

エルダーフラワーエキスは、よく「保湿だけに効く地味な植物成分」と思われがちですが、実はグリセリンよりも高い肌荒れ改善効果が1985年の試験で確認されています。
エルダーフラワーとは、学名 Sambucus nigra、和名をセイヨウニワトコという植物の花から採れるエキスのことです。ヨーロッパ・西アジア・北アフリカを原産とし、毎年5〜6月に直径20cmほどの大きな白い花房を咲かせます。個々の花は直径わずか5mmほどですが、数百もの小花が密集して咲く様子は見応えがあり、マスカットのような上品な甘い香りが特徴です。
中世ヨーロッパでは「万能の薬箱」と呼ばれ、花のハーブティーをリウマチの痛み緩和や風邪の治療に用いてきた歴史があります。美容の分野では「エルダーフラワーウォーターで顔を洗うと美しさを保てる」という言い伝えがあり、修道院でも化粧水として使われていた記録が残っています。つまり美容成分としての歴史は相当に長いわけです。
現代の化粧品では「セイヨウニワトコ花エキス(INCI名:Sambucus Nigra Flower Extract)」として表示されます。化粧水・美容液・クリーム・シャンプーなど幅広いカテゴリで採用されており、日本の医薬部外品原料規格2021にも収載された安全性の高い成分です。20年以上の使用実績がある中で、皮膚刺激性や皮膚感作性(アレルギー性)の重大な報告は見当たりません。安心して使える成分ということですね。
なお、化粧品の成分表示はINCIに基づくため、「エルダーフラワーエキス」という日本語表記は市販コスメの成分欄には出てきません。「セイヨウニワトコ花エキス」もしくは「セイヨウニワトコ花水(フローラルウォーター)」という表記を探してみてください。
エルダーフラワーエキスの美容効果を語るうえで、欠かせない成分が「フラボノイド」です。エルダーフラワーはフラボノイドを非常に豊富に含むことで知られており、ハーブ専門家の間では「フラボノイドの女王」と称されるほどです。
主に含まれるフラボノイドとしては以下のものが挙げられます。
フラボノイド以外にも重要な成分があります。フェノール酸の一種であるクロロゲン酸は、UVBとUVAの両方を吸収する紫外線防御能を持つことがin vitro試験で確認されており、過酸化脂質の生成を抑制する抗酸化作用も報告されています。さらにクロロゲン酸はメラニン生成に関わる酵素「チロシナーゼ」の活性を阻害し、色素沈着を抑制する美白効果も持つとされています。これは使えそうです。
加えて、タンニンによる収斂作用が毛穴を引き締め肌のキメを整え、ペクチンなどの天然保湿成分が肌の水分バランスを保ちます。一つの植物エキスにこれほど多様な有効成分が含まれているのは、エルダーフラワーの大きな強みといえます。単なる保湿成分にとどまらない、というのが基本です。
| 成分分類 | 代表的な成分 | 期待される美容効果 |
|---|---|---|
| フラボノイド | ルチン・ケルセチン・イソクエルシトリン | 抗酸化・美白・透明感 |
| フェノール酸 | クロロゲン酸・カフェー酸 | 紫外線吸収・抗酸化・抗炎症 |
| タンニン | (複数のタンニン成分) | 収斂・毛穴引き締め・キメ整え |
| 天然保湿成分 | ペクチン・グルコース等 | 保湿・水分バランス維持 |
エルダーフラワーエキスの肌荒れ改善効果については、1985年に稲畑香料・大阪薬品研究所が行った試験データが今も引用される根拠のひとつとなっています。20名の女性被験者を2グループに分け、一方には5%セイヨウニワトコ花エキス配合化粧水を、もう一方には同濃度のグリセリン配合化粧水を2週間使用してもらったところ、エキス配合グループの10名中9名(90%)に肌荒れの改善が確認されました。一方、グリセリングループは10名中7名(70%)の改善にとどまりました。
グリセリンといえば、保湿化粧水の代表的な成分として広く使われています。そのグリセリンより高い肌荒れ改善率が出た背景として、研究者たちはエルダーフラワーエキスに含まれるフラボノイドやフェノール酸の「複合的な効果」が働いたと考えています。単純な保湿成分には真似できない部分ですね。
さらに2009年にマツモト交商が行った試験では、乾燥肌・敏感肌と判断された57名の被験者に2%セイヨウニワトコ花エキス配合クリームを1日2回・28日間使用してもらったところ、以下の結果が得られています。
これらの効果の背景にあるのが、TNF-α(腫瘍壊死因子-α)という炎症性サイトカインへの作用です。紫外線(UVB)を浴びた皮膚内では、転写因子のNF-κBが過剰発現し、それによってTNF-αが大量に放出されることで炎症が広がっていきます。エルダーフラワーエキスはTNF-αの産生を濃度依存的に抑制することが確認されており、紫外線ダメージによる炎症の悪循環を断ち切る作用があると考えられています。日焼け後の赤みや刺激感が気になる季節にこそ、積極的に取り入れたい成分です。
敏感肌や肌荒れが繰り返される人にとって、この抗炎症効果は特に重要です。「肌荒れが治らない」という悩みには、そもそも炎症を鎮める成分が足りていないケースが多い。エルダーフラワーエキスはそこに直接アプローチできる数少ない植物成分のひとつといえます。
エルダーフラワーエキスの成分と効果についての詳細な学術的解説はこちら:
皮膚への抗炎症作用や荒れ肌改善の試験データを詳しく確認できます。
