減衰器計算dB基礎から応用まで抵抗値設計ガイド

減衰器計算dB基礎から応用まで抵抗値設計ガイド

減衰器計算dB設計の基礎

減衰器計算の重要ポイント
📊
デシベル計算の基本

電力・電圧比を対数で表現する重要な単位

抵抗値設計方法

π型・T型回路構成による適切な抵抗組み合わせ

🔧
インピーダンス整合

50Ωシステムでの安定動作実現

減衰器におけるdBの基本計算式

減衰器の計算において、デシベル(dB)は信号レベルの減衰量を表す最も重要な単位です 。電力比での計算では「Gp(dB)= 10 × log₁₀(Po/Pi)」、電圧比では「Gv(dB)= 20 × log₁₀(Vo/Vi)」という基本式を使用します 。これらの公式により、大きな数値も小さなdB値で表現でき、計算が格段に簡単になります 。
参考)デシベル計算

 

実際の計算では、例えば13dBの減衰器を使用した場合、パワーは約1/20に減衰します 。この計算は「10^(-13/10) = 0.05」となり、元の信号の5%まで減衰することを意味します 。逆算する場合は、必要な減衰量から対応するdB値を求められます 。
参考)dBの計算で質問です。 - たとえば13dBの減衰器をつけた…

 

dBの計算で重要なのは、3dBで約2倍(または1/2倍)、10dBで10倍(または1/10倍)、20dBで100倍(または1/100倍)という基準値を覚えることです 。これにより暗算での概算が可能になり、設計作業が効率化されます 。
参考)http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H29/html/H2908A24_.html

 

減衰器の種類と用途による選択

減衰器には固定型と可変型の2つの主要な種類があり、それぞれ異なる用途に適しています 。固定型アッテネータは「10dB」や「20dB」といった特定の値で信号を一定に減衰させ、通信機器や測定設備での恒久的な使用に適しています 。一方、可変アッテネータは減衰量を調整可能で、測定や実験での柔軟な対応が必要な場面で使用されます 。
参考)アッテネータと増幅器の基本|信号制御の要点を解説

 

光アッテネータという特殊な種類もあり、光ファイバー通信システムで光信号の強度を制御します 。これにも光固定減衰器と光可変減衰器の2種類があり、用途に応じて選択されます 。チップ減衰器は小型で1素子で減衰器を実現するため、PCB上のレイアウトが容易で寄生成分を小さくできるメリットがあります 。
参考)1.高周波チップ部品で代表的なチップ減衰器

 

減衰器の主な用途として、信号レベル調整、インピーダンス整合、反射波低減、平衡・不平衡変換があります 。特に測定用途では、高精度な減衰定数を持つ減衰器により、アクティブ素子による測定器よりも高精度な測定が可能になります 。
参考)減衰器 - Wikipedia

 

減衰器抵抗値計算の実践方法

π型減衰器の抵抗値計算では、減衰量に応じて特定の抵抗値組み合わせが必要になります 。例えば50Ωシステムで10dBの減衰を得るには、R1,R3=96.2Ω、R2=71.2Ωという組み合わせが使用されます 。この計算には「K = 10^(ATT/20)」という電圧減衰率の式が基本となります 。
参考)#078 EMI対策 ~T型アッテネータ その2~

 

T型減衰器の計算では、前回解説した「R1 = Z0×(K-1)/(K+1)」「R2 = 2×Z0×K/(K²-1)」という公式を使用します 。実際の例として、10dB減衰のT型では R1=26Ω、R2=35.1Ωという値が算出されます 。これらの計算により、目標とする減衰量を正確に実現できます 。
参考)キルヒホッフ法則で抵抗値を求める

 

計算ツールとしてExcelやオンライン計算機が活用されており、E12系列やE24系列の標準抵抗値を考慮した実用的な設計が可能です 。実際の製作では抵抗誤差も考慮し、SWRやリターンロスの計算も併せて行うことで、より精度の高い減衰器が実現できます 。
参考)No.192 20W用アッテネータ

 

減衰器設計における電力計算と安全対策

減衰器設計において、各抵抗器の消費電力計算は安全性確保の重要な要素です 。10dBのT型アッテネータの例では、入力側26Ωで1.04W以上、出力側26Ωで0.103W以上、35Ωで0.655W以上の定格電力が必要になります 。この計算により、適切な定格の抵抗器選定が可能になります 。
高電力アプリケーションでは、熱設計が極めて重要になります 。例えば800Wの入力に対し1Wの出力しか得られない29dB減衰器では、残り799Wが熱として放散されるため、大型の放熱器や水冷・油浸などの冷却システムが必要になります 。このような条件下でも出力開放時に破損しない頑丈な設計が求められます 。
実用的な設計では、中途半端な計算値をE系列の標準抵抗値に近似する必要があります 。この際、実際の減衰量やインピーダンス特性がどのように変化するかを計算し、許容範囲内に収まるよう調整します 。測定器による実測値を用いた精密な計算も、より高精度な減衰器実現には欠かせません 。

減衰器計算における美容業界での意外な応用例

美容機器業界では、高周波治療器やレーザー機器の出力制御に減衰器の原理が応用されています。エステティック機器では、肌質に応じた適切な出力レベル調整が重要で、dB計算による精密な出力制御システムが採用されています。特にRF(高周波)美容機器では、50Ωインピーダンス整合による効率的なエネルギー伝送が求められ、π型やT型減衰回路の設計知識が活用されています。

 

LED美容機器の光出力制御にも、光減衰器の計算原理が応用されています。肌の色調や治療目的に応じて光強度を段階的に調整する際、dB単位での精密な制御により、安全かつ効果的な施術が実現されています。この分野では、従来の電気的減衰器とは異なる光学的減衰の計算が必要になります。

 

家庭用美容機器の安全設計においても、過出力防止回路として減衰器の原理が重要な役割を果たしています。万一の機器故障時に危険な高出力が発生することを防ぐため、自動的に信号レベルを安全範囲まで減衰させる保護回路が組み込まれており、この設計にはdB計算と抵抗値設計の知識が不可欠です。