
亜塩素酸(HClO2)は塩素のオキソ酸の一種で、塩素の酸化数が+3の化合物です 。化学式HClO2で表されるこの物質は、塩素原子に2個の酸素原子が結合した構造を持っています 。
参考)亜塩素酸水がわかる3つのポイント
亜塩素酸の特徴的な性質として、サイクル反応による安定性があります 。亜塩素酸水の主たる有効成分である亜塩素酸(HClO₂)は、水溶液中では解離状態の亜塩素酸(H⁺・ClO₂⁻)と平衡関係を維持しています 。この化学平衡関係(H⁺・ClO₂⁻⇔HClO₂)を保つサイクル反応により、亜塩素酸は安定した状態を維持できるのです 。
参考)亜塩素酸水とは
亜塩素酸の活性分子種は塩素過酸化ラジカル(ClOO・)であることが最近の研究で明らかになっており、この活性種は二酸化塩素(ClO₂)よりも熱力学的に274KJ/molと低く、水溶液中に長時間存在することができます 。
次亜塩素酸(HClO)は塩素のオキソ酸の中で最もシンプルな構造を持つ化合物で、化学式はHClOまたはHOClと表されます 。分子構造は水素原子と塩素原子が酸素原子に結合したH-O-Cl構造を持ち、塩素の酸化数は+1です 。
参考)「次亜塩素酸水溶液」と「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」の違い
次亜塩素酸の分子構造は水分子と類似した並びを持っています 。塩素原子を水素原子で置き換えると水(H₂O)の分子と同じ並びになることが特徴的です 。水の分子は電子を引き寄せやすい酸素原子1個に電子を奪われやすい水素原子2個が結合したものですが、次亜塩素酸分子では塩素が本来の性質に合わない役目を果たしているため、非常に不安定で壊れやすい性質を持ちます 。
参考)次亜塩素酸とは
IUPACの2005年勧告に従えばHOClと表記されますが、慣用的にはHClOが用いられることが多いです 。この不安定な性質こそが次亜塩素酸の強力な破壊力の源となっています 。
参考)次亜塩素酸 - Wikipedia
塩素のオキソ酸における命名は酸素原子の数に基づいて体系的に決められています 。基本となるのは塩素酸(HClO3)で、この酸素原子数を基準として名前が付けられます 。
参考)【塩素のオキソ酸】次亜塩素酸・亜塩素酸・塩素酸・過塩素酸の違…
塩素酸(HClO3)から酸素原子が1つ少ないのが亜塩素酸(HClO2)、さらに1つ少ない(塩素酸から2つ少ない)のが次亜塩素酸(HClO)です 。反対に、塩素酸より酸素原子が1つ多いものには「過」が付き、過塩素酸(HClO4)となります 。
参考)次亜塩素酸や亜硝酸の「次」や「亜」って何?【1分で簡単に理解…
この命名法則は他の元素のオキソ酸にも適用されます 。「亜」は酸素原子が1つ少ない組成の酸に、「次」は「亜」の酸からさらに酸素原子が1つ少ない組成を持つ場合に付けられます 。基本的に「亜」、「次」のついた酸は不安定で有毒な性質を持つことが多いのが特徴です 。
次亜塩素酸と亜塩素酸は異なる殺菌メカニズムを持っています。次亜塩素酸(HOCl)の殺菌力の源は、その強い酸化力にあります 。次亜塩素酸分子中の塩素原子は本来安定な塩化物イオン(Cl⁻)になろうとするため、近くにある電子を強制的に奪って自らが安定化しようとします 。
参考)次亜塩素酸とは?消毒の効果と化学的な殺菌メカニズムについて
次亜塩素酸の細胞膜透過性も重要な要素です 。HClOは極性分子ではありますが小型の分子なので細胞膜を通過でき、細胞の中まで入って細胞内の物質まで酸化することができます 。一方、次亜塩素酸イオン(ClO⁻)は完全に電荷を帯びた物質であるため細胞膜を通ることができず、殺菌力が限定されます 。
参考)食品工場-次亜塩素酸ナトリウム
亜塩素酸の活性種は塩素過酸化ラジカル(ClOO・)で、これが酸化剤として機能します 。亜塩素酸は次亜塩素酸と比較して安定性が高く、水溶液中での平衡関係を長期間維持できるのが特徴です 。
塩素のオキソ酸全体では、酸素原子の数が多くなるほど酸性は強くなりますが、酸化力は逆に弱くなる傾向があります 。これは結合する酸素が多いほど陰イオンが安定化し、電子を奪って分解しなくなるためです 。
美容業界における次亜塩素酸の安全性は、その人体由来の特性にあります 。次亜塩素酸は人間の血液に含まれる白血球の一種である好中球で生成される成分で、体内では侵入してきた細菌やウイルスへの攻撃・排除を担っています 。
参考)次亜塩素酸水で手荒れは起こる?次亜塩素酸による人体への影響と…
美容用途で使用される次亜塩素酸水は人の肌と同じ弱酸性のものが多く、万が一直接手で触れてしまっても害はなく、手荒れが起こることはほとんどありません 。これは次亜塩素酸ナトリウム(強アルカリ性)とは大きく異なる点です。
美容椅子や水回り機器の消毒には次亜塩素酸ナトリウム液が適していますが、金属である鏡やシザー等にはアルコールでの消毒が推奨されています 。次亜塩素酸ナトリウム液が直接肌に触れると、肌表面のタンパク質が溶けてしまい、やけどのような状態になって手荒れが起きる可能性があります 。
参考)アルコール?次亜塩素酸?見直したいサロンの消毒方法
亜塩素酸水は使用後の残留性がないことから、安全性に問題がないとされています 。しかし、適切な濃度と使用方法を守ることが重要で、特に美容業界では肌への直接接触を避けるなどの配慮が必要です 。
参考)https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20230210te1amp;fileId=120