セイヨウニワトコ花エキスの基本情報・配合目的・安全性 – 化粧品成分オンライン
スキンケアで「くすみやシミが気になる」と感じている人に特に注目してほしいのが、エルダーフラワーエキスの抗酸化・美白への働きかけです。
まず抗酸化作用から解説します。肌の老化の大きな原因のひとつが「活性酸素」です。活性酸素は紫外線やストレス・大気汚染などによって過剰に発生し、細胞膜の脂質を酸化(過酸化脂質化)させたり、コラーゲンを分解したりすることでシワやたるみを招きます。エルダーフラワーエキスに含まれるルチンはDPPHラジカル(活性酸素の一種)を消去する能力が高く、クロロゲン酸は過酸化脂質の生成そのものを抑制します。この2つが組み合わさることで、抗酸化防御が多角的に機能するわけです。
美白への作用も見逃せません。クロロゲン酸は、シミの原因となるメラニンを作る酵素「チロシナーゼ」の活性を阻害します。また、ルチンには「カルボニル化抑制」という働きもあり、コーセーの研究(2004年)によるとこれが色素沈着の抑制につながることが示されています。さらにエルダーフラワーには、美白作用が期待できる「アルブチン」を含む成分も報告されており、複数の経路からシミ・くすみにアプローチできます。
紫外線吸収の面でも特徴的な性質があります。クロロゲン酸はUVBだけでなくUVAも吸収することが確認されており(長谷川香料、1996年)、ルチンにはUVA吸収能があります。これは化粧品としての機能を高める観点から非常に重要な特性です。日焼け止め製品や化粧下地製品にエルダーフラワーエキスが配合される理由もここにあります。
ただし注意しておきたい点があります。あくまでこれらは「補助的なUV対策効果」であり、SPF・PA表示のある日焼け止めの代替にはなりません。エルダーフラワーエキス配合コスメを使う際も、SPF入りのアイテムを別途重ねるのが原則です。
ここからは、あまり多くのサイトで語られていない視点をお伝えします。エルダーフラワーエキスを「単体で使う」のではなく、セラミドと組み合わせることでバリア機能を相乗的に強化できる、という考え方です。
皮膚のバリア機能は、角質層の中にある「セラミド」という脂質が主役を担っています。セラミドは年齢とともに減少し、乾燥・外部刺激への耐性が低下します。エルダーフラワーエキスは抗炎症・保湿・抗酸化という「肌を守るための環境整備」に優れている一方、セラミドのような脂質バリアの物理的な補強は行いません。これが条件です。
国内の一部ブランドでは、エルダーフラワーエキスとセラミドを同一処方に配合した美容液が発売されています。例えば、エルダーフラワーエキスでTNF-αの産生を抑えつつ、セラミドで角質層のバリアを物理的に補強するというアプローチは、乾燥や季節の変わり目の肌荒れに対して理にかなった組み合わせといえます。
もし現在使っているスキンケアにセラミドが含まれていない場合、セラミド配合の乳液やクリームをエルダーフラワーエキス配合化粧水の後に重ねると、より高い保護効果が期待できます。「化粧水でエルダーフラワーエキスの抗炎症・保湿→乳液・クリームでセラミドのバリア強化」というルーティンが、肌荒れを防ぐうえでの黄金パターンとして覚えておいてください。これだけ覚えておけばOKです。
セラミドについての分かりやすい解説や、セラミド配合コスメを探す際は、各コスメサイトの成分検索機能を活用するのも一手です。肌のバリア機能に着目したスキンケア選びの参考として、以下のサイトも役立ちます:
エルダーフラワーエキスとセラミドの関係性や配合製品情報が参照できます。
エルダーフラワーエキス×セラミド配合美容液の製品情報(GISELe)
エルダーフラワーエキスの恩恵を実際に得るためには、製品選びと使い方の両面で少し意識する点があります。
まず成分表示の確認についてです。市販の化粧品でエルダーフラワーエキスを配合している場合、成分表には次のいずれかの名前で表示されています。
成分は含有量が多い順に記載される仕組みのため、上位に「セイヨウニワトコ花エキス」や「セイヨウニワトコ花水」が来ていれば、それだけ濃度が高いと判断できます。下の方に埋もれていてもゼロよりはましですが、効果実感のためには配合量も気にするのが理想です。
次に使い方について整理します。肌への取り入れ方として基本となるのは化粧水です。化粧水に配合されている場合は、洗顔後の清潔な肌に手のひらで優しく包み込むように押さえます。コットンで拭き取るタイプに使うと、逆に摩擦で肌が荒れる可能性があるため注意してください。化粧水→美容液→乳液→クリームの順が原則です。
また、市販の化粧水に手持ちのエルダーフラワーエキス(化粧品原料)を数滴混ぜるというセルフブレンドの方法もあります。この場合、手のひらに化粧水を出してから1〜2滴だけ加えて使うのが推奨されており、原液をそのまま肌に使うのは避けてください。刺激になる可能性があります。
エルダーフラワーエキスは敏感肌や乾燥肌の方にも使いやすい成分ですが、植物由来エキスにはまれにアレルギー反応が出ることがあります。初めて使う製品はパッチテストを行ってから使い始めるのが安心です。まずは腕の内側で試してから顔に広げるという手順を守ることをおすすめします。パッチテストが基本です。
エルダーフラワー化粧品原料の詳細や手作りコスメへの活用は以下が参考になります:
エキスの配合目的や正しい使い方が確認できます。
【化粧品原料】エルダーフラワーエキス – メゾンドオーガニック