに相当するアスコルビン酸、そしてクロロフィルが含まれています。これらが協調して働くことで、肌に複合的なアプローチが可能になります。
保湿効果については、具体的な試験データが存在します。化粧品原料メーカー・一丸ファルコスが実施した試験では、3%クロレラエキス(熱水抽出)配合乳液を3ヶ月間にわたって使用した結果、被検者20名中15名が「有効(湿疹・かゆみ・乾燥肌・肌荒れが改善)」、4名が「やや有効」と判定されました。一方、クロレラエキス未配合の乳液では、20名中「有効」はゼロ件でした。
つまり、配合あり・なしで結果に明らかな差が生じたということです。
クロレラエキスに含まれる多糖類(特にβ-グルカン)は、水分を保持する能力が高く、肌の角質層に浸透することで乾燥バリアを強化する仕組みが確認されています。肌のバリア機能の強化は「外からの刺激を受けにくくなる」という二次的なメリットにもつながります。
乾燥しがちな季節や、敏感に傾いた肌のケアを検討しているなら、クロレラエキス配合のスキンケアを選ぶ価値があります。保湿に注力すれば大丈夫です。
化粧品成分オンライン「クロレラエキスの基本情報・配合目的・安全性」(ヒト使用試験データ・成分組成など詳細な根拠情報が掲載)
クロレラエキスのアンチエイジング効果については、日本最大手の化粧品メーカーである資生堂が注目するほどの研究結果があります。意外ですね。
資生堂はアメリカ・ボストンのMGH/ハーバード皮膚科学研究所(CBRC)との共同研究で、紫外線が原因でしわが形成されるプロセスに「異常な毛細血管の増加(しわ血管)」が関与することを世界で初めて発見しました。そして、300種以上の天然成分を比較検討した結果、「クロレラエキス」がこの「しわ血管」を抑制する効果を持つことを突き止めたのです。
メカニズムを簡単に説明すると、こうなります。
通常の肌では血管増殖を抑える因子「TSP-1」が優位に働いています。ところが紫外線を日常的に受け続けると、逆に血管を増殖させる因子「VEGF」が活発になり、TSP-1の働きが低下してしまいます。このバランスの崩れが「しわ血管」を生み、血管を通じてコラーゲンを分解する酵素(エラスターゼ)を産生する細胞が皮膚内に蓄積し、最終的にしわが刻まれていくのです。
クロレラエキスはVEGF優位の状態をTSP-1優位の状態に戻す作用があることが確認されています。結論は「光老化によるしわを根元から抑える可能性がある」ということです。
さらに、株式会社サン・クロレラと札幌皮膚科クリニックが実施した臨床試験(二重盲検プラセボ対照比較試験)では、35〜55歳の女性42名を対象に、クロレラエキス配合クリームを8週間(朝晩1日2回)塗布したところ、プラセボ群(未配合クリーム)と比べて小じわグレードが有意に改善し、皮膚レプリカ解析でもしわの個数が有意に減少しました。これは使えそうです。
また、クロレラに含まれるクロロフィルには、DPPHラジカル消去活性(フリーラジカルを無害化するはたらき)が確認されており、肌の酸化ダメージ(くすみや色ムラの原因)を軽減する抗酸化作用も期待されています。紫外線対策との組み合わせで、さらなる相乗効果が生まれると考えられています。
資生堂プレスリリース「クロレラエキスがしわ血管抑制に有効」(MHG/ハーバード皮膚科学研究所との共同研究結果)
クロレラエキスは「肌の保湿」や「しわ改善」のイメージが先行しがちですが、実は近年の皮膚科学研究で「皮膚マイクロバイオーム調整成分」としての役割も注目を集めています。
皮膚マイクロバイオームとは、肌の表面に生息する細菌・真菌などの微生物の生態系のことです。腸内フローラと同様に、善玉菌と悪玉菌のバランスが保たれることで、肌のバリア機能が機能し、外敵の侵入や炎症を防いでいます。このバランスが崩れると、ニキビ・赤ら顔(酒さ)・慢性的な肌荒れなど、さまざまなトラブルの引き金になることが分かっています。
クロレラエキス(特にクロレラの細胞壁成分を精製したもの)は、プレバイオティクスとして機能します。プレバイオティクスとは、善玉菌の「エサ」となって菌の繁殖を促す素材のことです。腸活で知られる考え方ですが、スキンケアにも同じ発想が広がっています。
医学博士・高岡幸二氏(元神戸大学バイオシグナル研究員)が解説した情報によると、このタイプのクロレラエキスには次の効果が期待されています。
注意したい点が一つあります。「クロレラエキス」と表示されている製品の中には、マイクロバイオームケアを意図したプレバイオティクス型のものと、一般的な保湿目的のものが混在しています。購入時には「マイクロバイオームケア」「プレバイオティクス」「菌活成分」などのキーワードが商品説明に記載されているかを確認してみてください。それが基本です。
有限会社DSR・医学博士 高岡幸二氏「酒さ治療の最新研究とクロレラエキスde菌活スキンケア」(皮膚マイクロバイオームとクロレラエキスの関係を専門的に解説)
クロレラエキスのアンチエイジング効果を語るうえで、「線維芽細胞(せんいがさいぼう)への作用」は見逃せないポイントです。
線維芽細胞は真皮層に存在する細胞で、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった肌の弾力や潤いを支える成分を産生する「工場」のような役割を持っています。真皮の約70%はコラーゲンで構成されていますが、このコラーゲンをつくっているのがまさに線維芽細胞です。20代をピークに線維芽細胞の活動は低下していくため、ハリ感が失われていくのは自然な現象ではあります。厳しいところですね。
クロレラエキスには「線維芽細胞の増殖促進」および「代謝活性促進」の作用があることが報告されています。これは「細胞賦活(さいぼうふかつ)作用」とも呼ばれる効果で、休眠しかけた線維芽細胞を刺激し、コラーゲン産生を維持・向上させる方向に働くものです。
さらに注目すべきは「脂肪分解促進(リパーゼ活性化)」と「メラニン生成抑制(チロシナーゼ阻害)」も確認されていることです。
| 作用 | 期待できる美容効果 |
|------|----------------|
| 線維芽細胞増殖促進 | 肌のハリ・弾力の維持 |
| 代謝活性促進 | くすみ軽減・肌ターンオーバー促進 |
| 脂肪分解促進(リパーゼ活性化) | フェイスラインのもたつきケア |
| メラニン生成抑制(チロシナーゼ阻害) | 美白・シミ・くすみ予防 |
| 角質水分量増加 | 乾燥・小じわの予防 |
メラニン生成抑制については、チロシナーゼという酵素の働きを阻害することでメラニンの産生そのものをブロックする仕組みです。紫外線を浴びた後のシミ予防として、日常的なスキンケアに組み込みやすい成分と言えます。
クロレラエキス配合クリームを0.2%の濃度で28日間使用した試験では、肌のハリ・弾力の改善が見られたという報告もあります。28日間という期間は約1ヶ月、日常的なスキンケアのサイクルの中で実感できる速さです。
これらの多機能な作用を一つの成分でカバーできる点が、クロレラエキスが今注目される理由の一つです。これは使えそうです。
ローザ特殊化粧料(化粧品責任技術者監修)「クロレラエキス配合で美肌効果UP!肌水分量増加や脂肪分解促進にも期待」(各種作用の一覧と解説)
クロレラエキスの効果を最大限に引き出すためには、「配合濃度・抽出方法・組み合わせ成分」の3点が重要です。意外ですね。
まず、配合濃度の話をします。前述の試験では3%配合(乳液)や5%配合(ヘアトニック)での有効性が示されていました。しかし市販の化粧品では、クロレラエキスが成分リストに記載されていても、実際の配合量が非常に少ないケースがあります。日本の化粧品成分は配合量の多い順に表示されますが(ただし1%以下の成分は順不同)、クロレラエキスがリストの後半に小さく記載されている製品では、得られる効果も限定的になる可能性があります。
次に、抽出方法についてです。クロレラエキスには「熱水抽出」「水抽出」「トリプシン処理後加熱処理」など複数の製造方法があり、どの方法で作られたかによって含まれる有効成分の種類と量に差が生じます。特にアレルギーが心配な方や敏感肌の方には、アレルギー原因となりやすいタンパク質をあらかじめ除去したタイプ(細胞壁精製型)の方が適しています。
もう一つ知っておきたいのが、サプリメントとしてクロレラを飲む場合の注意点です。クロレラにはクロロフィルが豊富に含まれており、クロロフィルは光に反応する性質があるため、経口摂取時に肌が紫外線に対して敏感になる「光感作」のリスクが指摘されています。つまり「美肌のためにクロレラサプリを飲む → 外出したら日焼けしやすくなっていた」という逆効果のシナリオが考えられます。
また、クロレラエキスは単体で使うよりも、他の成分と組み合わせることで相乗効果を発揮する場合があります。代表的な組み合わせ例として、「アロエベラ葉エキス+クズ根エキス+クロレラエキス」の混合原料(バイオアンテージB)が知られており、メラニン生成抑制・経表皮水分蒸散抑制・線維芽細胞増殖促進といったプラセンタ様の複合作用を意図して設計されています。
クロレラエキス配合製品を選ぶ際は、単に成分表に名前があるだけでなく「どんな目的で、どのくらいの濃度で配合されているか」を調べてみることが、賢い選択への近道です。製品の紹介ページや成分解説ページを確認するのが一番手軽です。